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第254話

チュンチュンと小鳥のさえずりが聞こえる清々しい朝。

ドモンは朝食作りへ。ナナとサンはまだベッドの中でまどろんでいた。なんともあられも無い格好で毛布に包まれながら。


「ねえ、ドモンがそうかもしれないってサンはいつから気が付いたの?」


横向きに寝ているナナが、ナナの方を向いて寝ているサンに話しかけた。


横向きで寝るナナのお尻の大きさが凄すぎて、サーカスのテント小屋のように毛布が盛り上がっている。

毛布が浮きすぎて「俺に毛布がかかってないじゃないか!」とたまにドモンに文句を言われるほどの盛り上がり。


「なんとなくというか、きっかけは私が両親に会った時、つまり長老さんと一緒に起きられなくなった時です」

「あぁ・・・」


「あとから悪魔のかけた呪いだと皆さんから聞いたのですが、でもあれってドモンさんがきっと両親に会わせてくれたんだって、そして挨拶しに来てくれたんだって思えたんです!」

「でもドモン本人には自覚はないんでしょう?まあなんとなく自分のせいかな?とは思ってたみたいだけど。『ナナはそいつをいつも退治してるような気がする』って言ってたし」


「とにかくそれで同じ事になった長老さんと少しお話をして」

「でもなんで長老さんも巻き込まれちゃったんだろう??サンだけでいいじゃない」

「亡くなった夫の事をずっと気に病んでいたんでしょうとおっしゃられていました」


それがドモンなりの優しさだったと知る。やり方があまりに酷すぎるが。


もちろんドモンもそれを自由自在に意識してやることは出来ない。

気持ちが弱っていたところで、何かが噛み合ってたまたまそうなってしまっただけだ。


それこそ悪魔が本気を出したとしても、相手の心が弱っていたり、心の隙きを突くことが出来なければ、意志ある者を操ることは出来ない。



「なるほどねぇ。その呪いが悪魔の呪いで、その犯人がドモン、だからドモンが悪魔ってことになったのね?」

「あくまで推測でしたし、私個人はそんな事どうでも良かったんです。ですが王都に行かなければならないのと、やっぱりそのぅ~結婚前にドモンさんのこと色々知っておきたかったと言いますか・・・うぅ恥ずかしい。そして奥様ごめんなさい」


