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第173話

「てめぇ騙しやがったな!」

「ただじゃおかねぇぞこの野郎!ガキ共はどうした!」


剣を構えにじり寄る犯人達。

「まあそう怒んなよ。ほら」と犯人達が飲んでいた酒瓶を投げて渡したドモン。

「なかなか美味い酒じゃねぇか。なあ」とドモンはニヤッと笑った。




ナナのフォローにより犯人達が逃げ出した数十秒間。

ドモンはサンと女の子達の脚を縛り付けていた麻縄をライターで焼き切りながら、ナナがいる草むらを指差し「サン、あそこにナナがいる!この子ら連れてそこへ行って森の中を隠れながら静かに逃げろと伝えろ!俺はグラが来るまで時間を稼ぐ!」と叫んだ。


「うー!」後ろ手に縛られ、猿轡をしたサンがなんとか返事をし、女の子達と一緒に駆け出した。

手を縛る紐と猿轡を外す時間の余裕はない。


そして一緒に走って逃げるほどの健康な体もドモンは持ってはいない。

胡座をかいて犯人達を待つ。準備をしながら。




サンは逃げ出しながら、さっきドモンが現れた時のことを思い出して涙を流していた。

予想通り、想像通り、思った通り。

ドモンはすぐにサンを助けに来た。信じていた。疑う余地もない。必ず助けに来てくれる。


ドモンはサンのその期待を裏切らない。


犯人と会話しながらドモンは何度も「あの女」と言った。

『さっきの女ほど抱き心地は良さそうに思えねぇんだけどなぁ』

この場にナナも来ている。ドモンのその言葉でサンはすぐに気がついた。


嬉しかった。ふたりとも来てくれた。

今すぐにふたりに飛びついて、ありがとうとごめんなさいをしたい。だけど今はできない。

悪人を装ってると見られるドモンに対して、表情に表すことすら出来ない。


そうしてサンは、盛大にお漏らしをした。いわゆる嬉ションである。

しようとしてしたわけではなく、極限状態から安心と嬉しさで一気に緊張が緩み、結果そうなった。


ドモンはそれに応えるようにサンのおでこを指で弾く。

(いたっ!)

それでドモンからの気持ちが全て伝わった。

サンは天にも昇る気持ち。



ドモンがサンの目をじっと覗く。

それもすぐに犯人達の様子を見ているのだとわかった。

だがしかし、サンはそのドモンの瞳に吸い込まれ、危険だという気持ちを伝えることが出来ない。


好きです。好きです!

愛しています。口づけをして欲しい。今すぐに抱いてほしい!

