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第220話

「ねえドモン・・・怒ってるの?だって悪いのはドモンじゃないのよ・・・そりゃ私もやりすぎだったかもしれないけれど、でも私が怒る気持ちも理解してよ・・・だってさ、すぐにドモンは他の人とスケベな事して・・・私悔しくて」

「フンフン~フフフフ~フフフフフン♪いらっしゃいませいらっしゃいませ~ありがとうござい・・・ん?なんだ?」


「ちょっと何よ!何も聞いてなかったの?!わざと無視してたんじゃないでしょうね?!」

「おかしいな?どこからか声が聞こえるぞ??」


ドモンを追いかけてきたナナがひとりで喋り、ドモンはタバコを吸いながら周りをキョロキョロ。


「え?やだドモン・・・本当に私のこと見えていないの?」

「あれ?おかしいな?なんか俺には大事な人がいたような・・・なんて名前だったかな?なんかこう胸がやたら膨らんだ・・・」

「私よ私!!ナナよ!!ねえドモン嫌だってば!!!」

「その胸を揉めば思い出せそうなんだけど・・・うーん」


ナナが大慌てでドモンの正面に立ち、ブルンと揺らしながら胸を突き出した。


「ほ、ほらドモン!手を出して!!」

「さあそろそろ厨房に・・・ん?なんだこれは?」目の前にあるものを存分に揉みしだくドモン。

「おっぱいよ!あなたの好きなナナのおっぱい!!」嬉しそうに揉まれるナナ。


「わかってるよ。何やってんだよナナ。ほら早く行くぞバカだな」

「え?!」


涙目になったナナがポカーンとドモンの背中をしばらく見つめ、すぐに「うわぁぁん!!」と泣き出した。


「ひどいよおお!!ドモオオオン!!うわああああん!!」

「わ、悪かったよ!そんなに泣くなってば・・・ちょっと仕返ししようかなと思っただけだって」

「ばはぁあああん!!よがっだあああ!!ぼうあだぢが見えなぐなっじゃったのがどおぼっだあああ!!うわぁぁぁん!!」

「もう何言ってるのか分かんねぇよ。ごめんってば。俺がやりすぎたよ、もう泣くな。ナナの分のカツ丼も作るからさ」

「う・・う・・う・・ほんと?」

「本当」

「私幸せ」


ちゃら~んと幸せそうに急に舞い始めたナナ。


「なんなんだよもう。土曜の夜八時にみんなが集まりそうなやりとりだな」

「なにそれ?」

「なんでもないよ。俺ら世代の大切な思い出なだけだ」

「???」


エントランスのフカフカの絨毯の上で、でんぐり返しをしてガッツポーズをしたドモン。

ドモンを迎えに来た料理人も、それを不思議そうな顔で見つめていた。


「ドモン様、お米の方が炊きあがりました」

「ああ、ありがとう」


厨房のドアを開けるなり、皆の視線がドモンに集中する。

カールやグラだけではなく、他の貴族達や義父まで噂を聞きつけやってきた。


「ちっ!こりゃめんつゆ一本無くなりそうだな・・・」


ぶつぶつと文句を言いながら三つの器に炊きあがった米を盛るドモン。

自分の分とナナの分、そしてみんなの試食用。


「一度しか作らないからな?」

「はい!」「はい!」「お願いします!!」


小さめのフライパンに薄めためんつゆをいれて火をつけ、切った玉ねぎを弱火で軽く煮る。

そこへ切ったとんかつを入れていき、溶き卵を回し入れて蓋をした。


「1、2、3・・・はい10秒。出来上がりっと」


さっと器の米の上に乗せ、信じられない程あっという間にカツ丼が出来上がった。

薄っすらと火の通った半熟の卵がキラキラと光る。


「ほらナナ」

「え?もう??食べていいの???」

「温かい内に食べろ」

「う、うん・・・」


箸はこの場になかったので、スプーンでカツをすくってまずカプッと一口。


「ああ・・・ああもう私どうすればいいの?」

「何がだよ?」

「死ぬ前の最後の食事の候補がまた増えたのよ。もういっそのことドモンの作った物全部にしようかしら?」

