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第157話

「うっうっう・・・」


少し千切ってはドモンの口へ。少し千切ってはドモンの口へ。

ふたりは泣きながら交互に繰り返し続ける。


ドモンが食事も取らず眠り始めてから、もう7~8時間が経過していた。


いくら声をかけても、いくら揺すっても、ちょっぴりスケベなちょっかいをかけてもピクリともせず、大きなイビキをかき眠り続けていた。

きっと疲れていたのだろうと最初は考えていたが、頭の怪我のことや様々な病気の話となり、もうどうしたらいいのかがわからなくなってからは、ただただふたりは泣き続けていた。

ドモンの口に放り込みながら。



「ん・・・ぶべっ・・・な、なんじゃこりゃまずっ!!」

「ふぁああごしゅじんざばぁぁああ!!」

「ドボーン!!やっと気がついたのおおおおおお!!」


抱き合って喜ぶサンとナナ。

まったく状況が飲み込めないドモン。

しかし口の中が異常に不味いってことだけは気がついた。


「べっ!ぺっ!!な、なんだ???」

「ド、ドモンが倒れちゃったから・・・うぐっ・・・元気になるキノコ食べさせてたの・・・うぅ良かった」

「げ、元気になる意味が違うだろうに!!」


ドモンの上着のポケットに入っていた例のキノコに気がついたふたりは、もしかしたらとイチかバチかに賭けてみた。

当然それは大間違いである。


「あ・・・かっ・・・くっ!!どんだけ食わせたんだよ!!」心臓が握りつぶされるくらいの痛み。なのに一部分だけがとんでもなく元気になっている。


「千切りながらほぼキノコひとつ丸ごとよ?」

「バカ・・・ばかぁ・・・ああああ」


カールに食べさせられた時は指でひと千切り程度。

それでとんでもないことになり、カールにはその半分の半分にしろといった。

カールの義父には更にその半分程度で、あんな事になったのだ。


完全なるオーバードーズ。ドモンでなければ死んでいる。


「ご、御主人様ごめんなさい・・・サンも食べます・・・」

「じゃあ私も」


あまりに苦しむドモンに混乱し、少しでもドモンの気持ちになろうとキノコを食べたサンと、驚き焦りながらも、なんとなくスケベ根性で食べたナナ。


「どういう事だよ!もう!あああ!!もう我慢が!!うわぁ!!」

「わ、私達がなんとかするから!ね?サン?」

「は、はい!!」

「た、多分俺もう・・・ヤサシクデキナイ・・・」



そうしてドモンのこの日初めての食事は真夜中となった。



「ふんふんふ~ん・・・奥様~そろそろまた代わりますか?」

「大丈夫よサン。ようやくドモンも落ち着いてきたみたい。ふふふ~ん」

「・・・・ふ、ふたりとも頼むからもう服を着てくれ」


想像していたハーレム展開とまるで違う。

ただキノコの効果を薄めるためだけの作業。

その度にドモンは萎れていき、サンとナナがツヤツヤのご機嫌になっていく。


途中からは幻覚が見えていて、何を見ているのか何をされているのかもわからない。


「お米が炊けましたよ~。初めてなので上手に出来たかわからないですけど。やだ私ったら、ちょっぴりスケベなことを・・・ウフフ」

「はいはーい!ドモンの身体拭けたら行くね。ほらドモン、そろそろお風呂からあがるわよ?服は・・・まだ着なくていいわね」

「いや着ます。着たいです。というかみんなも着てください」



女性陣は呑気に鼻歌を歌ってはいるが、正直ドモンはギリギリだった。

もちろんそれはキノコのことではなく、本当に体調的な問題で。

寝不足もあったのかもしれないが、ナナと一緒に馬に乗って心臓発作を起こした時以上に体調が悪化していた。


本人も知らぬうちに、ドモンの最大HPは50を切っている。


もしかしたら、二人が取った行動は正しかったのかもしれないと考えるドモン。

何はともあれ、ドモンはギリギリのところで生還した。


「見てードモン!今日は高級ステーキよ!」

「あーあ、その肉ゴブリンの長老にやろうと思ってたのに」

「長老さんにあげて、あんた何するつもりだったのよ」

「何でもかんでもそれに結びつけるなっての・・・」


モグモグとステーキを頬張るドモン。

ドモンとナナはわさび醤油で。サンはステーキソースで。


「お米がいくらでも進むわ。お肉ももちろん美味しいけど、もうお米なしでは生きられない」

