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第230話

「お、お邪魔するよ?・・・って近っ!」

「いらっしゃいませ~」

「いらっしゃ~いウフフフ」


母親直伝の自慢の煮物料理をたくさん用意しているスナックにエリーはいた。

どうせならとドモンがだしの素や醤油を分けてくれ、それとは別の和風の味付けの煮物も用意されている。

急遽ゴブリンの村から取り寄せたかぼちゃも煮付けにした。これらはドモン直伝。


「す、座っていいのかい?」

「はい、今日は混みそうだから奥から詰めて座っていただけますか?あとお試しの営業なので30分の入れ替え制でお願いしますね」

「あ、ああわかってるよ・・・いやぁそれにしても・・・近い」

「ウフフお飲み物は何にしましょうか?」


男性の目の前にやってきたエリーだったが、カウンターの半分ほどまで胸が飛び出していた。

近いと思わず言ってしまうのも頷ける。少し手を伸ばせば簡単に届いてしまう距離なのだから。


「エ、エールを貰えるか?」

「いいわよぅ!あ、私も一杯ご一緒しても宜しいかしら?」

「ああもちろんだよ。あと料理をいくつか貰えるかな?」

「はぁい!エール一杯追加とお料理の方を一人前お願いしま~す!」

「はーいありがとうございまーす」


まるで昔から一緒に働いていたかのような連携で、あっという間に料理とお酒が運ばれる。

その間にも次々と客がなだれ込んできて、店は一気に大忙し。


「じゃあいただくわねぇ?かんぱぁい!」エリーがニッコリ。

「お、おう乾杯!いやぁ~ハハハ、これはいいもんだな」

「これ食べてみて。私が食べさせてあげるから。はい、あ~ん・・・」

「ああ、ありがとう・・・ん??美味いよこれ!これは期待以上だ!エリーさんが食べさせてくれたせいもあるかもしれないけど」

「でしょ?ウフフ!この人のお料理はとっても美味しいのよ~。もっと食べて食べて!」


美味しい食事に美味しいお酒。そしてエリーのサービスでもう完全にデレデレ。

幸せすぎて心も身体も溶けて無くなりそうな気持ちであったが、実際に溶けて無くなったのはお金である。


エリーと入れ替わりで目の前にやってきた店主である女性も、エリーと同じように楽しい世間話をしながら、一緒にお酒を飲む。もちろんその客の奢りで。

別の人の接客をしようとするのを引き止めるために、ついまた飲み物を奢り、気がつけば30分足らずで銀貨十数枚が吹っ飛んだ。が、後悔はない。



「あん!駄目よぉ!お触りは出入り禁止になるわよぅ?」

「ごめんよエリーさん!目の前にあったもんだからつい・・・」「すまん!」

「じゃああなた達、奢ってくれたら許したげるウフフ」

「好きなだけ注文してよもう・・・」


テーブル席でフリフリと身体を揺するエリーの目の前に、たくさんの銀貨が入った袋をドンと置く男達。


「じゃあ少し高いワイン飲んでもいいかしらぁ?」

「へへどうぞどうぞ!でも銀貨50枚で払えるくらいのまでにしてね」

「じゃあ銀貨10枚のワイン入れちゃうわよ?」


グラス三つとワインを持ってゆさゆさと歩くエリーに、男達はまた目が釘付け。

狭い店内、人の間をすり抜ける際、うっかり柔らかい何かを男性客の顔に当ててしまった。


「ああん・・・お触りは駄目だけど、ぶつかってしまったのは仕方ないわよねぇウフフ。はいワインおまたせ」

「ああもう・・・最高すぎる!来て良かった~!!」

「どうして俺はそっちに座らなかったんだ・・・」


結局男達は銀貨50枚の全てを使い果たすことになった。



「それにしてもすごい人ねぇ」と額と胸元の汗を拭きながらも楽しそうなエリー。

「うん、明日は臨時で人を何人か雇わないと駄目みたい」と店主の女性。

「そうドモンさんにも伝えておくわね」

「うんお願いねエリーさん」


あっという間の一時間。

しかしその一時間でとんでもない売り上げを計上し、エリーは次の店へ。



「あ!エリー!」とカウンターに座る奥様達が手を振る。

「いらっしゃ~い!みんなも来てたの~?」エリーがカウンターの中へ。


「女性向けのお店もあると聞いて見に来たのよ~!そしたら想像以上で私驚いちゃったわ」

「こーんな小さなお店なのに、キレイな花で彩られて、まるで夢の中みたいね」

「あ、エリーも飲んで飲んで!こういうところではどんどん奢って楽しむものなんでしょ?ドモンさんから聞いたわ」


