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第227話

「さあ貴様らも座って飲むがいい。王族としての命令である!」

「そうよ命令よ!お兄さん達!アハハ!」

「おじさまは偉いんだから。立場もここもご立派で・・・ウフフ!」

「は、はい・・・」


酔った義父と女性達の勢いに圧倒され、翻弄される騎士達。

筋肉質な身体をあちこち擦られて、気がつけば上半身裸で義父にワインを注がれる始末。


「あーあーあー」

「全くこれしきでだらしのない。そんな事では王宮の騎士にはなれぬぞ?」

「そんな格好で言われても説得力ねぇよ。早く下着を穿けよジジイ」と、はしゃぐ義父に呆れるドモン。


そんな時にサンがうぅんと寝返りをうち、義父は大慌てで身なりを整えた。



「ふむなるほど。ではその開業資金が必要なのだな?」

「そうそう。まあそこまで大げさなもんではないんだけどさ。一日だけだし」

「いくらでも良い。全て出そう」

「そうそういくらでも・・・って、いや、そこまでは言ってないってば」


小さな魔導コンロで料理をしているドモンと義父の会話に、顔を見合わせる女性達。

みんな揃って驚きの表情。


もうお腹がペコペコだというナナに、ドモンは小麦粉を練ってトルティーヤを焼いていた。

話をしつつもみんな興味津々で、結局全員分を作るハメとなった。


「かかった経費は出してくれるっていうからさ、みんな金貨五枚以内くらいで頼むよ。せこい事してお釣りかっぱらうのはなしだぞ?」

「貴様じゃあるまいし」「ドモンじゃないんだから」


ドモンの言葉に義父とナナが同時に吐き捨て、店内はクスクスとした笑いに包まれる。

トマトや鶏肉、チーズなど、「好みの具を自分で包んで食べろ」とドモンが具の載った皿を出すと、義父を押しのけナナが最初に食べてしまった。


「んんー!んぐ!好きな味にできるのが楽しいねドモン!もっと焼いてよ!」とナナ。

「へいへい、好きなだけ食ってくれ・・・ところで、オーナーが連れてきたこのお姉さん達は何者なんだ?」

「この人達はここのお客さんでもあるんだけど、私と似たような境遇というか・・・子供が好きなお仲間ね」


オーナーがドモンの手伝いをしながらそう答えた。

ドモンが見る限り、どうやら皆訳ありな様子。

なので深く理由を詮索するようなことはしなかった。


「じゃあ三人ともオーナーと一緒に子供達の面倒を見る先生ってことでいいんだな?」

「先生・・・!!は、はい!お願いします!!」

「ああ・・・私なんかがそんな大役を・・・」

「私頑張ります!うぅぅ・・・あの子もきっと空から喜んでくれると思います!」

「楽しみだわぁ!どんなことをするかみんなで相談しないと駄目ねウフフ」


先生という言葉にオーナーも含めて皆大張り切り。


「保育園の先生達がこんな人達なら、是非俺も預けられたかったよ」

「ドモンはスケベおじさんだから絶対駄目よ」モグモグしながら笑うナナ。


「違うってば。こんな優しくて良い先生達なら、子供の頃の俺も一人ぼっちになんかならなかったかもしれないなって」

「あ・・・」


料理を皆に任せ、タバコに火をつけ遠い目をしたドモン。


この女性達の夢の保育園は、ドモンにとってもまた夢であった。

優しい先生に沢山の友達。


何かを察した義父がドモンをまた横に座らせ、頭をワシワシと撫でた。



「あとスナックの売上競争の優勝賞品は何がいい?このジジイに頼めばある程度都合は付くと思うぞ?」

「うむ」

「じゃ、じゃあ、そのまま本当に店を・・・な、なんて流石に贅沢すぎるでしょうか??」


思わずゴクリと唾を飲む従業員達。


「良かろう。カルロスに場所の都合をつけさせ、店舗を構えさせようではないか」