「私は正直これまで何度かしか食べたことがなかったのですけど、おにぎりもそうですし、お米がこんなに美味しいものだとは知りませんでした」

「サンも気に入ってくれて何よりだよ」


三人でのんびりとそう語っていたが、これから米に関しては生活する上で最重要課題である。

実際米がなくなってからの生活は、まだ米を食べはじめてそれほど月日が経っていなかったナナの一家ですら苦しんだほど。

当然ドモンもきつかった。


稲作や米の品種改良について散々調べたもののよくわからず、いくつか適当にそれっぽい本を買っただけである。

それこそドモンはキノコの栽培くらいの知識しかなかった。

その頼みの本が文字だけしか印刷されておらず、わかりにくいことこの上なし。


「だって俺米農家じゃねぇもん・・・元パチプロだぞ・・・」


ドモンがぼそっとつぶやき、タバコに火をつけ食後の一服。

ビールを飲みながら食事を楽しんでいるサンとナナを見つめる。

サンは「私はもう大人なので平気です」と急に大人ぶった割に、一口飲んだだけだけれども。


場合によってはまた向こうへ行かなければならない。

そう考えていてふと気になった。


「あ・・・六芒星・・・」


皆にちょっと待っているように伝え、六芒星のある絶壁まで行ったドモン。

残りの光の数を確認するためだ。


冷静でいようとしたが、どうしたって心臓の鼓動が高鳴る。

この光の数が、自分が故郷に帰れる残り回数なのだ。ケーコや唯一の肉親である母親と会える回数でもある。


うつむき加減に崖へと近づき、えいやと六芒星に目をやった。

合格発表を見ている気分。



「そうか。ラストチャンスなんだな次が」



六芒星の光は、きっちりとナナが向こうへ行った分も減っていた。

よって次が最後の一回。


これだけは本当にいざという時のためにとっておかなければならない。


ドモンがみんなの元へと戻ると、酔ったナナに「遅かったわねドモン、大きい方?アハハ」とデリカシーの欠片もない声をかけられた。

どうやら向こうの世界のトイレの話になっていたらしく、サンが真っ赤な顔をしている。


「お前はサンにどんな説明をしたんだよ・・・」

「用を足した後に、お股をペロペロ舐めてくれるボタンが有るって教えたのよ」

「違う!!サン違うからな!機械で洗ってくれるだけだぞ!」

「うぅ~どっちも同じようなものじゃないですかぁ~!」


座りながら股とお尻を押さえてモジモジするサン。

ナナが詳しく説明すればするほどサンの顔が赤くなっていく。


「ご、御主人様と奥様がご要望であれば、その都度サンが洗いますから・・・」

「違う違う違う!!」

「ごめんねサン!洗って欲しいってことじゃないの!!」


サンが恥ずかしがる様子を見てナナがからかっていただけのはずが、想像の斜め上の方へと進んでしまったサン。


「今は大きい方だったのですね・・・ま、まずは御主人様お尻をお出し下さいませ・・・でも舐めるのはぁ~舐めるのはぁ~!もう少しだけ時間をください!まだ、か、か、覚悟が・・・」

「ち・が・う・の!!サン!!違うのよ!!!」

「は、はい!ごめんなさい!!舐めます!きちんと舐めますから!!うぅ・・・」

「そうじゃなくて!!!」


もうすでにサンは泥酔していた。



職務を全う出来なかったとテントの中でしくしくと泣き崩れたサンをほっといて、ビールを飲みながらナナとゆっくり語り合うドモン。


「なあナナ・・・本当にこれで良かったのかな?」とサンの方を見るドモン。

「何が?サンのこと?」

「うん・・・」

「いいのよ。私もサンもそう決めてたの。だから私達のことに関してはドモンが気に病むことはないわ」


ドモンはもう何が正しいのかがわからない。

女は好きだし、女遊びもスケベなことも好きだ。


だけれども妻が二人いて、お好きな方をはいどうぞなんてのは想定外。

浮気をしてごめんなさいしながら、お仕置きされている方がまだ気が楽だ。


「じゃあここで今サンとスケベなことしにテントに行ってもいいってこと?」

「そ、そうよ」

「お前絶対怒るだろアハハ」

「怒らないって言ってるじゃない!!怒るわよ!!いい加減にしないと!!」


誰もいない森の中に響く二人の笑い声。

サンはテントですやすやと眠っていた。




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