「ほんっとうに可愛いわよねぇこの店は。私もはじめ驚いたのよ。それじゃあ一杯いただくわねぇ!」と微笑むエリー。


この店は女性向けだったが、男性客もちらほら。

ただ先程と違って、店内の珍しい綺麗な花を愛でながら、ゆっくりのんびりと店の雰囲気を味わっていた。

これもまたスナックの醍醐味。



「それにしてもエリーの服は凄いわね。ママさんも凄いけど」ママさんという呼び方もドモンに習った。

「ちょっと触らせなさいよあなたフフフ」

「ああん駄目よう~こらぁ~」

「いいじゃないの~」

「私も触りたぁい」

「あん!もう仕返しよぅ!!」

「あはは!あたしないからやめてぇアハハハ!くすぐったいわぁ!胸がないと余計にくすぐったいのよぉ!!」


女性客達による遠慮なしのお触り大会にママさんまで加わる始末。エリーも反撃しキャッキャと笑う。

組んず解れつの女の園。


テーブル席にいた男性客はそれらを見ながら思わず息を呑み、つい女性達に高いワインを奢った。

ここでもエリーは大活躍で、またまたあっという間の一時間。



次は少しスケベな衣装の店へ移動するエリー。

だが、店の前では何か揉め事が起きていた。


「おいこの野郎!割り込むんじゃねぇよ!」

「何だとこの若造が!」

「ジジイが悪いんだろうが!!」


若者達と揉める年配の男性。

割り込んで入店しようとして止められたのだ。

当然割り込んだ年配の男性の方に非がある。


「あらぁ?あれはもしかして・・・」と様子を見つつゆっくり近寄るエリー。

「あ!おじさま!」騒ぎに気づき、店の中からスケベな衣装の女性が出てきた。


「ごめんねぇみんな。こちらのおじさまはこのお店の出資者なのよ。言ってくださればお迎えに上がったのに」と店の女性。

「そ、そうだったのか・・・悪いな爺さん」

「いやよいよい、私も説明不足だった。あとで皆に御馳走する故許せ・・・いや許してくだされ」


御者の格好をしたこの年配の人物。

当然ながらカールの義父である。

騎士達の目をかいくぐりながら、ようやくここまで来たのだ。


「こんな格好でいかがなされたのですか?!」

「おお!エリー殿!!」


カウンターの隅の席へ案内されている途中、後ろからエリーが義父に声を掛けた。

義父は振り向くと同時に言葉を失った。目の前には世界で一番柔らかそうで丸いものがふたつ揺れている。


「・・・これはなんと・・・美しい・・・」大きな胸だという言葉をすんでのところで止めた。

「ウフフありがとうございます」

「今日は見ての通り忍びでな。こっそりエリー殿の働きぶりを視察に参ったのだ」

「まあ!それは嬉しいことですけど・・・・大丈夫なのですか???」


義父と会話をしながら、カウンターに入って上着を脱ぐエリー。

女性達が皆薄着のため、あの店と同じように暖房が入っているのだ。


「ふぅ暑いわぁ。お飲み物を頂いても宜しいでしょうか?」

「ああ飲むが良い。これ店の者よ、エリー殿に冷えた一番高い酒を頼む」


懐からガシャリと金貨の入った袋を出し、エリーの目の前、いや胸の前のカウンターへと無造作に置く義父。

バラバラと袋から金貨がはみ出し、客達は驚きの声を上げた。


「もう~目立つような真似したらまずいんじゃないのぅ?」

「ここまで来てエリー殿のこの姿を見られたならばもう満足だ。死んでも構わんよハッハッハ」

「こーら!怒るわよ?冗談でもそんな事言っちゃ駄・目!ほらぁきちんとグラスを持って・・・はい乾杯~!」

「あ、ああ・・・か、乾杯」

「ね?ウフフ」


少し酔いが回り、顔や胸元を赤く染めたエリー。

話し方もついフランクになり、ものすごい色気を出して、義父の顔に吐息がかかるほどに顔を近づけた。

義父の心臓がバクバクと激しく鼓動する。


「美味しいお酒ねぇ~ふぅ~まだ暑ぅい」


カウンターの下にしゃがみ込んで、何やらゴソゴソするエリー。


「いかがなされた?」

「暑いし苦しいから下着取っちゃったのよウフフ!」

「え?!」「え?!」「え?!」「え?!」「え?!」「え?!」「え?!」「なんと?!」


従業員と客、全員の視線がエリーに集中する中、カウンターの上にドサッと大きく重たい脂肪の塊をふたつ置いて、エリーは美味しいワインを引き続き楽しんだ。





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