第180話
「あーあ、もっとすすきので遊んどきゃあ良かったなぁ!くっそ!」
結局ドモンはさっき穿いたズボンとパンツを脱ぎ、焚き火を明かりに二冊目のスケベな漫画を読んでいる。
カールがゴブリンの村を飛び出した時とほぼ同時刻のこと。
買った酒を何本か飲んで、どうやってゴブリンの村まで荷物を運ぶかを考えていたが、夜に移動するのも危険なので、朝までとりあえずゆっくりすることにしたのだ。
「ふぅ~右手は別腹だぜイッヒッヒ」
「・・・・」
「またどっかの巨乳が馬に乗ってやってこないかなぁアハハ」
「・・・・」
「お~い誰か~・・・一緒に飲まないか?」
「・・・・」
ドモンは人が嫌いで、人が好き。
一人ぼっちは慣れているけど、一人ぼっちでいたいわけではない。
一人でいる時間は好き。だけど寂しがりや。
「ナナー」
「・・・・」
「サーン」
「・・・・」
「返事はない。ただの屍のようだ。フフフ」
「・・・・?」
俺が死んでナナとかが話しかけた時に、それを誰か言ってくれたら良かったのにと考えてひとりで笑っていたが、笑い声が森の中に虚しくこだまし、ハァ・・・とドモンは大きくため息。
「だれかぁ!ヒック!出てこい!!」
「・・・ドモン様」
「ヒック!!うお?デケェな!」
酔ったドモンの前には、力士のような大男が跪いている。
ふらふらしていてドモンにははっきり見えてはいないが、こんな森の中でひとりで飲むよりずっとマシだと喜んだ。
「この度はご復活おめでとうございます」
「め~でたいんだか、めでたくないんだかね~うぃ~。ほらお前も飲めよ。俺をひとりで飲ませるな」
「はっ!では失礼して私も頂きます。その前に・・・お前達、ドモン様にお召し物を・・・」
「はい!」「はい!」「はい!」
ものすごいボリュームでムチムチすぎる女性達にパンツとズボンを穿かせられ、ドモンはゴキゲンに。
「俺こういう女もいけるんだよなぁヒック!優しくて包容力あってさぁウフフ」ふわふわの体に抱きついたドモン。
「ああドモン様いけません・・・」
「だめなのか・・・」
「そ、そんなお気を落とさずに・・・ではドモン様のお好きなようにしても構いませんから・・・ハゥ!くふぅ・・・」
「ずるいわ!ドモン様、私の膝の上に足を投げ出してくださいまし。綺麗にしましょう」
「お体が冷えております。私の胸の中にお顔とお体を」
急なフカフカ天国に、上機嫌で更に酒を飲むドモン。
大男はそれを嬉しそうに見ながら、ドモンから貰った缶チューハイを飲み干した。
「あ~気持ち良すぎて目が回るなぁ・・・」
「水か何かご用意いたしますか?」
「馬鹿野郎!そんなもん飲んだら酔いが覚めちまうだろ!」
「た、大変申し訳ございません!!お許しを!!」
「いやいやゴメン!冗談だよヒック!そんな真面目にとらえないでよ・・・ゴメンね」
突然土下座をした大男に焦るドモン。
「で、あの~・・・みんなはどこから来たの?誰なの・・かな?」
「わた・・・ークの・・・魔・・・使いでし・・・・・ます」
「グゥ」
話の途中でドモンは寝てしまった。
「ドモン様がお眠りになられました。きっとお疲れになられていたのでしょう。なにせ・・・人間に一度殺されているのですから」
「一生の不覚だ。あんな悪党どもを見逃してドモン様を・・・くっ」
「顔に火を放たれたという話でしたが、かなり治ってはきているようですね。流石でございます。安心しました」
「それでも私はやはり・・・人間達を許すことが出来ません・・・なんとお労しい」
時折苦しそうな表情を見せるドモンの手や頭や顔を撫でながら語る、大男と立派な体型の女達。
「俺も人間だっつうの!!」
「うお!!」「きゃあ!!」
「うう~ん・・・グゥ」
突然ガバッと起き上がったドモンがそう寝言を叫んで皆を驚かせ、またパタリと倒れた。
「馬鹿者。ドモン様はお怒りになられておる」
「は、はい。申し訳ございません・・・」
「そのような事は私達が考えることではないのだ。ドモン様が全て上手くやってくださる。私達はドモン様をお守りすることだけ考えていれば良い」
「はい」「はい」「はい」
皆、神妙な面持ち。ドモンだけは寝ながらエリーレベルの胸を鷲掴みにしてニヤニヤ。
「む?ドモン様の迎えがだいぶ近づいているようだな」
「ま、まだもう少しだけ駄目でしょうか?」
「ならん。今我らが見つかるわけにはならないのだ。魔王様もお怒りになるぞ」
「ああドモン様・・・」
ふぁ~と大あくびしながら上体を起こして目を擦るドモン。
「むにゃ・・・行くのか?じゃあこれ土産に持っていけよ・・・」
「いえそんな!!私達は・・・」
「・・・いいからいいから。ええとこれとこれな」
ドモンはおもちゃの編み機一台と毛糸をいくつか持たせた。
「やり方はわからないから説明書を読んで・・・ヒック・・・それでもわからなければ、サンかこの先のゴブリンにでも聞いてよ・・・んじゃおやすみ」
「はっ!ありがたき幸せでございます!!では失礼いたします!!」
ドドド・・と去っていく大きな人達。
ドモンはまだ酔っていて、それが夢か現実かもまだわかっていなかった。
「しまった・・・スケベな事しときゃよかった。あーあ仕方ない。また右手を恋人に・・・」
せっかく穿かせてもらったズボンとパンツをまた脱いでしまったドモン。
だが睡魔に襲われまたウトウトし、起きちゃ酒を飲んでまた眠るを繰り返していた。
「お~っぱいはみ出すぅナ~ナ太郎~うーまにまーたがりおーうまのケーコ。あれ?ケーコも出てきたアハハ!それに馬に跨ってお馬の稽古って普通すぎるぜアッハッハ」
「何だその歌は・・・それになぜ下半身を晒しておるのだ」
「ゲェェップ!!何ってナナが馬に乗ってやってくる歌じゃねぇか・・・ゲップおならしてナナがくるぅ~胸~におっぱいぶら下~げて~っと。ワハハもう一曲替え歌できそうだヒック」
「ハァ・・・兄さん、どうやらドモンは無事帰ってきたようだな。全く変わらずに」
カールとグラ、ドモンと感動の再会である。
騎士がいそいそとドモンにパンツとズボンを穿かせた。大きなため息を吐きながら・・・。
「あれ?カールとグラ、いつの間に。あれ?おっきなおっぱいはどうした?」
「私にそんなものはない!貴様はまったく・・・」
カールが酔ってフラフラなドモンをガシッと抱きしめる。
抱きしめて、グラや騎士と一緒においおいと泣いた。
時間は深夜の二時。雲ひとつない星空の下、運命の星はまたふたりを引き合わせた。