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第231話

「み、皆にも一番高い酒をやってくれ。そして皆の者よ・・・・これは他言無用だ。わかるな?」


先程揉めた若者達も含む全員に高級ワインを奢った義父。

エリーにちらりと視線を送った後、そう言って目配せをした。

その意図はしっかり伝わり全員がコクリと頷く。


「ん?どうしたのぅ?それにしてもまだ暑いわねぇ。私とナナはすぐ汗をかいちゃうのよ、この裏側とか」

「ブフォッ!!」


「上着脱いじゃおうかしら」

「それ以上脱いではいかんエリー殿!上着は初めに脱いだではないか!」


かろうじて先っぽを隠しているブラウスのボタンをひとつ外しながら、首を傾げるエリーに義父は大慌て。

その先を見たい気持ちは当然ある。

だが、それがもの凄くまずいということも理解している。


知られたのがドモンならば、百歩譲ってまだ救いがある。

言い訳の余地もあるし気持ちもわかってくれるだろう。


ただナナやサン、ヨハンなどに知られれば、この付き合いも全て終わる可能性がある。それは当然本意ではない。


「ど・こ・を・見・て・い・る・の?お・義・父・さ・ま!ウフフフ」

「くはっ・・・」


更にボタンをひとつ外し、前かがみになりながら挑発するエリーに、目をそらしてから「見ていない」と否定しようとしていた義父だったが、その魅力にまったく抗うことが出来ず、まともな言葉も出なかった。


幸福と興奮。


今、男性全員が席から立ち上がれない状況。

むしろ立ち上がった人は、すでに何かがスッキリしている可能性もある。


そして一度昂った気持ちはそう簡単には戻らない。

他の従業員の女性達の格好にも興奮してしまい、全員が散財散財また散財。

俺の奢りだ、俺も奢りだと大騒ぎ。



「フフフ・・・これは明日の本番も楽しみであるな。いや・・・明日以降も皆の楽しみでなくてはならぬ」



エリーが次の店へと移動したのを見届け、義父は屋敷へと戻った。

義父は娘にこれ以上ないというくらいに怒られたが、上機嫌で笑うばかり。



スナック街の前夜祭は、大盛況の内に午前1時にようやく終了した。

本来0時までの予定だったが、エリーが全ての店を二周したいと言い出し、午前1時までとなったのだ。

ちなみに明日の本番は朝10時から開店し、午前2時まで営業の予定。


「たらいまぁ~ヒック」

「おお、エリーおかえり。あらまあ随分酔っちまって」

「あぁ~楽しかったわぁ~!もうすっごく!ウフフフ」

「そりゃ良かったけどよ・・・ってお前なんか胸が・・・」


ナナやサンはゴブリン達と二階に上がってすでに就寝。

店の方でも皆、接客の練習がてら少し酒を飲んで遊んでいたのだ。

ドモンは厨房で仕込みを済ませ、カウンターでタバコを吸って休憩中。


「えっと・・・エリー、なんか先っぽが見えているような」と思わず立ち上がったドモン。

「ドモンさぁんたらいまぁ~!らって暑くて下着取っちゃったから」

「な、なんだってぇ?!」


フラフラのエリーを支えつつ、驚きの声を上げたヨハン。


「み、見られちゃいないか?」

「ん~どうかしらぁ??」


支えているヨハンからはもう完全に全てが見えている。


「触られたり・・・スケベな事されてないだろうな?」

「ん~~・・・いっぱい触られちゃったわぁ~ウフフ」

「ど、どこの誰にだ!」

「そりゃみんなよぉ~!ともだ・・?!え?ちょっ?!」


『友達の奥さん達に』と言おうとしたエリーだったが、その前にヨハンに腕を引っ張られ、強引に二階へ連れて行かれた。

そしてすぐに二人の部屋から、パーンパーンという破裂音と「誤解よぅ!あぁん!許してぇヨハン!」という、どう考えても嬉しそうにしか聞こえないエリーの声がドア越しに聞こえ始めた。