「本当ですかおじさま?!」


義父の約束に声をひっくり返す女性。


「オーナーもそれでいいのか?ひとり独立しちゃうけれども」とドモン。

「ええもちろん構いませんよ。店の方はまた募集をかければ良いことですし、それに私は・・・」

「この店譲って保育園か?」

「アハハお見通しですね。やはり少し考えちゃいますねぇそれは。この街にはそういったものがないですし、挑戦してみたいな・・・なんてアハハ」


照れながらも夢を語るオーナー。

仲間の女性達もそれに大きく頷いた。


「まあそれは今回の結果次第だな。子供相手というのは一番難しいんだよ。安全面も考慮しなくちゃならないし、親達の望みも叶えてあげなけりゃならないし、喧嘩する子供もいるし帰りたいって泣いちゃう子供もいたり」

「しょ、承知しております」


「どのくらい子供が集まるかにもよるし、お昼ごはんの心配だってある。みんなの分を作るのは大変だし、それに子供って好き嫌いもあるしな」

「頑張ります!!私!!」「私も!!」


「ナナみたいなわがままな子もいれば、サンみたいにすぐおもらししちゃう子供だっているんだぜ?」

「もうドンと来いですよ!」「任せてください!」「あぁもう考えただけでミルクが出そう」


女性達のやる気は十分。

ドモンが不安を煽るようなことを言っても、まるで心は揺らがない。


「儲かるとは限らないし休みだって・・・」

「もう良いだろうドモンよ。私にはその気持ちは十分伝わったぞ」義父が口を挟む。


「子供相手は気持ちだけじゃどうにもなら・・・」

「その日しっかりとした働きが出来たならば、その保育園とやらを本気で作ろうではないか」

「!!!!!」


ドモンの言葉を遮り、義父の強権発動。

こうなったらもう決定したようなもの。


「あーあ俺知らねぇぞ、勝手に決めちゃって。なんか来週から健康保険の実施がどうとかで忙しいってカールも言ってたのに」

「うるさい!貴様が手伝えば良い話であろう」

「俺は一般庶民だから手伝えませーん。遊び人だから働きませーんベロベロベロ~」


数秒後、長椅子で寝ているサンの横に倒れ、ドモンは室内だというのにたくさんの星を見た。



「もう本当に馬鹿なんだから」と頭を擦るナナと、ふざけてドモンの股間を擦る保育士候補の女性達。そして従業員と侍女達もドモンを囲む。

ミルクのような甘い匂いのたくさんの脂肪の塊に全身を包まれ、「やっぱでっかいおっぱいって最高だわ」と言った瞬間、目覚めたサンに股間を強く平手打ちされてドモンは大悶絶。


ワーワーとドモン達が大騒ぎしている間に、義父とオーナーはこそっと二階へ。

真っ青な顔で階段を駆け降りてくる、ずっと隠れていた二組の客達。

騎士ふたりもいつの間にか、やけにスッキリした表情で、ひとりの従業員の女性の前に裸で跪いていた。



こうして各々がスケベな夜を過ごしながら、この街の将来を担う重大な事柄が次々と決められていった。



のちの歴史書にもこの日あったことがきっちりと書き記され、ドモン達のスケベさが後世にまで語り継がれることとなる。

ただしサンだけが『天使がその場を聖水で清めた』と間違った解釈で伝えられ、なんとか名誉は保たれた。



ドモン達は深夜0時前に帰宅したが、朝方まで羽目を外しに外した義父と騎士ふたりは、屋敷に戻るなりカールの嫁にこってりと絞られた。


サンと侍女達の『口喧嘩するふりでお仕置き大作戦』は、帰宅するなりナナの部屋から妙な声が聞こえ始めたため中止となり、部屋に戻って愚痴混じりの楽しいおしゃべり大会になってしまった。

が、その甲斐もあって、サンと侍女達は一気にその距離を縮め、サンにとって生まれて初めての親友が出来たのであった。




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