抱きつきたい。でも手が縛られていてできない。それがとてももどかしい。


これ以上ないという程興奮し、発情しきった瞬間、ドモンが間一髪で振り下ろされた剣を躱しサンは我に返った。



「サン大丈夫?!ドモンは何をしているのよ!!」


サンの猿轡を外しながら慌てるナナ。


「時間を稼ぐそうです!森の中を隠れながら静かに逃げろとおっしゃってました!!」とサン。まだ腕の紐は縛られたまま。

「ドモンを置いていけないわ!!」

「御主人様を信じて下さい奥様!!」


ナナはグスグスと泣きながらサンの手の紐を解き、ふたりで女の子達の紐も解きながら、忍び足で森の中を進んでいった。

女の子達も泣いていたが、「今は堪えて下さい。見つかってしまいます」とサンが二人の女の子達の手を握る。


そうして森の中を進むこと五分。

道の方から馬車がやってくる音が聞こえ、森に身を隠しながら確認すると新型の馬車が見えたので、みんなで道に飛び出し無事保護された。


「ドモンは?!ドモンはどうした!!」とグラ。

「御主人様は私達を逃がすため時間稼ぎしてます!!」とサン。

「グラさん早く!!早くドモンを助けてあげて!!犯人は二人よ!!剣を持ってる!!私も行くわ!!」ナナが顔をグッチャグチャにしながら訴える。


「くそ!!」


任せておけなどと言う余裕もない。

もし万が一なんてことがあるならば、犯人を生きたまま火あぶりにした後、俺も死んでやる。

怒れるグラは騎士をふたりサン達の護衛に付け、村まで送るように命令し、ナナと一緒にドモンの救出に急いだ。




「くそじじいが謀りやがって!何者だてめぇは」ドモンから受け取った酒をグビリの飲みながら、剣をドモンに向かって突きつける犯人。


「何者か?お前らと同じだと思うか?この顔で」

「顔が何だってんだ!」

「見て分かんねぇかな?よく見りゃ違うだろお前らと。俺は異世界人だからな」

「なんだと?!」


べらべらと語りだしたドモンに交互に返事をする犯人。

はっきり言って会話の内容などドモンにとってはどうでもいい。


今は一秒でも多く引き伸ばせばいいのだ。


「カルロス領に現れた異世界人ってのはてめぇだな?」

「そうだ。だからお前達は敵うはずねぇんだよ俺によ。俺の最強スキルで・・・」

「スキルも何もねぇ遊び人だって噂聞いてるぜ」

「ありゃバレていたか。誰だよバラしたの」


ドモンはヤレヤレのポーズ。


「何でもいい。とにかくもう顔を見られてるんだ。こいつをぶっ殺してからガキ共を追いかければまだ間に合うさ」

「殺される前に一言いいか?」

「黙れ。てめぇはもう死ね!」

「毒キノコ入りの酒の味はどうだった?」

「ああ?!な、なんだと??」


手に持つ酒瓶の中身を確認し、自分のノドに指を突っ込み必死に吐き出そうとする犯人のひとり。

もう一人の犯人がドモンを叩き斬ろうとした瞬間「解毒剤はある場所に埋めてある!」とドモンが叫ぶ。


「言え!どこだそれは!!」

「俺を殺せばそいつもたたでは済まないなぁハハハ」

「さっさと言え!!」

「イテッ!」


ドモンの顔を斬りつけた犯人。

ちなみに当然キノコは例の下半身元気キノコである。


「うっ・・・か、体が・・・!」

「おい大丈夫か?!早く言え!!解毒剤はどこだ!!」

「仕方ないな。こっちだ」


ゆっくりと道の方へと向かったドモン。

遠くに聞こえる馬車の音。

ドモンの勝利確定・・・と思われた。が・・・


やってきたのは予定と逆の街の方からで、犯人達を待っていた別の犯行グループの馬車。

犯人がサン達を売りつける予定の相手で、禁止されているはずの奴隷商であった。


「おいお前達何をやっていた。こいつは仲間か?」

「いや違う。敵だ」

「そうか。ファイヤーフレイム」

「え?」


ドモンが誤魔化す間もなく、ドモンの上半身はあっという間に火だるまに。

そこへグラとナナや騎士達が乗った新型馬車が到着し、騎士達により犯人はすぐに捕らえられた。


グラとナナは馬車から飛び降り、燃えているドモンの元へ駆けつけて、叩くように必死に火を消す。

真っ赤な目をしながら「うあああ!!あつぅぅいぃぃぃ!!」と断末魔の叫びをあげるドモン。


あまりに慌てて、ウォーターボールで消火するなんてことも頭に浮かばない。

とにかく火をドモンから急いで払うことしか頭になかった。素手で消そうとしたグラとナナも手に火傷を負った。



燃え続けるドモン。

まず皮膚の薄いまぶたが溶け、視界が徐々に狭まる。

ドモンが最期に見たのはナナの泣き顔。


吸い込む息が熱風となりノドと舌を焼く。

ドモンが最期に発した言葉は「熱いよナナ!」だった。



皮肉にも生きたまま火あぶりとなったのはドモンであった。



火が消えるまで約30秒。しかし・・・

ライターの火の上に手のひらをかざして、30秒耐えられない。

焼けたフライパンに顔をくっつけ、人は30秒耐えられない。


ドモンはその耐えられぬはずの地獄の痛みと苦しみの中で、30秒頑張った。

頑張って頑張って耐えに耐え、そしてついに息絶えた。







顔面炎上もリアルドモンさんは当然体験済み。

小学校の理科の実験中のとばっちりで。


向かいに座ってた奴が、アルコールランプの火でもうひとつのアルコールランプをつけようとして爆発させ、真正面にいたドモンさんがアルコールを頭からかぶり大炎上。


離席していた先生戻ってきてびっくり。理科室の戸を開けたら子供燃えてんだからな(笑)

子供が火を扱ってる時に離席とか今では問題になりそう。


当時、その話は全国の教育委員会や関係者その他に一気に広がり、小学校の理科の実験からアルコールランプが消えることになった。




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