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第181話

「何が引き合わせただ!馬鹿者!!心配ばかりかけおって!!」

「せっかく格好のいいナレーション入れたのに茶々入れるなよ」


泣いていたと思ったら今度は怒り出すカール。

ドモンがうんざりした顔を見せたことで、更にカールを怒らせた。


「大体散々俺は死なないって言ってあっただろ」

「一度死んだだろうが!」グラも徐々に怒り始める。


「だーから生き返るんだってば。俺、異世界人とか異世界は関係なしに、何回も同じような経験あるんだよ」

「かといって『ああそうか』と納得できるわけがあるまい!!」


カールと口喧嘩をしながら、ドモンが缶酎ハイを皆に配る。

備長炭に火をつけて真夜中にバーベキューの準備をしつつ、ドモンは眠っている時にたまに見る橋の向こうの街の話をした。


「死んだり死にかけたりしたらその街へ行くというのか・・・」とグラ。カールや騎士も驚きを隠せない。

「し、死んだあとに行く場所があるというのか・・・やはり」とカール。


「そこが天国か地獄かどうかなんてわからんぞ?ただそこから川を泳いで戻る度に息を吹き返してるらしいんだよ。意識が戻ったり」


騎士に手伝ってもらい、米の準備を済ませ、飯ごうを火にかけた。

ドモンは水を買うのをすっかり忘れ、米を炊くことが出来ずにいた。

水魔法バンザイ。


「その街で亡くなった父上とかと会えたりするのかな?兄さん」

「わ、わからぬ。ただドモンの言う街はその馬のない車などが走っておるのだろう?なので会えたとしても別の街なのではないか?」

「国が分かれているように、死後の世界も分かれてるということでしょうか?」


グラとカールの会話に騎士も参加した。

高級肉とタレの準備をし、ドモンも座ってまた酒を開ける。


「どうなのかは死んでみないとわからぬ。だがその川を泳いで何度も戻るのは、此奴くらいしかおらんだろう」

「なんか小馬鹿にされてる気がするんだよなぁ。まあその川を泳ぎなれてるのは確かだけれども」

「せいぜい川に流され溺れぬようにな」

「フン。最近は背泳ぎでのんびり泳いでるよ。楽なもんだ」


カールの言葉に不貞腐れながら、肉を焼き始めたドモン。

本格的な炭火焼きの焼肉は久々なので、ドモンも楽しみ。

少し前にひとりで食べた時は、炭がもったいないので枝を集めて薪にしていた。


「さあ食っていいぞ。王族のあのジジイでもきっと滅多なことじゃ食えない高級肉だ」


ドモンが最初に食べ、「やっぱり炭火で焼いたら違うなぁ!」と叫んだ。

カールとグラも早速ドモンの真似をして、米にバウンドさせてから口の中へと放り込む。騎士は一呼吸置いてから。


「ああ・・・ここまで来た甲斐があるなこれは・・・ハァ・・・」カールもため息が出る美味さ。

「んんん?!なんなんだよドモン!!この肉は何なんだ!!」グラも叫び、後から食べた騎士も、目を見開いてドモンを見た。


「美味いだろ?」

「美味いなんてもんじゃない!これは金貨をいくら払っても良いほどだ」

「あ!!!・・・そ、それは良かったな・・・」


グラの言葉で思い出す。

借りた金貨を使い込んだことを。


「い、いくらでも出すって今言ったよな?な?」

「言ったが・・・」

「ごめんグラ・・・この肉というか、酒も道具も全部、グラから借りた金貨で買ってきたんだよ。ほら身代金がどうとかの時借りたやつ」

「な、なんだとぉ?!」


気まずそうに残った金貨を渡すドモン。荷物の下敷きになっていたのをきちんと拾っておいた。

カールは口に含んだ酎ハイを吹き出し、膝を叩いて笑っている。


「俺じゃなくて、向こうの世界にいた女が勝手に金貨を換金したんだ。それを知らずに換金した金を俺に渡してきてさ・・・しかも半分くらい金取られたと思う」

「・・・・」言葉もないグラ。


「その女とやらと浮気などしておるまいな?」

「・・・・」言葉をなくすドモン。カールの大きなため息が森に響き、少し鳥が何処かへバサバサと飛んでいった。


「ナナには絶対に知られないようにするのだな。あれだけ貴様のことを想い泣いておったというのに、当の本人は別の女を抱いていたなどと知れば・・・」

「ゴクリ」カールの言葉にツバを飲むドモン。


「そしてその女だけだろうな?」

「・・・スケベな店はちょっとだけ行ったけど・・・」

「どのくらい行ったのだ」

「2~3軒・・・4、5軒だったかな?もしくは6、7、8、9軒か・・・15、6軒くらいかも?」


同時に大きなため息を吐いた三人。


「バ、バラすなよ絶対に!俺の焼き肉食ったんだから!」

「元はと言えば俺の金じゃないか!!」

「それにスケベな店の方はグラの金じゃなくカールから貰った金だし」

「なんだと貴様!?あれは公費なのだぞ!!」


プイッとドモンが横を向く。


「拐われたサンが悪い」

「サンドラのせいにするでない!!貴様はなんという事を言うのだ!!こーの大馬鹿者がっ!!」

「いってぇ!!!死んじゃうだろバカ!!!」

「貴様は死なん!!!!!」


グラに責められ、カールに頭を引っ叩かれたドモン。

カール達が来る少し前にもどこかの誰かと浮気しそうだったことは内緒である。


ドモンは酔っていて、どんな人だったのかもまるで記憶にないが。

記憶にあるのは、『誰かが来て、ムチムチの女達が大サービスをしてきて、土産に何かをあげて、ヤっときゃ良かった』ということだけ。



「とにかくだ。その事は墓場まで持っていけ。我々もだ」青筋を立てたままのカール。

「わかったってば。バレたらまずいことくらい俺だってわかってるよ」


「まずいで済むか!助けたはずのサンドラにでさえ見捨てられるわ!反省しろ馬鹿者!!あ!私の肉だそれは!!」

「うっさい!早いもの勝ちだ説教ジジイ」

「もう我慢ならぬ!斬り捨ててくれるわ!!」

「僕は死にましぇ~ん!ベロベロベロ~」


空は白みがかって朝になろうというのに、ぎゃあぎゃあと喧嘩をするドモンとカール。

グラはもう呆れてしまい、ドモンのビーチベッドで就寝。騎士は草むらで大の字。



そんなところへカール達に追いついた新型馬車二台が到着し、ゴブリンの村でナナ達と合流する手筈になっていると一同に伝え、ドモンが買った荷物の積み込み作業を行った。


その際ドモンの着衣とスマホ、財布などがナナのところにドモンの遺体と入れ替わりで現れたと聞き、ドモンは青ざめる。

一応どんな様子だったのかを尋ねたところ・・・


「伝え聞いた話では・・・その・・・奥様がかなりお怒りになられているそうで、それでここにも迎えに来ておられないのです」

「ドモン、もしや全てバレておるのではないか?」

「・・・・」


死なない男ドモン、今はっきりと死を覚悟した瞬間であった。







もうここまで読んでいる人はわかるとは思うけども、生き返るのも当然実話。

というか、昨年から今年に入院した際、付き添ったケーコが、「なんかあんた寝てる時、しばらく心臓止まってたけど?」と驚きつつ呆れていた。




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