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第170話

「それにしてもみんなサンの方を見てるわね」とナナ。

「え?え?え?」周りを見て焦るサン。確かにみんなと視線があった。


「ナナは見たいけどジロジロ見られないだろそりゃ。サンはほら・・・可愛い小さな女の子みたいな感じで愛でているというか・・・」ドモンの言葉に少しだけ口を尖らせるサン。


「なんかサンと最初にまともに話した時にもドモンはそんなこと言ってたわね?」

「そうそう。スケベな気持ちというよりも可愛いお人形さん的な感じで」


「だからサンとあまりスケベな事しないのね。私もっとすぐサンを押し倒して何度も抱いちゃうかと思ってた」

「バ、バカ・・・お前みんなの前でなんてこと言うんだよ」


気まずそうなドモンと何が悪いのかわからないナナ。

ナナは正直ドモンを少し褒めたつもりだった。

しかしサンの口はますます尖った。


「どうせサンは奥様みたいな身体じゃないし・・・誰もスケベな気持ちにならないんです!もう!」


ドモンの横に座って、ドモンの腕をぽかぽか叩くサン。

その様子すら可愛く、皆目を細めて見ている。


「そ、そんな事ないってば。ただ童顔で背も小さいから、なんというか罪悪感があるというか・・・」

「うー!それが嫌なんですぅ!」

「そんなにスケベな目で見られたいのかよハハハ」

「サンだって大人だから少しくらいは見られたいです!!」


やはりドモンには可愛がられるだけではなく、少しは興奮してもらいたい。

以前ナナに無理やり連れられて三人で水浴びした時や、ナナが病気になってふたりで水浴びした時は、ドモンもドキドキしてくれて元気な姿を見せてくれた。


だけど今はまるでそんなことがない。

散々すべり台で裸を見せたせいもあるだろうけれど、ニコニコと笑ってるだけで元気にはなってくれない。

それこそ例のキノコの時だけだった。


だからサンは少し怒っていた。


「う~ん、じゃあ仕方ないな」

「え?え?」

「ほらスケベな目で見てもらえ」

「ち、ちがっ!!!そうじゃな・・・」


サンの両ワキを持ってドモンが自分の膝の上に座らせ、そのままそばの石の上に腰掛けた。

足をパカッと開いた形で閉じることも出来ず、サンはみんなにもの凄くスケベな目で見られることになった。



「うぅ・・・ひどいですぅ~!!」

「ゴメンゴメン!みんなにじゃなくて俺にそう見られたかっただけなのか」

「普通に考えれば分かるじゃない。もうバカなんだから」とナナも呆れる。


「でもこうして恥ずかしがってる姿を見たら、俺も少し興奮してきたよ」

「ほ、本当に?」

「うん。サンはどうだった?俺に無理矢理サンの裸をみんなに晒されて、前に言ってたように辱められたわけだけども」

「ふ・・ふわぁ・・」


慌てたのと恥ずかしかったのとで、まるでそんな余裕はなかった。

ただそんな事をされてしまったという事実が、今になってサンを興奮させ、顔を蕩けさせる。


「ちょっとサンってば!駄目だって!」とジルが止めた。

「ちょちょちょっと!!サン!!みんな見てるわよ!!」ドモンの上に跨がろうとしているサンを引き剥がそうと、ナナが腕を引っ張った。

「うー!いやぁ~離して~うぅ~!」


必死にドモンにしがみついていたが、結局ナナにあっさり剥がされてサンは足をジタバタ。

「ジルごめん!私達の服持ってきてー」と言いながら、裸のままサンを抱っこしてテントまで戻っていった。

「いや、ふたりともほぼ全員に裸見られてる気がするよ?」と言うジルと一緒に服を着て、ドモンもテントまで戻る。



「ほらサン、みんなで晩ご飯の準備するよ?不貞腐れないの」とサンに服を着せたナナ。

「・・・・」

「せめて夜にしなさい。それにあんなに人がいる場所では駄目よ?」

「もういいです。下着取ってきます」


ぷくっと頬を膨らませながら馬車までサンは走っていった。


「もうドモン、私が許すからサンをどうにかしてあげて?」とナナ。

「御主人様、サンはずっと我慢してるみたいですよ?色々と・・・」とジルも続く。


