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第176話

合鍵でドアを開け、中に入ってドモンの姿を見たケーコが、とんでもなく大きなため息をひとつ吐く。


「ハァ~~!何やってるのよっ!!顔がメチャクチャじゃないの!!」

「うー」

「口も開かないっていうの?!何をやったの!!!」

「うぅー」


ハァハァと息をするケーコ。

その興奮はMAX状態であり、ヨダレが垂れそうになるのを必死に堪えていた。


「ナ、ナナはどうしたのよ?」

「うー」


ドモンがスマホのメモ帳で何があったかを伝えていく。

『上半身を燃やされてちょっぴり死んじゃって、俺だけこっちに戻ったみたい』と伝えると、ケーコがまた深い溜め息をつきながらニヤリと笑った。


「看病はしてあげるわ。そのかわり元気そうなあんたの身体の下半分は好きに遊ばせてもらうわよ?良いわね?」

「う、うぅ~」

「ハァハァハァハァ!!あぁドモン!!好きよ!!大好き!!」


ケーコの左手の薬指に光るドモンから貰った指輪。

少し大きかったので直してもらってはめていた。


ケーコは顔中に火傷に効く軟膏の薬を塗りながら、ドモンに馬乗りになって叫び続ける。

幸せの絶頂。いろいろな意味で。


「まだ口が開かないの?これじゃ食べ物も食べられないじゃない。私が唇をこじ開けてあげるわ!舌でね・・・イヒヒヒ」

「うー!うー!」


結局ドモンはケーコに伝えることが出来なかった。

トイレに行きたいということを。


情けない姿を晒したドモンに、ケーコはますます興奮することとなった。




「お口がまた大きく開くようになってきましたね奥様」とサン。

「ホントね。さっきよりも開いてきたわ」とナナがドモンの顔を覗き込む。


心なしか少しずつドモンの顔が元に戻りつつあり、良かった良かったと皆で喜んでいたが、それはある意味現実逃避でもあった。

カールやグラもそんな事はあるはずがないと伝えたかったが、やめておいた。


「あ!!御主人様ったら!!み、皆さん少し外に出て下さい!ちょっとだけ御主人様がお着替えしますので・・・」

「やだもうドモン!・・・オムツしないと駄目ね?」と小声のナナが赤ら顔。


「うぅ~んしょっ!!少しだけ腰を浮かせて下さい御主人様!!これじゃ脱げません!!」ドモンのズボンを引っ張るジル。

「酔ってる時もこの人こうなのよ。サンいつものいくわよ?」

「はい!」


ナナとサンのコンビネーションで、ドモンのズボンとパンツをスポッと脱がせるふたり。

脱がせたところで何故かクンクンとそこの匂いを嗅いだジル。


「うーん、やっぱり本当におもらししちゃったみたいですね御主人様。ちゅ。あっ!」つい顔を近づけすぎてしまったジル。

「あ!駄目ジル!!ずるい!奥様が先です!!」と怒るサン。

「え?そう?じゃあいただきま・・・なんちゃってエヘヘ」と照れるナナ。


『馬鹿野郎!何してんだお前ら!!動けないと思って!!』


ドモンの声が聞こえた気がする三人。

キョトンとしながら顔を見合わせた。


『あと・・・その先端のカバーをだな、オホン・・・カールやグラに見られる前に剥いておいていただけると大変助かりますです』


「わ、私がやっとくわ」

「は、はい」

「うぅ~サンもやりたいです!!」

「じゃあ私も!」


『やめろ!何度も元に戻すな!!伸びる!伸びちゃう!』


長老の家からケラケラと笑い声が響く。

カール達はついにナナ達がおかしくなったのだと思い、更に落ち込んでいた。




「流石ねあんた。相変わらずだわ。普通の人間は治らないわよこんなの」

「うぅ腹減った。口あまり開かないから超薄切りのハム買ってきて」


ケーコに向かって腹話術の要領で話すドモン。

ドモンが腹話術を得意なこともケーコは知っているので、特に驚きもしない。


「随分とこき使ってくれるわね?おもらししたくせに」

「それはごめんなさい・・・あとおもらしついでに先っぽの方をあのぅ・・・」

「チッ!私は気にしないって言ってるでしょういつも」


大きなため息を吐いてどこかに手を突っ込み、ドモンを大人にしてからケーコは買い物に出かけた。


ベッドでぽつんと寂しいドモン。

ナナやサン、他のみんなも心配しているだろうか?

