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第187話

サンと添い寝をしたドモン。


「ふぁ~結構寝ちゃったな」


すぅすぅとまだ幸せそうに寝息を立てているサンを腕枕からそっと退け、ドモンが長老の家から外に出ると、空は日が暮れかけ赤く染まっていた。


カールはグラや騎士達に連れられ温泉を堪能。

ヨハンとエリーとナナはゴブリン達と何かを飲みながら語り合っていた。


「ドモン起きたのね」

「ああ、だいぶスッキリしたよ」


ナナが駆け寄る。

サンと一緒に寝ていたことは知っていたが、一応気を使って邪魔をしないよう我慢していた。



「ドモンさん大丈夫?ねえお願い正直に教えて。火傷は今どんな感じなの?」とエリーはまだ心配している。

「いやまあ・・・そりゃヒリヒリしてるよ。痛さ的にはどうかなぁ?ナナのお尻ペンペンの一番強いやつをずっと顔に食らってるような感じかな?ハハハ」

「・・・・」


ドモンはそう冗談を言って笑ったが、その言葉に皆息を呑んだ。

ヨハンは一度だけ自分の頬を強く叩き、下唇を噛む。

本当はそんなレベルの痛みではなく、もっと激しい痛みをドモンは耐えていたため、自分の中ではかなり柔らかいイメージで例えたつもりであった。


軟膏を塗っていたり、顔を水などにつけている間だけ少し痛みは和らぐが、乾燥すると激しく痛む。風は地獄。休むことなくヒリヒリズキズキが顔全体に広がっていて、普通の人なら病院で鎮痛剤を打たれ、耐え続けてるくらいの痛み。


「だ、大丈夫だってこのくらい本当に。脚と違って徐々に治るものだしな。っていうか脚の痛みに比べりゃどうってことないよ」


ドモンは障害を負った脚の痛みが一生癒えることがないと知った時の、あの絶望を知っている。


それに比べればこれくらいは我慢できる。いつか勝手に治るのだから。

なので大丈夫と言ったのは本心だった。


ナナは大丈夫だと言った言葉で素直に喜び、エリーはドモンの脚のことを考えてまた卒倒しそうになった。


「エリーは心配しすぎだよ。俺なんて酒飲みゃそんなのすぐ忘れちゃうんだから気にすんな。さあ晩飯を作るからみんな手伝え」

「お、おう。何をするのか教えてくれりゃ俺達が作るから、ドモンは無理をするな」

「うん、今回は男達に頑張ってもらうつもりだ最初から。力仕事だからな」


ヨハンにそう言って、ドモンは大量の小麦粉を持ってくるように指示した。


「長老、この前の猪肉はまだ残ってるか?」

「ええ、ございますよ」

「じゃあそれを馬車の冷蔵庫で少し凍らせてくれ」

「えー!お肉をわざわざ凍らせてどうするつもりなのよ?!」


ナナの言葉にドモンがフッフッフと笑いながら、向こうで購入した冷凍肉のスライサーを持ってきてみんなに見せた。

だが全員が見たことがない状態なのでキョトンとした顔をしている。


「何これ?」

「これは肉を薄切りにする機械なんだ」

「そんなの包丁だって出来るじゃないの」

「違うんだなそれが。俺が向こうで買ってきた焼肉あるだろ?あんなふうに切れるんだよ」

「ええ?!なんですって?!」「え?すごい!」


しかしそれを驚いたのはナナとジルだけ。

この場でドモンが買ってきた焼肉用の肉を食べたことがあるのが、このふたりだけだったためだ。


「お、お肉さえあれば、これからはあの焼肉がいつでも出来るのね?!」

「そうだ。店でも出せるぞ。まあ例の高級肉ってわけにはいかないけどな」


「それでも凄いじゃない!ねえお父さんお母さん大変よ!ドモンが凄い物買ってきちゃった!!」

「いや・・・そう言われても俺にはさっぱりだ」


これからいつでも焼肉が食べられると喜ぶナナと、まだまったく意味がわからず、頭をペチペチ叩くヨハン。エリーも不思議顔。


「それはまた追々な。今は小麦粉を練る作業だ」

「またあのパスタでございますか?」ドモンの言葉に目を輝かせる長老。

「今回は違うんだ長老。似てるけどな」


長老に説明しながらドモンはレシピ本を開き、ふむふむと頷いて準備に取り掛かる。


「小麦粉2カップにつき水が半カップと・・・あと塩少々で先に塩水を作る。ほうほう・・・それで3~4人前ね。なるほど」


ドモンは三つのボウルに8倍量でそれぞれを入れ、ヨハンとゴブリンの男らに手渡した。


「粉っぽさが無くなるまで混ぜたあと、手の平の付け根で押すように捏ねるんだとさ」

「よしわかった。任せとけ」

「俺達もやろう」「おう」


せっせと捏ね始める男達。


「でもこれが力仕事なの?なんだか私にも出来そうな気がするけど?」ナナが首を傾げる。

「徐々に力仕事になるんだよこれが。マヨネーズ作りなんて可愛いくらいのな・・・」


捏ね始めてから約10分。


「こ、こんなもんでどうだ?」とヨハン。

「どれどれ・・・うん、じゃあこれを半分に折ってまた同じだけ捏ねてくれ」

「え、えぇ?!」と声を上げたのはザック。


「それが出来たらあと更にもう一回やって出来上がりだ」

「な、なんだってぇ?!腕が千切れちまうよ!!」


絶叫したヨハン。

エリーが代わってやってみたが、量が多いこともあり、もう小麦粉はびくともしない。

ゴブリン達は交代交代で、ヨハンはエリーの応援を受けながら孤軍奮闘で頑張り続ける。


そこへ良い気分でカールとグラと騎士達が温泉から戻ってきて、ここにいる全員が悪い顔でニヤリと笑った。



「どうして俺はいつもいつも!!」

「なーぜ!!私がっ!!こんな!!事を!!」

「はっ!!はっ!!」


グラは泣き言、カールは愚痴、騎士達は気合。

ドモンが「イターイ!つらぁい!動けなーい!」と突如泣き言を言いだして、周りもそれに乗った形。

本当なのにウソっぽい言葉にまんまと乗せられ、小麦粉を練るハメとなった。

ドモンは泣き言を言わないと言っていたのは何だったのか?