翌朝、エリーはヨハンにべったり。他のみんなは寝不足でぐったり。


その結果、今日の店でのエリーの格好はなぜか、ふたりで決めた更にスケベな衣装となった。

全く以てして意味不明である。


「ヨハンに寝取られ属性があったなんて」ドモンが目をこする。

「何よそれ?」ナナはみんなよりも少しだけツヤツヤ。


ドモンは何も答えず、ヤレヤレのポーズをして階段を降りていった。



女性陣は二階で化粧と着替え。

ドモンとすでに着替え終えたザックが一階で朝食作り。

ヨハンはエリーがまだ離してくれない。


「ドモンさんおはよう~」

「ドモン君~起きてるぅ?」


スナックのママさん連中がやってきた。

昨日ドモンもスナックに少しだけ顔を覗かせたが、ゆっくり飲める状況でもなかったので、すぐに戻っていたのだ。


「おお、おはよう。かなり忙しかったみたいだな。聞いたよ?人手が足りなかったって」

「そうなの」

「屋敷の侍女達にでも手伝わせようと思ってるんだけど・・・」


「うん、その話なんだけど、臨時で人を雇えたから大丈夫って伝えに来たのよ。昨日の利益でかなりその・・・まあ余裕が出来たから」

「そんなに儲かったのか?」

「聞いたら絶対驚くわよ・・・」


ドモンの耳元で純利益を次々に発表していくスナックのママさん達。

一応売り上げ競争をしているので、隠さずすべてを伝えた。


「ウッソだろ?!そ、そんなに儲かったのかみんな・・・」とドモンも驚くほどの金額。


「うん、エリーさんのおかげでもあるけどね。あ、そうそう!そのエリーさんは?昨日のお給料払おうと思って」

「ああ今呼ぶよ。おーいエリー!ママさん達来てるぞ~!」

「はぁい」


朝っぱらから目も当てられないような服を着て、横向きでゆさゆさと何かを揺らしながら階段を降りてきたエリー。

ザックが「あぁ~」と叫びながら、両手で顔を隠して厨房へと飛び込んだ。


「エリーさん、朝からすごいわね・・・」

「ウフフ!ヨハンがこれを着ろと言うのよ~」


男を悩殺するどころの話ではない。抹殺する勢いにドモンも戸惑う。

ザックが身動き取れ無くなるので、ドモンが無理やり一枚上着をエリーに羽織らせた。


「でね、これが昨日のお給金。少ないかもしれないけれど」


そう言って四人が金貨をそれぞれ三枚ずつ渡した。

計12枚の金貨。日本円にして約120万円也。


「ちょちょちょ!ちょっとぉ!こんなに貰えないわよぉ!!ヤダ怖い!!私が手伝いたくて勝手に手伝っただけなんだからいらないのよ!!」エリーは大慌て。

「本当にいいのよ。ね?ドモンさん」とママさん。


「ああ、妥当なところじゃないか?その儲けから言ったら。・・・エリー、エリーがその倍くれと言っても納得するくらいみんなエリーに稼がせてもらったんだよ」

「そうよ。エリーさんには申し訳ないけれど、私達はそのぐらい儲けたのよ。ただ今日は人を雇わないといけないから、金貨三枚で許して貰いに来たようなものなの」


ドモンともう一人のママさんの説明に言葉を失うエリー。

純利益だけで各店舗、金貨十数枚から二十数枚を一晩で稼いでいた。

そしてその半分以上を、エリーが稼いだようなものであった。


「うぅ~ん、ドモンさ~ん・・・どうしたらいいのよぅ~」

「いいから貰っとけ」

「困ったわぁ・・・ヨハーン!ねえヨハンってばぁ!」


両手で握った金貨をジャラジャラと鳴らしながら階段を駆け上がると、二階から「えー!!!」という全員の驚きの声が響き渡った。

そしてまるでコントのように、全員がぞろぞろと一階へと駆け下りてきた。


「ド、ドモンこれはどういうことなんだ?!どうしたんだこれは??」気が動転しているヨハン。

「どうしたもこうしたも、エリーが稼いだんだよ。一晩で」


「お客さんがたくさんいたのは知ってたけど、こんなにも儲かったっていうの??」ナナも目を白黒。

「エリーにも言ったけど、エリーにこの倍払ってもまだまだ儲かってくるくらいだ」


咥えタバコのドモンがカウンター席に腰掛けながら答えていく。


「エ、エリーさん、失礼ですが、本っ当に妙な事はしていないのですよね??その・・・男性に対して・・・あの・・・怪しげなご奉仕とか・・・」と長老も心配する。

「していないわよぅ!」

「それは心配ないですよ。ただエリーさんの場合は、そのまんまでも男性にとってはサービス満点というか・・・上着を一枚脱げば、それだけで店はもう大盛り上がりで」


ママさんのひとりがそう説明して、ヨハンやドモンも納得。

エリーはあまり意識していないが、この店でも度々そういった事があったからだ。

エリーが歩いて食事をテーブル席まで届け、歩いてカウンターに戻るだけで、あちらこちらからチップが発生する事もあった。



「まあカウンターで客の相手してるのは昨日ちらっと見たけど、テーブル席でどんな感じだったのか、ちょっと俺相手にやってみてくれる?ナナ達も今日の参考になるだろうし」とドモン。


すました顔だが死ぬほど興味津々で、もっともらしい言い訳をして誤魔化した。


「なんかドモンはあれだけど、確かに私も知りたいわ。私だってお母さんみたいに儲けたいもん」とナナ。

「でもこんなに稼いだって・・・」と、ヨハンはエリーも心配だけれど、娘のナナはもっと心配。


「だって今度王都に行くでしょ?そしたら色んな物買いたいし、ドモンと美味しい物も食べたいもの。服だって欲しいしドモンにも買ってあげたいし。いつも貰ってばかりだから」


そのナナの言葉にハッとしたサンとジルも「わ、私達もたくさん稼ぎたいです!どうかコツを教えてください!」とエリーにお願いをした。

王都でドモンへのプレゼントを買い物してる自分を想像し、ふたりの鼻息は荒くなる。

長老も村のみんなへ食べ物やお土産をと考え、みんなと同様に頭を下げた。



「どんな感じと言われても・・・じゃあやってみるから、ドモンさんテーブル席に座ってて?」


エリーの接客術指南が始まる。

スナックのママさん達は「じゃ、じゃあ私達は店の準備をするわねぇ・・・」と、慌ててそそくさと去っていった。







エリーを含む小説のモデルはカクヨムの近況ノートに。

https://kakuyomu.jp/users/KTkazu/news/16817330648375501177



ケーコ以外はセクシーな方々で年齢も設定と違うけれど、あくまで大体のイメージで。ケーコは本物。

エリーの胸とナナの顔に関してはまた別の人がモデルなんだけれども、参考画像が先っぽが出ていたり素人の方だったりで、残念ながら見せられない。

前述した通り、あくまで雰囲気で。


自分の中のイメージがある人は見ない方がいいかも?



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