そもそも俺は戻れるのだろうか?


小説で死に戻りパターンはよくある話だけれど、『死ぬ状態の怪我のまま』違う世界で復活だなんて酷すぎる。


まあ、久々にあの夢の中の自分の家族に会えたからいいか・・・と納得しながら、タバコをなんとか口に突っ込んだ。

手の火傷も酷くてライターを使うのも大変だけど、なんとか自力で付けられるようになってきた。

トイレもなんとか一人で出来る。座ってだが。


「顔に痕が残るのはちょっと嫌だなぁ」とすでに傷だらけの顔で宣うドモン。


鏡を見ればそこにはミイラ男。

雑菌が入らないようにと、薬とガーゼの上からケーコに包帯をぐるぐる巻きにされ、現在の顔の状態がよくわからない。

普通ならば痕が残って当たり前の大火傷。あくまで普通ならば。


あの状態からすでに目を開け、話が出来ている時点で自分のおかしさに笑いが出る。


そしてもう何度目かはわからない蘇り。

ドモンは死なない。いや正確には死んでも生き返る。橋を越え例のあの街に行き、そして三途の川を泳いで何度も戻る。


「死なないのはもうわかったから、せめて怪我もしないとか、歳を取らないとか、痛くないとかならないもんかな?」


洗面所に来たついでに、歯ブラシを無理矢理口に突っ込んで歯磨きをしたドモンだったが、口が開かないためにうがいが出来ず、ストローを使用してうがいをしたところ、気持ち悪くなって思いっきり吐いた。当然包帯はデロデロ。

そこへケーコが帰ってきて、お説教タイム。


「おとなしくしてなさいって言ったよね?私の言うこと聞かないなら燃やしてあげようか?ここ以外全部」どこかをギュッと握るケーコ。

「うぅ~んごめんなさい・・・これ以上怪我したらあいつらに怒られちゃうよ」

「あいつら?ナナと誰?」

「・・・・」


観念して異世界での関係の全てを白状したドモンは数日後、実家で母親に挨拶を済ませた後、ケーコに山奥の温泉宿に連れ込まれ、二日間湯治とケーコの欲求の処理を繰り返し続け、最終的に例のウオンに捨てられた。


ドモンが元の世界へ戻ってきてからちょうど一週間。顔のかさぶたさえ取れればあとは完治といったところ。


「必要な物さっさとそのお金で揃えて、早く戻ってあげなさい。ナナも心配してるわよ」

「戻れるかどうかも分かんねぇよ」

「じゃあほら、この金貨の余りを外に投げてみなさいよ」

「あ!!いつの間に?!これ俺の金貨じゃねぇんだぞ!!てかこのお金もそうか・・・くっそやられた」


残り10枚ほど入った金貨の袋を自動ドアの外へと放り投げると、白い粒子となって消えていった。


「行けるみたいだな」

「さっさと行かないと金貨誰かに拾われるわよ?」

「うわやべぇ!!でも買い物が!!」

「くっくっく」


ウオンの二階へと慌てて向かうドモン。

そのドモンをケーコが引き止める。


「また・・・死んだら呼びなさい」

「縁起でもねぇこと言うなよ」

「好きよドモン!!」


あの時と違い、今度は遠慮もすることなく泣きながらドモンにキスをしたケーコ。


「また見送るのは辛すぎるから・・・もう行くね」

「ああ・・・またな」


そう言ってケーコは去っていった。







もし顔面炎上して顔が溶けて口が開かなくなった時は、超薄切りハムがオススメ。

指や箸で口の隙間から中へ押し込むと食べられる。



まあ普通の人は入院するのが一番オススメなんだけど・・・(笑)



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