「ジルは平気なの?ドモンと約束したんじゃないの?」

「わ、私は平気です!!あ、あの・・・本当は少しだけでも、いつかお情けをいただけたらとは正直思いますが、奥様やサンの方がずっと大切ですので」


ナナとジルの会話を聞きながら、どうしたものかと考えるドモンであったが、遠くからサンの驚く声が聞こえ、慌ててテントを飛び出した。


「ま、まずい・・・ヨハンとエリー!」と慌ててドモンが駆けつける。


「ふあああ!!申し訳ございません!!!」

「サン!こっち戻ってこい!」

「はわわ~」


「おぉいドモンよ!サンちゃん向こうに連れて行ってくれぇ」ヨハンの叫び声も馬車の中から聞こえた。

「ああ今連れて行くよ!」


ヨハンとエリーが愛し合ってる場面をバッチリ見てしまい、真っ赤な顔をしてテントへと戻ったサン。


「やだもうお父さんとお母さんったら・・・」

「まあ今でも本当に愛し合っているって証拠だよアハハ」


ヨハンとエリーを見たこと、そしてこのナナとドモンの会話を聞いたことで、更にサンは不満が溜まっていく。

サンもその証拠が欲しかった。



初めはそんなつもりはなかった。

この二人のそばにさえいられるならそれで良かった。


ただそばにいるうちに、サンはワガママに、欲張りになっていく自分を知る。

奪えるものなら奪いたい。


ナナとの約束を破りそうになる気持ちを必死に消し、欲にも耐え続け、サンは自分を殺し続けた。

そのまま、一生殺し続けるはずだった。


従順に。賢い犬が待てをされているように。


だがそんな『待て』をされている目の前に、ずっとずっと、何度も何度も、魅惑的な極上の餌が置かれる。

それでもまだ、その餌の味を知らなければ耐えられたかもしれない。



しかしサンは一度味わってしまった。



その味を知ってしまったがゆえに、耐える辛さが増す。

そんな事になるなんてサンは想像すらしていなかった。


「ごめんねぇサン!今日のヨハンったらやけに元気でウフフ。温泉のおかげかもしれないわねぇ」

「いやぁほら、出会った頃のエリーのように綺麗になっちまったもんだから、もうたまらなくてなワハハ」

「も~う!ふたりともお家じゃないのよ?少しは遠慮してよね!」


エリーとヨハンとナナがいつものように、スケベな話も遠慮なくサンの前で語る。

サンはまた不満が溜まっていき、それが爆発しそうになった。


もちろんみんなが悪いわけではないのもわかっているので、それをぶつけるわけにもいかない。

サンは唇をかみしめて、馬車に戻って下着を穿き、サンの宝物を入れたナナから貰ったランドセルを背負ってゴブリンの村を飛び出す。


一度頭を冷やさなければ、いつか自分がとんでもないことをしてしまう気がしていたのだ。



「どこ行くつもりだサンは」とドモン。

「少し落ち着きたいのよ。だって突然ドモンがあんな事したり、お父さんとお母さんが変なとこ見せたから・・・」

「それは本当に悪かったわねぇ」ナナの言葉にエリーが照れ笑い。


「まあでも迎えに行ってくるよ」

「そうね。行ってあげて。さっきも言ったけど、少しぐらいなら目を瞑るわ今日は」

「わかった」



タバコを吸いながらサンの歩いていった方向へと歩くドモン。

だがサンは見つからない。

道まで出て、どこかに座っていないか確認したがわからない。

護衛の騎士達も先程の騒動でこの場におらず、どこへ行ったのかを見ていなかった。


「おーいサーン!どこに行ったんだ?出ておいでー!」


しょんぼりしながら森から出てくるサンを想像するドモン。

もし見つけたら、ふたりで草むらに座って少し話そうと思っていた。


それでも気持ちが収まらないのであれば、キノコで訳が分からないうちではなく、一度しっかりと愛し合うことも必要だと思った。もうすぐ結婚をするんだから。


でもサンは出てこなかった。出てくるはずがなかった。



サンが拐われたと気がついたのは、その十分後、ドモンが二本目のタバコを吸い終わった後であった。



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