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第250話

まさに歴史の1ページ目が開かれようとし、ああでもないこうでもないと激しく意見交換が行われる中、しっかりとドモンの冗談を聞いていたサンとナナにドモンは成敗された。


「あんたね・・・真面目に語っていたと思ったらやっぱりスケベ目的じゃないのよ!」

「スケベな学校の校長って!!うー!!」

「し、仕方ないだろ・・・遅刻の言い訳をこんなに真剣に聞くとは思わなかったんだよ」

「えー?!」「え?!」


ドモンの言葉に驚きの声を上げたふたり。

もうゴブリン達も貴族らの話の輪に加わって「その学校に私達も通うことが出来るのか?」といった話をしていた。


「ま、まさかだけど・・・まさか、最初から最後まで全てでまかせなの?」

「ぜ、全部じゃないよ・・・・保育士の学校のことだけは考えてたよ。園長みたいな人だっているだろ?」

「本当ね?」

「・・・・」


ナナの言葉に横を向き、タバコに火をつけるドモン。当然全てこの場での思いつきである。今ナナにした言い訳ですらも。

医者のところに行った時、医者専門の学校ってあるのかなぁ?と考えていた程度の話を、ただ膨らませただけだった。


サンは「ふぅ・・・」と大きなため息。


「御主人様の嘘やでまかせは、本当にそうなってしまうことがあるんですから気をつけてください」

「へ?」「え?」

「まあスケベな学校以外は今回問題ありませんけど。素晴らしいお考えでした」


サンがボソッと気になることを言い、不思議そうな顔で目を見合わせたドモンとナナ。


灰皿を持ち、ドモンの前へとやってきた侍女のお尻を触りながら「一緒に風呂に入ってスケベなことがしたい」と試しに言ってみたが、「あの例のきのこを丸ごとひとつ食べなさい。今すぐその願いを私達が叶えてあげるわ」という言葉を、ナナのお尻の下で聞くに留まった。



結局会議室での議論は終わる気配がなく、すっかり飽きてしまったドモンは園長達とグラ、騎士達や侍女達に昨日働いた分の給金を渡し、夕方頃家路についた。


「なんかドモン大丈夫なの?おじいちゃんがもう今週中にも王都に連れてくって言ってたわよ?」

「わ、わかんねぇ・・・」

「あんなでまかせ言うから、こんな大事になっちゃったのよ」

「だって」


サンが運転する馬車の中、ふたりは頭を悩ませていた。

話が大事になりすぎたこともあり、王都や他の街との連携が必要だと義父に言われ、無理やり王宮へと連れて行かれることになってしまったのだ。同じ学校がいくつも出来ても仕方ないためだ。様々な許可申請も必要とのこと。


サンは結婚式を、ドモンは屋敷のサウナに入るのを、ナナは何気にもやしの成長を楽しみにしていたというのに、どうやら全ては先延ばしになりそうで皆がっかり。


「隣街の道具屋に寄って行けるのかな?王都に行く時って」

「おじいちゃん次第じゃない?一緒に行かないなら多少寄り道しても大丈夫だろうけど、今日のことがあるから・・・」

「寄り道したら怒られるってか。もう子供じゃないんだぞこっちは」


ナナの言葉にドモンもヤレヤレのポーズ。

とにかく出発の準備を進めておかなければならない。


「隣街までと王都まではどのくらいって言ってた?」

「隣街まで馬で三日くらい、馬車で五日くらいだったんですけど、新型馬車だと馬とさほど変わらないくらいの日数で行けるそうです。あと御主人様が亡くなられてしまわれた時は、王都からほとんど休みなく馬車を走らせて、一週間以上かかるところを三日と半日で来たとファルさんがおっしゃられていました。馬も多頭引きだったそうですが」とサンが答える。


「そりゃ無茶苦茶だな。馬もファルも可哀想に」

「ドモンが死んじゃうからよ」


「だからそれは・・・」「私のせいです!」

「え?」

「ですよね?意地悪ドモンさん?」


ドモンとナナの会話に御者台から振り向いたサンが割り込み、ニコっと笑った。

またサンを少し誂おうと思ったドモンだったが、見事に切り返された上に天使の笑顔でドモン大轟沈。

そのふたりの様子を見ていたナナも、ハッと今日の夜の約束事を思い出し、心臓がきゅっと締め付けられる思い。


西日の眩しさに目を細めながら、それから誰一人言葉を発せずに帰宅した。



「ただいまー」

「あらおかえりなさいナナ、ドモンさん・・・って随分元気ないわねぇナナ。何かあったの?」

「なにかあるのは今日の夜よ・・・ドモンとサンが・・・ね」

「あ~それで元気が無いのねぇ。もう~元々ナナがそれでもいいって言って、そうしたんじゃないのよ」


どんよりした顔で帰ってきたナナを迎えたエリー。


店はすっかり元通りになり、ヨハンとエリーが通常営業をはじめていたが、女性客が多くなっていたのと、エリーの服が少しスケベになって男性客を喜ばせていた。


エリー本人はもの凄く控えめなつもりだけども、ここ二日間のやり過ぎ衣装で感覚がずれてしまい、上着のボタンを以前よりもひとつ多く外し、スカートはドモン達が買ってきた物を穿いていた。


ちなみにナナも少し感覚が変わり、今日はチアガールの衣装のような格好で、白のフレアスカートを穿いていたのだ。

おかげですぐにお尻が出せた。出しては駄目だけど。



ドモンはドモンでどうにも落ち着かない。

夕日に照らされたサンの笑顔が本当に美しく見え、いつもの調子が出ずにいた。


テレビで綺麗だなぁと思うような女優さんが、突然自宅にやってくることが決まったような気分。


画面越しにだけで十分で、実際にいざ対峙したら何かが元気になる気がしない。それほどの美しさと可愛さ。

ナナもとんでもない美女だけど、ドジなところやだらしないところも見ているため、まだ『一般女性』と思えるが、今のサンは何かが違う。テレビの中の人。高嶺の花。


それはナナも同様に感じていたらしく、これから自分の旦那が女優の家に遊びにいってしまう気分であった。

敵うはずがない。取られてしまう・・・と。


ドモンはとにかくサンが先に寝たら、そのまま横で寝るだけにしようと考えていた。

手を出した瞬間、何かが崩れる予感もある。



「さ、さあナナ、晩御飯は何がいい?思い切ってしゃぶしゃぶにでもしようか?醤油も作り始めたって言ってたし、もうタレもある程度は遠慮なく使っていいだろ」

「・・・うん・・・私、お米炊くね」


ドモンの嬉しい提案にも、ナナはしょんぼりしたまま。

それでもきっちりと米は炊く。


そこへ馬車を戻してきたサンが帰ってきた。

サンはいつものメイド服だというのに、ヨハンやエリー、そしてそこにいた客達もハッとした。


いつもの幼さが消えており、落ち着き、自信に満ち溢れたような表情をし、優雅にカウンターまで歩いてきたのだ。

女優さんの来訪。人としてのオーラが違いすぎる。


「只今戻りました。すぐにお手伝いいたしますね」とエプロンを取りに階段を上るサン。

「あ、ああ・・・」ヨハンまで緊張する始末。


「な、何があったのよぅドモンさん」と厨房を覗くエリー。

「なんにもしてないよ!家に近づくにつれ、急にこうなっちゃったんだ」


しゃぶしゃぶのためにスライサーで肉を切りながら、ドモンも動揺を隠せない。


「だから・・・これから何かあるからそうなったのよ。サンにとって・・・きっと大切な日なのよ」


ナナはそう言って、またふぅ・・と溜め息をひとつついた。




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