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第210話

「どうしたらいいの?ドモンと結婚の話をしても起きなかったわよ?」

「悔しいけどサンにとっては両親の方が大切なんだよ・・・小さな頃に死別したんだろ?ナナも想像してみろよ。死んでしまって二十年近く会えなかったヨハンとエリーに会うところを」


ドモンの言葉に納得するナナ。そして一同。


「そこから目覚めるということは、そこでまたお別れをするということでございますから・・・」と長老。

「それは・・・」

「確かにきついな」


グラとカールが想像したのは亡くなった父親だった。


「ナナがヨハンとエリーにもう一生会わなくてもいいやと思えるものはなんだ?」

「そんなのないわよ!!やめてよドモン、なんか悲しくなってきちゃった・・・」


これからサンにその選択を迫るのだと改めて理解をし、ナナはゾッとした。

あまりにも残酷過ぎるのだ。まさに悪魔の所業。



「とにかくいろいろ試してみましょうよ」

「そうだな」


二人の言葉を聞き、知恵を振り絞る一同。


「サンドラ、一緒に遊ぼうよ」

「うぅ」


男の子の言葉に反応はあったものの、サンは目覚めない。


「サン!ドモンがお菓子を作ってくれたわよ!」とナナ。

「うぅ」


やはりサンは目覚めない。


「そのぐらいでは両親との別れを越えられるものではなかろう」とカール。

「甘い言葉ではなく、逆に驚くようなことで家を飛び出させるのはどうだろう?」とグラ。

「うん、確かに下手に別れを辛くさせるより、一気に飛び出してしまった方が心の傷は少なく済むかもしれないな」ドモンも頷く。


「じゃあ・・・サン!ドモンが死んだわ!!」

「・・・・」

「駄目ね。大して驚いてはいないみたいよ」


ナナが首を横に振る。


「酷いじゃないかナナ・・・」サンに無視され落ち込むドモン。

「恐らく拒否反応を示したのかと思われます」と長老がドモンをフォローした。


「だ、だよな?そうだよな?サンに限ってそんな事・・・サン!ナナも死んだぞ!」

「・・・・」

「ほら!ナナの事の方がどうでもいいんだよサンは」

「ちょっとサン!どういうことよ!!」

「うぅ」


ジトっとした目でドモンとナナを睨む子供達。

サンの一大事だというのにふざける気持ちがわからない。


「じゃ、じゃあサンを怒らせたり、耳を塞ぎたくなるようなスケベなことを言ってみたりしたらどうかしら?」

「そ、そうだな。それじゃお前らはしばらく耳を塞いでいてくれ」


への字口で耳を塞ぐ子供達。


「サン、王宮での結婚式だというのにどうして裸なんだ?何万人という人におもらしを見られてみっともない」

「うぅぅぅ!」

「は、反応がすごくあったわドモン!」


呆れるカールとグラ。


「早く出てこないとみんなの前で脚をパカッと開いてペロペロしちゃうぞ?そんな恥ずかしい姿は両親にも見られたくないだろ?街の広場に全裸で磔にされて、漏らすほど鞭で打たれて・・・両方の先っぽも伸びるほど引っ張って同時にクリクリと」

「うぅぅぅぅぅぅぅ」

「はぁん駄目よ駄目!どうしてそんな意地悪なことをするの?!うふぅぅん」ナナがモジモジ。

「ああドモン様お許しを・・・」「くはぁ・・・御主人様」長老とジルまで大悶絶。


その後もしばらく続いたスケベ過ぎるドモンの言葉に、侍女達がフラフラとした足取りでこの場を後にした。

カールとグラまで顔が真っ赤。


「うーんこれでも駄目か」とドモンは頭を悩ませる。

ナナはドモンの首に両手を回し、チュッチュチュッチュと求愛行動。



「それにしてもどうしてこんなに苦しそうなんだろうな」


夢の中とはいえ、両親と会えたなら笑顔でも良いはずだとドモンは疑問に思った。


「それは有り余るほど、人の三大欲求を満たそうとしてくるためかと。睡眠欲に性欲、そして食欲と」

「どういうことだ?」


「私も夫にたくさん果物を食べさせられました。それが本当に止まらないのです。食べても食べても、もう口の中一杯に・・・苦しいのですが幸福感もありまして」

「つまりサンも今、腹いっぱい食わされ続けてるってことなのか?」

「恐らくは・・・。私はたくさん食べさせられ、眠らされ、そして・・・夫に抱かれていました」


会いたかった人に出会え、すべての欲求を満たされ続けている状況を想像し、そんなもの抜け出せるはずがないとドモンやカール、グラも思う。


普通の人間ならば一発で堕ちる。

堕ちて二度と這い上がることは出来ない。


つまり、死ぬまで眠ったままということだ。


長老が目覚めたことで、いつかどうにかなるだろうと思っていた一同も、事の深刻さに気が付く。

サンは今、その瀬戸際で戦っている。



「亡くなった両親と欲求を満たされ続けることを超えるものか・・・そんなもの何があるんだよ」とグラが頭を抱えた。


「サン!ドモンと結婚式あげるんでしょ?」

「うぅ」

「やっぱりこれでも駄目だわ。ドモンのことでもダメならどうしたらいいのよ」


ナナがもう一度ドモンとの結婚を引き合いに出してみたが、それでもサンは起きなかった。


「サン・・・御主人様が困ってますよ。早く起きて」

「うぅ」


ジルも呼びかけたがやはり駄目。

サンはその呪縛に囚われたまま。


そこへ話を聞いた義父もやってきた。


「どのような様子なのだ?」

「ジジイ・・・返事をするようにうなされるだけで、全然起きないんだよ」

「うむぅ、これは・・・」


ドモン達から説明を受け、状況を把握した義父がジロリとドモンをひと睨みし、言葉を飲み込む。

何かの古い文献に記録されていた悪魔の呪いそのままであり、直感でドモンの事を疑ったが、その考えは胸の内にしまった。


「何か良い方法知ってるか?」とドモン。

「まあ呪いの一種のようなものだな。うろ覚えではあるが・・・」


「やはりか・・・か、解決方法は?!」とカール。

「・・・呪いをかけた者を・・・退治することだ」


そう言って義父は目を伏せた。

青ざめる長老と何かを察するドモン。


その様子を見ていたカールがもしや?といった顔をしたが、すぐに首を横に振って打ち消した。


「どこの誰なのよ!私が退治してやるわよ!」

「なんとなーくナナはそいつをいつも退治してるような気がするよ俺は」

「どういう意味よ?」

「いや、そんな気がしただけだ」


怒れるナナにドモンがそう答え、ヤレヤレのポーズを取った。

ザックとジルが長老の顔を見ると、長老は静かに首を横に振る。


「ゴメンな、サン。俺が不甲斐ないばかりに」

「うぅ・・・うぅ・・・!」


サンは困った顔でまたうなされた。





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