「ウフフいいわよそんなの。サン可愛い。おいでこっちに」

「え?え?奥様ちょっと!ふわぁ!」


ナナのムチムチふわふわボディーに包まれたサンはドキドキ。

ナナもサンのツルツルスベスベ肌と赤ちゃんのような甘い匂いで少し変な気持ちに。

ただハグをしようとしただけなのに、裸なのがまずかった。


「な、なんかまた汚しそうねベッドを」

「うぅ~もう遅いですよぅ~!」

「ヤダちょっとサン!私にくっついたまま何してんのよ!あーもう」

「ごめんなさい・・・」


もう完全に何かを諦めたふたり。このまま水浴び直行が決定。


「おーい朝食でき・・・お前らまで裸で何やってんだよ。もう俺も混ぜろ」

「ダメダメダメ!今は駄目よ!水浴びをしてから!!」慌てるナナと、毛布にくるくる包まり両手で顔を塞ぐサン。

「水浴びできるもんならしてみろってんだ」

「???」


風呂場では、ドモンが買ってきたボディーソープを使って、ヨハンがエリーに体を洗われていた。

誰も中は確認していないけれど、「もう頭も身体もおかしくなっちまうぅぅ」というヨハンの声だけで、中でエリーが何をしているのかが想像出来る。


仕方ないので濡れタオルでお互いの体を拭き、汚してしまったシーツを取り換え一階へ。ドモンは先に降りて味噌汁を温め直していた。



「あーいい匂い!これはお魚ね!スーハースーハーあぁ~」鼻の穴全開のナナ。

「あぁ~申し訳ございません。お腹が鳴ってしまいましたぁ」と、サンがグゥと鳴ったお腹を押さえて大慌て。ぽすぽすと自分のお腹を叩いている。


「ほら、今日は玉子焼きもあるよ。今回はだし巻き玉子だけどな」


ドモンがホカホカのご飯をお椀に盛り、カウンターに並んで座る二人の前におかずを置いていく。

ほうれん草のおひたし・・・のようなものもある。なんとなく葉の形が似ていたからそうしたけど、味はそっくりなので大丈夫だろうと判断。


何のことはない日本の朝ごはん。納豆もあれば最高だ。味噌汁に豆腐がないのも寂しい。

しかしナナとサンには輝いて見えた。実際にホッケの脂に照明がキラキラ反射して輝いていたが。


「なになになに~なんなのぉ?」

「なんだ?何の匂いだこりゃ?」


ドタバタとエリーとヨハンが階段を駆け下りてきた。

エリーはまだ髪が乾いていない。ヨハンはその心配がない。


「やだお母さん」

「エリーはちゃんと下着つけてこいよ・・・」


向こうで買ってきたゆるふわのワンピースを、どう見ても裸の上にスポッとかぶせただけの格好で現れたエリー。

いくら先っぽの形や位置くらいわかっても気にしない風習だと言っても、エリーの場合は勝手が違う。

ゆるもふわもないのだから。


「ウフフ、家族だけしかいないんだから別にいいじゃないのよぅ」とエリーはフリフリ。

「そこにいるどこかのスケベおじさんは、どうやら勝手が違うみたいですけど??もう!ドモンいい加減になさい!!」


股間を押さえてモジモジニヤニヤしてるドモンを見て、ナナ大激怒。


「だって一晩中エリーが・・・エリーもお尻叩かれるの好きだったんだな。サンと仲間だ」

「違いますぅ!」「・・・・」


ドモンの指摘に否定するサンと、否定せずに顔を赤く染めて、うっとりとヨハンを見つめるエリー。

例のキノコの効果はまだ存分に残っており、今にも何かはじめそうな雰囲気。


「じょ、冗談だってば!!ほらふたりとも座れ。焼き魚と玉子焼きとおひたし、それに味噌汁という全部俺の国の代表的な朝ごはんだ」

「うー!すごいわドモンさん!」

「なんという豪華な朝食だ・・・街のみんなや貴族の方々に見られたらエラいことになるぞドモン」

「いいからほら、早く食べろ」


もう、これが美味しいということは目に見えている。

ドモン以外の四人には財宝を発見したようにしか思えない。


キラキラと全てが輝き、まるで神の祝福を受けたよう。


「あーこのスープ・・・身体の毒が全て抜けるようだ」とヨハンが目を瞑る。

「うぅ・・ずっと食べたかったの!ドモンさんありがとう!」ホッケと米を口に放り込み涙ぐむエリー。

「ああぁ?!葉野菜がこんな・・・こんなことって・・・」少しだけ出汁を加えたおひたしの旨味に、サンの頭は大混乱。見た目と想像していた味とのギャップが激しすぎた。


「玉子が・・・何よあんた、これのど・・・・本当は料理の神様なんじゃないの?」


『これのどこが悪魔なのよ!』と思わず叫びそうになり、どうにか言い換えたナナ。

どれもが美味しい。米さえも、ナナが炊いた米よりも何倍も美味しいのだ。


「寿司屋っていう特に米にはうるさいところで三年働いてたからな。はじめはえらい怒られたんだぞ。米の研ぎ方で」

「へぇ~」


ドモンは高校の三年間、寿司屋でバイトをしていた。

ただでさえ小さな頃から料理をしていた上に、そこで徹底的に鍛え上げられていたのだ。



ナナのご飯を食べるスピードが、徐々に緩まる。

少し深刻そうなナナの顔を見て、サンもそれを察した。

その様子を見ていたヨハンとエリーの手も止まる。

ドモンは気にせずモグモグ。


「ドモン・・・あのね・・・」

「うん?」

「すごく言いづらいことなんだけど・・・聞いてくれる?」

「どうした?んぐ」


ナナは俯いたまま、ゴクリと唾を飲み込む。

サンも歯を食いしばり、ぎゅっと両手を握ってその時を待っていた。



「ドモン・・・お米のおかわりが欲しいの。もう一回炊いて?」



サンとヨハンは盛大にズッコケ、「いいよ」と言ったドモンに「バンザーイ」とナナとエリーが喜んだ。





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