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第158話

それから更に三日が過ぎた。

この頃になるともう、服や下着を汚すくらいなら初めから着ない方がマシといった感覚になり、火の扱いをする時以外裸で過ごすのが普通となった。


原始人的な裸の付き合いをしているうちに、サンもドモンに対して少しだけ積極的にはなったが、しっかりとその立場は弁えていて、ナナを安心させた。

ドモンにとってナナが一番なのをサンも望んでいたためだ。



そしてこの日の朝もまた、サンの「キャキャ!」というはしゃぐ声でドモンは目覚める。

ドモンが起きる前に朝風呂に入り、体をキレイにしておくという決まりをナナとサンが作り、それを守っているのだけれども、毎度サンがすべり台ではしゃぎ声を出しドモンを起こしてしまって、ナナに怒られるというのも日課となっている。


「ほら起きちゃったじゃない。サン、めっ!」

「あぁ・・ごめんなさい」

「今日はお尻ペンするって言ったよね?おいでサン」

「うぅ・・・」


小鳥のさえずりが聞こえる中、パチンという音が響いた。

「はぁん」と、何とも言えないサンの反応。ドモンには喜んでいるようにしか聞こえない。


「ふぁあ~おはよう」

「おはようございます御主人様!」

「おはようドモン。やっぱり今日もサンが起こしちゃったわね」


爽やかな挨拶だけど皆裸だ。


「ねえドモン、サンとちょっと話をしていたんだけど」

「ん?どうした?」


ナナの神妙な顔つきにドモンの表情も変わる。


「あのほら・・・サンにしてたこちょこちょのやつ・・・私にやって欲しいの」

「はぁ?」

「サ、サンも・・・」


訳を聞けば、どうやらサンが自分だけがされたと自慢話のように言ってきて、それなら私もという事になったらしい。

暇な人間達の暇つぶし、ここに極めけり。


「サ、サンの倍は耐えてみせるわ」

「サンは失神するまでやっていいです」

「暴れられないようにしっかりと拘束してドモン」

「サンも」

「・・・・」


荷造り用のロープで後ろ手に縛られたふたりの、謎のくすぐられ勝負。


「もうどうなっても知らないからな?」

「いいわよ」

「じゃあナナから・・・ほらナナ見てごらん俺の手を。ゆーっくりナナの脇腹にこの指が食い込んでいく様子を」

「いひぃ!!や、やるなら早くやって!!なんて意地悪なの」


体をくねらせながら歯を食いしばるナナ。


「と見せかけて、サンこちょこちょこちょ!!」

「アハハハ!!ヒィィィ!!」


ドモンの不意打ちに、狂ったように笑い転げるサンの顔を見たナナが、完全に怯んでしまった。


「や、やっぱりやめるわドモン・・・怖いの・・・」

「そりゃ賢明な判断だ。ほら、紐を解いてやるから後ろ向け・・・なんつってこちょこちょこちょこちょ!!」

「アヒャヒャヒャ!!ビヒィィィ!!酷・・アアアァァァン!!やめアハハハハハ!!!あオナラが!!・・・バッハッハ!!」


「サン!お前の正体は潜入捜査官だな!?白状しろ!!」

「アハハなんですかそれ!フェヒヴァハハ死ぬ死ぬ死ぬぅぅぅ!!ころされりゅう~~!!!」


裸で縛られたふたりが交互に笑い声を上げているところに、二台の新型馬車と五台の荷馬車が到着した。

ドモン達の人生終了の瞬間である。




「これは一体何をされていたのでしょう?」と困惑するザック。

「・・・・」黙って服を着るドモン。


「今紐を解いて体拭いてあげるから、すぐに服を着てね」と同じく困った顔のジル。

「うん・・・」と俯くサン。


「ちょっとドモン!先に紐を解いて!駄目よ!みんなこっちに来ないで!」後ろ手に縛られたまま草むらを走り回ったナナは、結局騎士と御者達に全てを見せることとなった。


なぜこんな事になっていたのか?