「せっかく温泉でくつろいだというのに・・・また入らねばならん!」とカール。

「仕方ないだろ。俺は怪我してるし、それにもういい歳だし」とドモンがタバコに火をつける。


「私だって今月五十歳になるのだぞ!!」

「へぇ~俺は12月だからカールは先輩だな。ねぇナナ聞いた?カールってもう五十歳だって。本物の本気のおじさんだな」

「ウフフ!なんだか40代と50代ってまるで印象が違うわね!」ドモンの言葉に爆笑するナナ。

「き、貴様ら!ドモンが五十になった時覚えておれ!!」


必死に小麦粉を練り続けるカールとグラ。騎士は交代しながらだったので、まだそこまで疲れてはいない。


「これもパスタの時に言ったようにナナの乳首くらい・・・いや、興奮した時のナナの固くなった乳首くらいまで練ったら出来上がりだ」

「だ・か・ら!!どうして毎回そこで私のおっぱいが出てくるのよ!!」


ドモンの言葉にナナが胸を隠す。

ドモンは知らん顔。


「グラのはもう出来上がりだな。みんなこれを触ってみてくれ。これがナナが興奮した時の乳首の固さだ」

「どれどれ・・・」

「ちょっとお父さんまで!!!」

「あら、ナナ立派じゃないウフフ」

「お母さんも!!!!もう!!!!!」


ドモンのせいで生き恥地獄のナナ。

だがそのおかげでしっかりとした生地が出来た。


出来た生地を濡れた布に包み、馬車の冷蔵庫へ持っていき休ませ、代わりに凍った猪肉を持ってくる。

この肉をスライサーにかけて薄切り肉を作るのだけれども、実はドモンも初めてなのでドキドキ。


「お肉をここにセットすればいいの?」

「うんそうみたい。きちんと出来ればいいけど・・・」


説明書を読みながらドモンが肉をセット。


「で、このレバーを下げてザクザク切るんだってさ」

「私やってみていい?いくよ?」


ナナがレバーを下げる。


「わ!!見てドモン!!見てよ!!焼肉の時の肉!!」

「おおスゲェ!!高かったけど買って良かった!!」

「凄い凄い!!凄いわ!!」


ドモンとナナは大興奮。

相変わらずほとんどの人はポカンとそれを見ていた。

それを見たドモンが仕方ないと小さな鍋にお湯を沸かす。


「カール、グラ、長老、このお湯にこの肉を一枚十秒ほどくぐらせて、このタレにつけて食べてみろ」


ドモンが器にしゃぶしゃぶのタレを用意。


「お湯にくぐらせるだけで肉を食えというのか?」とグラ。

「食わないならエリーにやるけど?」

「誰も食べないとは言ってないだろ!クソ!!」


疑心暗鬼のまま三人がフォークに肉を刺し、「いーち、にぃ、さ~ん・・」と素直に数を数え、ギャハハとドモンは爆笑。


「アハハ、よしそろそろいいぞ。このタレにつけて食ってみてくれ」

「本当に大丈夫なのであろうな?」


カールは領主という立場もあるため、食に関しては人一倍気を使っている為心配であった。

三人は恐る恐る肉を口の中へ。


「うが!!に、兄さん!!す、すごいぞこれは!!」人生初のしゃぶしゃぶにグラ大絶叫。

「ド、ドモン様!!え?えぇ?!猪肉が・・・」その意味がまったくわからない長老。あまりに美味しすぎた。

「こ、米だな・・・ドモンよ。これは米を食うための・・・」カールはすぐに米を欲した。


「分厚くて食い応えがあるものだけが肉の食い方じゃないんだよ。こういった食べ方もあるんだ」

「私もドモンに食べさせてもらうまでそう思ってたわ。薄い肉とか出されたら、なんか損した気分だったもの。ところで私の分は?」


当然自分も食べられると思っていたナナ。

渋々ドモンがまた肉をスライスしながら「ナナはもうエリーのおっぱい一直線だな」と呆れたが、「私も食べたいわぁ」とエリーも言い出し「良かったなナナ。ナナがエリーのおっぱいに追いつくことはなさそうだ」と結局エリーの分もスライス。


「美味しい!!美味しいわぁ!!」エリーがピョンピョンと何かを、もうこれ以上ないほど跳ね散らかした。

「まだこんなお肉の食べ方があったのね・・・お湯にくぐらせただけでこんなに美味しくなっちゃうんだもん」ナナはまた口の中がパンパンに。

「ううむ・・・このタレが美味いんだな。前にドモンが買ってきたやつと違うよな?」エリーから一口貰ったヨハンが唸る。


「肉の厚さ、調理方法、様々なタレ、それらによって同じ肉でもまるで違うものになる。これから食べるものもきっと美味しいよ」


しゃぶしゃぶのおあずけをされていた他のみんなが、ドモンの言葉で一斉にゴクリとツバを飲みこんだ。





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