第164話
「アハハ!ドモン様のお尻に手の跡が付いてるよ!」
「ドモン様動かないでください。薬草が塗れないです」
「ドモン様ってスケベなの?」
ゴブリンの子供達がキャッキャと騒ぎながらドモンのお尻に薬草を塗る。
「流石に強く叩きすぎたわね・・・で、でもドモンが悪いのよ?よりによってお母さんの裸も覗くなんて!」
「ごめんなさい・・・」
「エリーのハグくらいなら良いけどよドモン。いくら大きな胸が好きったって、一応義母なんだから・・・」
「毎日拝んでるヨハンが羨ましくてつい・・・」
まずはナナとヨハンにうつ伏せでお尻を出したままドモンが謝罪した。
「もう~ドモンさん!家族を覗くってもうっ!ナナが怒るのも当然よぉ?」
エリーを含む長老以外の女性陣もプンプンと怒っていて、ドモンはただただ平謝り。
美味しいものをご馳走するからと食べ物で釣ってなんとか誤魔化した。
ゴブリンの女性達はケーコがリサイクルショップで買ってきた服を着ていたが、ケーコがセレクトしたものはなんとも色っぽいものが多い上に、今まで薄着だったこともあって、着こなしも随分と大胆だった。
反省しつつ思わず笑みが溢れるドモン。
「ご、御主人様!堪えてください!」
その前兆に気がついたサンの言葉に、ドモンがハッとする。
子供達の前で尻を出してるというのに、危うく元気になりそうなところを必死に堪えた。
しっかりとドモンのそこを凝視しておいて良かったとサンは胸を撫で下ろす。
「よし!料理で誤魔化す前に、まずは子供達にお土産で誤魔化すぞ」と言いながらドモンが起き上がった。
「随分と開き直ってはっきりと言ったわねドモン」ナナはヤレヤレ。
「じゃあまずは男の子から。おもちゃとかでも良かったんだろうけど、折角だから異世界の大工道具を買ってきた。これで立派な家具や家を作ってくれ。まあ大工さんごっこでもいいからさ」
「わーい!!」
「あ、ありがとうございます!!ドモン様!!」
のこぎりやトンカチはもちろん、ノミやカンナ、差し金や斧、万能ナイフなどを渡していく。
温泉や村を整備するためのシャベルも。
「まずは村を囲む柵なども作らねばならぬから、その手伝いでもするのが良いな」とグラ。
「はい!グラティア様!」
「釘などもたくさん必要ですね。近々持ってきましょう」と騎士も微笑む。
「ありがとうございます騎士様も!」
思いの外喜んでもらえてドモンもホッとした。
「次は女の子なんだけど、こっちはおもちゃというかなんというか、向こうの世界では子供用の編み物が出来るおもちゃがあるんだよ。それをやるから衣装や手袋、人形とか毛糸のパンツとかでもいいからさ、作って遊んでくれ」
「わぁ!」
「す、すごい・・・すごすぎます!!」
「どうやって使うのでしょう???」
女の子達に混じって、ジルを含む少しお姉さん達も大興奮。
「やり方は俺にも難しくてわからないんだ。箱の写真も消えてるしなぁ・・・サン、中の説明書を読んで使い方を教えてやってくれるか?」
「はい!かしこまりました!」
それぞれの機械の説明書を読んで、ウンウンと頷くサン。
最近子供っぽいところが目立っていたが、元はと言えば街で一番優秀な侍女であるので、頭の良さは桁違い。
十人以上に一度に注文をされても間違ったことがない。
「はい大体把握しました!あとは実際使ってみましょう」とサンが説明書を閉じた。
「毛糸とかもたくさん買ってあるし、もし足りなくなったら・・・」
「それも持ってきましょう」と先程の騎士がドモンに向かって笑顔で答える。
男の子達は早速大工道具を持って森の中へ。
ザック達が付き添って木を切りに行った。
女の子達は・・・というより、ナナやエリーを含む女性全員がサンの周りに集まり注目する。
毛糸をセットし、レバーをくるくると回すサン。
「ちょっちょっちょっ!!ドドド!!!わわわ!!!どうなってるのよこれ!!」ナナが一番に叫ぶ。
「わぁこれすごいです!」作っているサンも驚き微笑む。
毛糸がドンドンと編まれ布状になっていき、あっという間に毛糸の帽子が出来上がってしまった。
「う、嘘でしょ?!」
「信じられない・・・」
「い、異世界ではこれがおもちゃだと言うの?!」
「まるで魔法ねぇ。いえ魔法でも帽子は出来ないわねウフフ」
ゴブリンの女性に混ざってエリーも驚いていた。
「うぅ~んド・モ・ン!!」
「これは子供らへのお土産だからナナのはないってば。それに多分ナナには無理だよ」
「出来るぅ!欲しい!」
「すぐに壊しちゃうってば。おもちゃなんだから」
ナナが駄々をこねる。
「御主人様・・・サ、サンも欲しいです・・・」
「で、できれば私も」
「なんだよサンやジルまで」
想定以上に大人気のおもちゃの編み機。
女性にとっては夢の機械だったらしく、エリーまで「なんとかならないかしら?」とドモンをチラチラと見てくる始末。
「じゃあこの一台を俺にくれ」
「どうするの?」
「隣街の道具屋だかに持っていって一度分解させて、量産出来るように頼んでみるしかないんじゃないか?俺が思うに多分そいつは天才だ」
「そ、そうなの??」
ドモンの言葉にナナがキョトンとした。
スイングドアのバネ付き蝶番をはじめとする、あらゆる物をその隣街の道具屋が製作している。
鍵や時計などの精密な物から、かなりトリッキーな部品まで、ほとんどの物がそこで作られているということを知った。
この世界でチャックを一番最初に再現するなら、恐らくその道具屋ではないだろうかとドモンは推測している。
「悪いな一台減っちゃって」
「いえいえ!!子供達とも話したのですが、皆で順番に使いましょうということになりましたので問題はありません!」
「そうです。それに謝らないでくださいドモン様!こんな物をいただけただけでも幸運なのでございます!」
ゴブリンの女性と一緒に長老も感謝の意を示した。
「見てードモン様!帽子もらっちゃったの!あとで私も作るの!」
「おお可愛いな」
「ドモン様ー大人になったら私もドモン様のメスドレーになるぅ!」
「わたしもー」「わたしもー」「サンはカチクー」
以前の長老の真似をした小さな女の子達が、キャッキャとドモンを取り囲む。
ジトっとした目でグラやヨハンに睨まれたドモンが「だから誤解だっての!それにサンは何を言ってんだよ!」と叫びながら、慌てて馬車の方へと逃げていった。
ちなみに村を囲う塀よりも先に、温泉を囲う『覗き防止の塀』がゴブリンの男の子達によって作られることとなったのは言うまでもない。