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第184話

反省などするはずもない。

嫌なことがあれば逃げる。

嫌な人がいれば関係を断つ。


ドモンは今までそうして生きてきた。


「よーし!今日から新たな冒険に出発だ!さよならみんな!」


酒瓶を片手に、ドモンは見つからぬようにするため、道から外れて森の中へ。

鼻歌交じりに左脚を引きずりひょこひょこと歩きながら、拾った木の枝を振るう。


このまま行けばいつか異世界の入り口に到着する。

そのまま帰ってもいいし、一度通り過ぎて向こう側にも行ってみようか。

とにかくみんなとはここでもうお別れ。


別れは寂しいけれど、ああなってしまったらもう仕方ない。

今はもうスッキリとし、晴れやかな気持ち。


最低な男である。



ゴブリンの村ではドモンの捜索が始まった。

怒れる者、心配する者、悲観する者。

ナナはその全てに当てはまる。


どこへ向かったのか?拐われたのかそうではないのか?それすらもわからない。

だが皆直感でそれを感じ取っていた。



ドモンは本当に逃げたのだと。



ナナが泣いているサンを後ろに乗せて馬を走らせた。

ドモンは間違いなく異世界の入り口に向かう。

それも直感であったが、その直感は当たっていた。


だが馬はあっという間にドモンが潜んでいた森を通り越し、かなり離れたところでウロウロとしていた。



「うぅぅ・・・まだこんな遠くまで来てはいないと思います・・・うぅ・・・」

「出てきなさいドモン!いるのはわかってるのよ!出てこい!!」


泣き続けるサンと、怒るのは逆効果だとわかってはいても、怒りが溢れ出てしまうナナ。

今来た道を今度はゆっくりと馬を歩かせながら戻り、周りをキョロキョロと見渡す。


すると森の中の草むらがガサゴソと揺れるのを発見し、馬を繋いで大慌てで草むらの中へとふたりで突っ込んだ。

が、そこにはドモンの姿はなく、褐色の肌の色をした大男達と、恰幅のいい女性達がゾロゾロと列をなし歩いていた。


「オ、オーク?!」

「ふ、ふわぁ・・・!!ってあれ??奥様ちょっと待って!!」


大勢のオーク達の中へ飛び込んでしまったナナが、大声を上げて背中に背負った剣の柄を握るも、サンが何かに気がつきすぐに止めた。


「あ、あの帽子・・・御主人様の編み物の機械で作った帽子です!」

「えぇ?!」


オークの中のひとりの女性が毛糸の帽子をかぶっていたことを発見するサン。

何がなにやら訳が分からないナナ。


「ドモン様のお連れの方でしたかな?私達は敵ではございません。驚かせてしまい申し訳ありません」

「王は侍女達を連れ、ドモン様のお迎えに先に行かれました」

「この帽子はおっしゃられていたように、ドモン様から頂いた物で作ったものです!ああ嬉しい・・・」

「王が居られないので分かりかねますが、もしかしてドモン様の奥様でいらっしゃいますか?」


魔物の群れに飛び込んでしまったと焦っていたら、怒涛のように話しかけられ、混乱するふたり。


「ど、どうなっているの?そして本当に敵ではないのね?」

「はい」

「ドモンを迎えにってどういう事なの??」

「私達の王が、ドモン様がおひとりで森の中に入ってしまわれたことを知り、獣や・・・また悪人などに襲われないようにと慌てて飛び出しまして、私達はその後を追っている次第にございます」


そう説明を受けても全く意味がわからない。

なぜオーク達がドモンを追って、いや、救出しようとしているのか?


「とにかく、ドモンの居場所はわかっているってことなの?」

「私達の王が大体の場所を把握しているようです。私達はその後を追っているだけでして・・・」

「そうだったの・・・というか驚かしたのは私達の方のようね。ごめんなさい」

「いえいえいえ!おやめ下さい奥様!頭をお上げください!」


ナナとオークのひとりがそんなやり取りをしていると、別のオークがナナの馬を連れてやってきた。


「どうぞお乗りください。馬は私達がお引きいたしますので、脚をお休めくださいませ」

「こちらの方は・・・?」

「サンよ。ドモンと次に結婚するの」


サンがナナの後ろに隠れながらペコリと頭を下げた。


「まあ!左様でございましたか!それは大変失礼いたしましたサン様!」

「い、いえ・・・うぅ・・・様は必要ありません」

「はい!サン・・殿?」

「サンで良いです!」

「私はナナでいいわよ」


オーク達全員が「いえいえいえ!!」と手を振りながら恐縮している。

ほとほと困った様子。


「やはりドモン様の奥様ですので、大変申し訳ございませんが、ナナ様、サン様とお呼びさせてください。お願い致します」

「ええ?」「そんな・・・」


オーク達がこぞって頭を下げ、やはりナナとサンは大混乱。

ただ気分は悪くはない。


「サン様、お顔をお拭きしてもよろしいですか?涙の跡がお顔に・・・」

「ふぁい」


目を瞑り顔を差し出したサンに、前かがみになって優しく顔を拭くオークの女性。


「まあ、なんとお可愛らしい。ナナ様と同様、ドモン様におふさわしい美しさでございます」とニコリと笑う。

「う、うぅ・・・ありがとうございます・・・」嬉しさと混乱とで、またぽろりと涙を溢れさせてしまったサン。


「あぁ申し訳ございません。私達は元々体格が大きく、怖がらせてしまいましたね。まあどうしたら良いのでしょう??」

「違います!あの嬉しかったのと驚いただけですから・・・」


「サン様のお噂は聞き及んでおりますよ。ドモン様が異世界の機械を私達にお与えくださった時に、使い方がわからない時はサン様かゴブリン達に聞いて欲しいとおっしゃられておりましたそうで」

「御主人様が?!」

「ええ」


跪いてサンの手を握り、ニッコリと語りかけたオークの女性の言葉に、サンの表情が一気にぱぁっと明るくなった。


「ぐぬぬぬ・・・またあの男、サンのことだけ・・・うぅぅぅ!」ナナが馬上で額に青筋を立て、オーク達の褐色の顔が青ざめる。

「た、たまたま会話の流れでそうなってしまっただけかと・・・」

「お怒りをお沈めくださいませ」


大男達がペコペコと頭を下げる。

その様子にやはりナナは首を傾げた。


「ねえどうしてこんなにもみんな親切なの?それより・・・ドモンって一体何者なのよ?」


ナナがそう聞いた時、四人のオーク達と、酔って草むらに寝そべっているドモンを発見した。





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