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第211話

結局サンを起こせないまま、一度食事休憩となった。


「腹が減っては戦は出来ぬってな。とりあえず飯にしよう」

「なんだよそれ?」と男の子。


「腹が減ったら勝てる戦いも勝てないみたいな話だ。で今日の晩飯は何?」

「え?!ドモンが作るんでしょう??」ドモンの言葉に驚くナナ。


「嘘??俺なの?!俺が作るの?怪我してんだろ俺・・・」

「そ、そういえばそうであったな」カールもそうだと思いこんでいた。


「まあ・・・じゃあ力つけるために焼肉でもしようか。ナナ、肉うどん作った時のあの機械あるだろ?肉を薄く切るやつ。あれを料理人達に届けてやってよ。量が必要だから同じ機械全部持っていって」

「やったわ!!すぐに持っていく!!」

「焼肉のタレも・・・いやこの人数に渡したらすぐ無くなっちゃうから、今回は塩コショウで我慢してもらおう」

「そ、そうね・・・じゃあ行ってくるね」


ドモンとのやり取りを終え、ナナが部屋を飛び出した。


「なんとケチな男なのだ」とカール。

「そこは勘弁してくれよ。醤油や味噌が作れるようになって、それこそサンが目覚めてくれたら、きっと焼肉のタレも作れるようになるよ。今いろんな物の作り方を調べてくれてるんだ」

「うぅ」


ドモンの言葉に返事をしたサン。

そんなサンの頭を義父が優しく撫でた。



サンをベッドに寝かせたまま移動する一同。


「ドモンよ・・・急がねばならぬぞ」

「わかってるよ。飯だろ・・・サンの」

「そうだ。その文献によれば・・・目覚めなければ数日で餓死をすると書いておった」

「飯を食う夢を見ながら餓死すんのかよ。残酷な話だな・・・」


皆に聞こえぬように話す義父とドモン。


「今度サウナが出来たらさ・・・ちょっと話があるんだよ。ふたりだけで」

「私からもある。恐らくは・・・貴様と同じ話である気もするがな」

「・・・うん」


寂しそうに肩を落としたドモンの頭を、歩きながらワシワシと撫でた義父。

義父はドモンやカールよりも高身長な上、がっしりした体型なので、最近はドモンも父親のように感じてきていた。



厨房へと入ると、ナナが張り切ってスライサーの使い方を伝授している。


「ここにお肉をセットして、この部分でお肉の厚さを決めるのよ」

「ふむふむ」

「お肉は切りやすいように少し凍った物の方がいいわ!」

「なるほど!いやぁ便利な物ですなこれは!」


コック長がメモを片手に返事をする。

料理人達はそれを取り囲むように見ていた。


「すぐに冷凍されている肉を用意しろ!」

「何の肉にしましょう?」

「今回は牛がいいかな?」

「は、はい!!」


コック長と料理人の話にドモンが割って入る。

牛肉を持って戻ってきた料理人達に、買ってきた四台のスライサーを全て渡した。


「この機械は一応一台は屋敷のお土産なんだよ。てかコック長へのお土産な」

「なんと!!」「本当か?!」


ドモンの言葉にコック長とカールが同時に叫び声をあげる。

一台は店用、もう一台はそれが壊れた時の予備、更に一台は鍛冶屋か隣街の道具屋で量産してもらうためのサンプル、そして最後の一台がこのコック長へのお土産である。


「今回はどのくらいの厚さで切り分けましょう?」とコック長。

「煮たりしゃぶしゃぶにしたりじゃないから、3つ目のメモリくらいでいいんじゃないか?ただ厚すぎたら普通に包丁で切るのと同じ食感になってしまうし、それよりも今回は少しだけ薄くする感じで」

「なるほどそうですね!ではそういたしましょう!皆、話は聞いてたな?」

「はい!」「はい!」


ドモンの意図をすぐに理解し、作業を開始する料理人。


「ならば以前スペアリブを外で焼いたように、今回も外で焼きましょうか?照明を焚きまして」

「いいね。今回は塩コショウだけどそれなら美味しく感じると思うよ。米があればもっといいんだけど、全員分は流石に買ってないからな」

「あるぞ」

「へ?」


気を利かせてくれたコック長に感心していたドモンだったが、もっと気が利く男がここにいた。


「サンの結婚式ではカレーライスにすると言っておったであろう。まだ試しではあるが、様々な種類の米をある程度用意させたのだ」とカール。

「よくやったカール!」ドモンは大喜び。


「私達ではわからぬ故、貴様が見るなり試食するなりで判断してくれ」

「よしわかった。とりあえず見せてもらえる?」

「案内してやれ」

「はい!」「はい!」「はい!」


先程ドモンのスケベ過ぎる言葉を聞いて退散した侍女三人が大きな返事をして、米のある倉庫へと先導した。

当然この侍女三人は、ドモンが以前少しだけ抱いた三人だ。


「こちらでございひまふっ!ほひぃ!」

「んっ!!んんん~~!!!」

「ばぁぁ!!ドモンざまぁぁ!!お情けを!お情けをぉぉぉ!!」


着替えたばかりだというのにまた着替えなければならなくなった気の毒すぎる侍女達が、薄暗い倉庫の中で嬉しそうにドモンへと絡みつく。


「この細長いのはインディカ米に近いな。パエリアみたいなのにはいいんだけど・・・イメージとはちょっと違うな」

「はぁん」


「ううむ・・・殆どがインディカ米だな。ん?これはちょっと日本のに近いかな?」

「オホォ!」


「よし!これとこれを炊いてみよう!」

「ドボンざまぁぁああ!!」

「だから『ざまぁ』だと違う意味になっちゃうから・・・なんか噴水に落ちてざまあみろみたいな感じにも思えるし」


ツヤツヤ顔の侍女三人に米を持たせ、厨房へと戻ったドモン。

早速米を研いで鍋で炊き始めた。


「随分遅かったのね」とナナ。

「え?!そ、そりゃよく選んでたからな!!それぞれ特徴があってどれも具合が違うというか。いやそうじゃなくて」

「どうしたの?何をそんなに焦っているのよ?」

「なんでもないってば!!もうっ!!」


ジロッと侍女達を睨んだナナ。


「サンが大変な時にそーんな事あるわけがないものね」

「そ、そりゃそうだよ!!」

「謝るなら今のうちよ?5秒以内。嘘をついても必ずバレるからね。はい5、4、3・・・」

「あ、あ、あ!」


ゴクリと唾を飲み込むカールとグラ、そして料理人や当事者の侍女達。

義父は右手で顔を覆い隠すように頭を抱え、大きなため息をひとつ。


大慌てでドタバタと逃げ出したドモンをツカツカと早足で追うナナ。


「にぃ~」

「ヤダヤダヤダ!!俺悪くない!!」


「いーち!!!」

「助けてサン!!」


寝ているサンの部屋へと飛び込み、サンのベッドへ潜り込んで隠れるドモン。色の白いキレイな脚にしがみつく。


「ゼロ!!!!」ガバッと掛け布団をめくるナナ。

「うわぁ!浮気しましたぁ!!許してぇぇぇぇ!!!」


「もう許さないです!!!悪いドモンさん!!!めっ!!!」


ドモンを膝の上に乗せ、パーンパーンとお尻を叩くサン。

ナナはそれを見て安心し、へなへなとその場に座り込んだ。


結局呪いをかけられた者が、呪いをかけた者を直接退治することとなった。





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