第169話
それから一時間後。
やはり直接食べるよりは効き目は薄く、徐々に場は収まってきた。
しかしそこで育んだ愛は収まることなく、まだ燃え上がらせているカップルもそこらで見られた。
「思っていたより元気がなくなるのが早かったわね」
「がっかりするところじゃないだろスケベ娘が。いやスケベ妻か」
「スケベ妻って・・・酷い言い草だけどなんだか興奮してきたわ!」
「待て待て!もうダメだってば!温泉に入ろう!ほらサン!ジル!長老!しっかりしろ!」
抱きついてきたナナを振り払い、服を着てみんなを起こすドモン。
ふと馬車を見るとまだ微妙に揺れていた。
「お、温泉に入るんだけど、着替えを持ってくるのはあとにしろみんな」
「あの御主人様・・・私その、どうしても着替えが必要なのです・・・せめて下着だけでも欲しいのです」とサンが困った顔。
「今は駄目だってば。ジル、サンに貸してやってくれないか?」
「あの、それでは私の分がなくなってしまいます。私もその・・・必要なので。ごめんねサン」
「うぅ・・」
やんわり断り自分の家へと一度戻ったジル。
長老が今まで穿いていた、獣の皮をなめして作った下着を借りたが、伸縮性がなくブカブカの隙間だらけで全く役に立たなかった。
長老もナナほどではないが、負けず劣らずのボン・キュッ・ボンで、サンとはサイズが違いすぎた。
「サン、ちょっとだけ下着無しで我慢しろ。温泉から上がったら取りにいけるかもしれないしさ」
「は、はい・・・」
しょんぼりしながらテントに入り、借りたパンツを脱ごうとしたサンが「あれ~?!」と声を上げた。
「ひ、紐が解けず脱げません!」
革で出来た紐がガッチリと玉結びになってしまっていて、サンの力では解けなかったのだ。
「あら?サンが欲しがってた脱げなくなる下着になっちゃったわね」とナナ。
「そんな呑気なこと言ってる場合か。それは鍵があれば脱げるけど、これは紐が解けなきゃ脱げないんだぞ?いざとなれば切ればいいんだろうけど、ちょっとこの革の下着と紐は欲しいというか大事にしたいんだよ俺」
「何よスケベ!!そんなに言うならあんたの顔の上に裸で跨ってやるわよ!!」
「違う違う!単純に革製品が貴重だから駄目にしたくないんだ」
ナナとドモンがそんな言い争いをしている頃、サンは両手を頬に当て、幸せそうにうっとりしていた。
「サンも呑気にうっとりしてる場合じゃないってば。貴重で駄目にしたくないっていうことは、汚してほしくもないってことだからな?」
「あ!!」
「漏らすのはもちろん・・・興奮するのも今は駄目だ」小さくボソッと囁くドモン。
「そ、そんな・・・」
脱げない下着だけではなく、様々な制限をかけられてしまったサン。
だがそんな制限がかけられればかけられるほど、サンの気持ちが昂ぶってしまう。
「フゥフゥフゥ!!」
「サン!!我慢なさい!!」
「ナナ、今は多分それは逆効果だ。サン、力を抜いて緊張を解いて」
「は、はい・・・ふう。あ!!」
「あ!!」
サンが力を抜いた瞬間、大惨事に。
結果、ドモンのアドバイスも逆効果であった。
ようやく紐を解き、ジルはそのまま洗濯へ。
サンはナナと長老に手を引かれ、しくしくと泣きながら温泉へ。
ドモンはタバコに火をつけて、周りの様子を見て回った。
「どうやら大分落ち着いたみたいだな・・・ヨハンとエリー以外は」
もう一台の馬車からぐったりとした顔を見せながら男達がぞろぞろと出てきて、切なそうなため息を吐いていた。
広場では手をつないで語り合うカップルや、うっとりとハグをしたまま固まっているカップル、結局フラレてしょんぼりしている男だの、なんだかほほえましい光景。