「十品くらい食ったあと、やっぱお腹いっぱいだから死ぬの明日にしよって言い出しそうだな」

「うん」


半分ほど食べて、頬をパンパンに膨らませているサンに渡すナナ。


「残りはサンとジルで味見していいわよ。私、ソースカツ丼も食べないとならないから」

「ええ~・・・何だよ面倒くさいな」


ドモンがさらっと言っただけの『ソースカツ丼』という言葉を聞き逃さなかった。そして忘れない。

ナナはドモンが作るものを全て食べるつもり。


「わあ!あの時食べたものと味が全く違います!美味し~い!」とサン。

「ほ、本当だ・・・これ本当に死ぬ前に食べたい食べ物候補の上位だよ・・・ああ・・・」とジル。

「でしょ?」ナナは得意げ。


ドモンはナナに文句を言いながら試食分のカツ丼をあっという間に作って、コック長へ手渡した。

それをコック長が取り分け皆に配る。


「うむ!これは皆、米と一緒に食すものだ。そうだな?ドモン」と義父。

「さすが王族、わかってるねぇ。みんなバラバラに食っちゃうんだよな素人さんは」とドモンは本気で少し感心。

「あー私最初とんかつだけ先に食べちゃったわ・・・」落ち込むナナと、心でガッツポーズをするサンとジル。


「だあ!これも美味い!!どうすればいいんだ!ソースのカツサンドの口になっていたのに!!」頭を抱えるグラ。

「好みで言えばチキンカツをこの味で食してみたかったな」と叔父貴族。最初に息子に盛り付けてもらったチキンカツサンドが、人生で最高の味だと自負しているためだった。


「あぁもちろん作れるよチキンカツでも。作り方は一緒だから作ってもらえば?」とドモンがキャベツの千切りを米に盛り付けながら答えた。


「す、すべてを少しずつ食べたら駄目なのか?ソースのものやこれなどを・・・」

「ちっ!未熟者めが!そんな事をすれば味覚が混ざりあって美味さがブレるのだ。先程のソースは香辛料を使っておる。これは違うだろうにそんな事もわからぬのか!」


カールは単に色々食べたかっただけだったが、義父に思わぬ説教を食らった。

ドモンも思わず「おぉ~すげぇ!よくわかったなジジイ」と驚く。


「口内調味といって、口の中で合わさって美味くなるものとそうじゃないものがあるんだよ。最初にジジイが米と一緒に食えといったのは前者な。米の甘みとめんつゆの出汁などの風味が引き立て合うから、何倍も美味しく感じるんだ」

「なるほど・・・」


義父に怒られ真面目に勉強するカール。

ドモンの言葉を逐一メモに書き記すコック長。


「このめんつゆの出汁の風味と、とんかつソースに含まれている香辛料が微妙に合わないんだよ。でもこれをほぼ初見で気づくのは普通じゃないから、カールはそこまで気にしなくていいぞ」

「いや勉強になった」


二人のやり取りを聞きながら義父は得意げ。


「だがドモンよ、このとんかつ自体にも結構な胡椒が使われておるな?肉の臭み消しの役割も兼ねておるのだろうけども」と義父。

「ん?あ、本当だ。ちょっと強いかもな。でもほんの少しだぞ」と切り分けていたとんかつを味見しドモンも納得。義父の言う通りだった。


「おいおい・・・王族やべぇなやっぱ。俺こんな奴に飯で勝負挑んだんだなハハハ」

「そうだぞ貴様。今更何を言っておるのだ」


ドモンの言葉に呆れるカール。


「心配することはない。貴様の料理の腕前は私が保証してやろう。それに王にもそう言っておるからな」

「何を言ったんだよ」

「間違いなく世界一の腕前だと伝えたのだ」

「・・・・」


米と千切りキャベツの上に盛り付けたとんかつにソースをかけ、ナナに食べさせながらドモンは絶句した。


「ん!これもおいし!あ・・・おじいちゃん、ドモン逃げるわよ?んぐ」


口いっぱいに頬張りながらナナがそう言うと、ドモンはすぐにカールとグラにあっさりと取り押さえられた。





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