「俺のせいじゃない・・・」とドモンがナナを見た。

「わ、私はサンがあんな事を言ってきたから・・・」とナナがサンを見る。

「・・・御主人様が最初にくすぐり拷問をしてきたんです」とサンがドモンの方を向いた。


大きなため息を吐いた一同。

「なぜ裸で?」と騎士の質問。


「サンがいつでもお風呂に入りたいって言うから」とドモン。

「服や下着が汚れないように裸でいましょうって奥様が・・・」とサン。

「ドモンがスケベな事しやすいからって言うからよ」とナナ。


ブーブーと醜い責任の擦り付け合いを見せられ皆呆れ返ったが、草むらの奥にあるビニールプールが簡易風呂だと知り、裸でいた事を少しだけ納得した。


「サン!これはなんなの??」

「これはお風呂についているすべり台というものです。これを滑ってお風呂にジャボンって飛び込むと、すっごく気持ちよくてすっごく楽しいの!」


ジルに説明をしながら、サンはまたお風呂に入りたくなってウズウズしていた。

この他に数種類の予備のビニールプールを買っていることは内緒である。

サンにバレれば全部膨らませることになるためだ。


ひとつは貴族の子供らへのお土産で、とんでもない大きさのすべり台が付いた七万円もする物。

用意するのにも片付けるのにも、どれだけ時間がかかるかわからないので、サンには絶対に知られるわけにはいかないとドモンは心に決めた。



「荷物の積み込みを終えたらみんな風呂でも入るか?」

「いえいえ大変ありがたいのですけれど、途中ゴブリンの村で温泉を頂きましたし、それよりも荷馬車の速度がですね・・・」

「ああそうか、新型馬車と差が出ちゃうのか」

「はい、なのですぐに出ないと、新型馬車にあっという間に追い抜かれてしまうのですよ」


御者達に風呂を勧めたが、そう説明されてドモンも納得。

実際荷馬車が一日早く街を出たのにもかかわらず、あっという間に新型馬車に追いつかれてしまったらしい。


「御主人様御主人様!私入ってみたいです!いいよねお兄ちゃん?」

「ザックがいいならこっちはいいぞ?折角だからザックも一泊して飯でも食っていけよ。騎士と御者も」とドモン。

「はい、ではお言葉に甘えまして」

「私達も今晩はゆっくり過ごして、先日聞きそびれた土産話を聞かせていただこうと思います」


ザックと騎士が軽く頭を下げてニコッと微笑んだ。



そこから皆で必死に荷物の積み込み。

あまりの量にドモンは途中で嫌になり逃げ出し、ナナに襟首を掴まれ、引きずられ戻されていた。


全員で仕分けしながら積み込むこと二時間。


「フゥようやくこれで終わりね。残りは新型馬車に積み込んで持っていけばいいのよねドモン」

「あ、あの奥様・・・御主人様は先程用を足しに行ってくると森に入ったまま・・・」


ナナに気まずそうに報告するサン。


「グギギギギ・・・ドモンめぇ~!!」

「あの・・・ほ、本当にお腹を壊してるかもしれませんし」とジル。

「ぜっっったいに違うわ!おいでサン!ジル!」


ふたりを引き連れナナは森の中へ。

少し奥に行くと、ドモンが「イヒヒ」と寝そべりながら酒を飲み、スケベな本を開いて素人投稿告白コーナーを読んでニヤニヤしていた。

「ああもう御主人様・・・」とサンが頭を抱え、ジルは両手で顔を隠す。


「楽しそうねドモン。スケベなこと書いてあるの?」とドモンの後ろからナナが優しく声をかける。

「ああ、こいつらもなかなかやるよな。夜中に広場のベンチでウヒヒ。人がいるってのにまったくもう」

「でもドモンもみんなの前でお尻を出して、これから叩かれるじゃない?」

「俺はそんな恥ずかしいこと・・・ん?」


森の中に生尻をパチーンと叩かれる音と、ドモンの断末魔が響き渡ることとなった。



ドモンの一行がそんな呑気な日々を過ごしていた頃、屋敷内は騒然となっていた。





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