ナナ達から少し遅れて温泉に到着すると、ドモンが夢にまで見た混浴状態になっていて、ナナとサンと長老がオロオロしていた。
「す、すごい!これだよこれ!俺が言ってた混浴は」
「なんか・・・みんな裸でも気にもしないで普通に入ってるわね」とナナが目を丸くする。
「まあ多少は良いおっぱいだなぁとか思ったりもするんだけど、スケベなことはせずにこうやってみんなで楽しむんだよ温泉を。女達もチラチラさせて軽く男達を楽しませながら、カップルになったならそれはそれでいいし、仲良く話すだけでも良い」
「みんな裸だからそこまで恥ずかしいって感じじゃないね。見られたならこっちも見てやるわウフフ」
ドモンとナナはそう会話していたが、サンと後からやってきたジルはまだモジモジしていて、その覚悟がどうしてもできずにいる。
長老とナナはポイポイと服を脱ぎ捨て、ドボンと温泉に飛び込んだ。
ふと湯気の向こうを見るとグラの姿。
ドモンと目を合わせると、なんとも気まずそうな顔をしながら、一人のゴブリンの女性と並んで温泉に浸かりながら目をそらした。
「あれ?グラはずっとここにいたのか?」
「あ、ああ・・・」
「グラ・・・奥さんいたよな?」
「・・・・」
「ド、ドモン様、私達がグラティア様を誘ったのでございます!」
「ん?私達??」
よく見ればグラの周りには他に三人の女性が顔を伏せていた。
「見~ちゃったイッヒッヒ!」
「ド、ドモンよ・・・」
「言わないよ。そんな野暮なことはしねぇってば」
「す、すまんな」
ホッとした表情を見せたグラ。が・・・
「そのかわり!!」
「な、なんだ?!」ドキッとするグラ。
「小麦やチーズやミルク、調味料とか必要な物をしばらくゴブリン達に分けてやってくれないか?宿が出来て稼げるようになったら、きちんとお金払って買わせるようにするからさ」
「・・・わかった。まあその事に関してはドモンに脅されるまでもない。初めからそうしようと思っていた」
二人の会話を聞いたゴブリン達がワッと歓声を上げる。
グラの周りの四人の美女達も大喜びでグラに抱きつき押し倒し、グラの唇を奪い合った。
「ワッハッハ!どうだ魔物達に襲われる気分は!随分平和な襲われ方だけどな」
「ば、馬鹿者!!この者達は魔物などではない!そのような事を言うならば貴様とて許さんぞ!」
「そうだったなハハハ。悪い悪い!」
「ん、んぐ!あぁ・・・皆、今は、す、少し控えてくれ・・・んんんぐっぶはぁ」
我を忘れた裸の女達に囲まれ、快楽の海に飲まれるグラ。
「まあたまにはグラも直接ここに物資を届けに来て、グラの事を好きなこの女達としっぽりやればいいさ。でも奥さんにバレても俺は知らんからな」
「そ、そんな貴様のようことは俺はせん!これはあのキノコのせいで・・・」
「私は妾でも遊びでも構いません!」「私も!」「ああグラティア様!!」「キノコを・・・その時またキノコをお食べ下さい。それもグラティア様のせいではございません」
グラに右手を上げてサンとジルの元へと戻ったドモン。
長老とナナはもうすっかり慣れて、デレデレとしている男達に裸をチラチラと見せながら、皆を悩殺して楽しんでいた。
「ほら、ふたりもさっさと脱げ。恥ずかしいなら下着のまま入ったらいいよ」とドモンがサンのワンピースを下からスポンと上に持ち上げた。
「え?ちょっと待って御主人様!!私下着穿いてな・・・」
「あ・・・」
みんなが見ている前で全てが丸出しになってしまったサンは、真っ赤になりながらジルも脱がして羞恥地獄に巻き込み、温泉の中に飛び込んだ。