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第148話

「ジル!大変です!!御主人様達からお荷物が届いていました!」

「わぁ本当だ!!寝てる間に届いていたのね!」


テントの中で目覚めてその荷物に気が付き、大喜びをするサンとジル。


「きれいな」「袋~!!」


ランドセルとぬいぐるみが入っていたちょっときれいなビニール袋に感動するふたり。

その声にずっこける少し酔った御者。


「ドモン様達からの贈り物はその袋の中でさぁ」

「ほ、ほんとだぁ」

「私のはふわふわしてるよサン」


小さな赤いランドセルもどきを袋から取り出し、抱きしめるサン。

ジルも謎のぬいぐるみを出し抱きしめ、うっとりとしながらテントの中で倒れて、悶えた。


ランドセルを背負い、サンがぴょんとテントから飛び出すと、それを見た騎士と御者が顔を真っ赤にさせた。


身長が145センチあるかないかのサン。

騎士と御者はランドセルが何かは全く知らなかったが、尋常ではないくらいサンに似合っているということだけはわかった。


「まあお人形さんみたいで。その姿を見ればドモン様もお喜びになるでしょうなぁ」

「ウフフ!嬉しい!」と御者の言葉に笑顔のサンがクルクルと回る。



「そういやおふたりの服も届いていますよ。馬車の方に積んであります」と騎士。

「え?はい!」と驚きの声を上げふたりが馬車の方に走っていくと、馬車の中は荷物が山積みになっていて、また更に驚きの声を上げた。


「あった!『これはサンの服だよ。サンの背丈だとどうしても子供向けの服が多くなってしまった。ゴメンな』だって・・・いえ!御主人様が選んでくれたなら何でも嬉しいです!わぁ!服に絵が描いてあります!」


メモを読み、箱を開けて服を取り出し、それを抱きしめるサン。

何かのキャラクターがプリントされた黒のワンピースだった。


「私なんかにまで・・・ええと『これはジルの服。他のゴブリン達の分も安物だけど持っていくから。でもジルのだけ実はちょっぴり高いんだ。みんなには内緒だぞ』ですって!あーどうしようサン!」


ジルにはCAが着るような少し格好いいスーツが入っていた。

将来温泉宿が出来た時に、受付業務をしているジルをドモンが想像して買ったものだ。



早速試着してみるふたり。

サンはランドセルも背負い、ハイソックスも履いた。


「サン!なんだかよくわからないけど、すごく若返ったように見えるよ。可愛い!」

「ジルは格好良くなりました。頭のいい大人の女性って感じがします!」


「もう嬉しすぎて私までおもらししちゃいそうよサン・・・」両手を合わせ、すっかり日も落ちた空に向かって祈りのポーズを捧げるジル。

「・・・私は奥様が用意してくれたので平気です」


『サン、色々大丈夫?万が一の時の替えの下着、ドモンに内緒で入れておくわよ。意味分かるわよね?』というメモが付いた箱に、キャラクターだの縞々だのの模様の子供用パンツが何枚も入っていた。


「で、大丈夫なのサン?私は大丈夫だったけれども」

「だ、大丈夫だけど、せっかくだから下着も替えてみる」

「先に行ってるね・・・」

「うん・・・」


メイド服へと戻ったジルが大切そうに服を箱にしまい、テントへ戻っていった。

少ししてサンも戻る。サンは着替えたままの格好。



「先程届いた荷物の中に新しいテントが入っているそうです。あと『これから食品を買いに行くところだから、食事はもう少しだけ待っていて欲しい』と書いてありました」

「では取っておいた御主人様のおにぎりを食べましょう。テントもいつでも出せるように準備しておきます。ジル、お願いできる?」

「うん、任せておいて!」


騎士の言葉に答えたサンが、テントの中のおにぎりを取りに走っていく。

ラーメンと一緒にみんなでひとつずつ食べ、あとの4つを取っておいたのだ。


「あれ?ひとつだけ種類が違います。山わさびってなんでしょうか?」


そうしてその後、サンは夜空の星となった。




その頃、ドモンとナナは食料品売場へ。


「ねえドモン、100で銅貨10枚なのよね?」

「大体そんな感じだ」

「・・・本当なのねこれって・・・」


カレーのルーを手に取り、驚きの声を上げたナナ。

確かにドモンに10皿分で銅貨10枚くらいだとは聞いていた。

その話に納得もしていたはずなのに、実際にそれを見て頭がおかしくなりそうになっていた。


「か、買い占めましょうドモン」

「ああ、そのつもりだ」

「え?!」


いつもの冗談のつもりで言ったナナだったが、予想外のドモンの返事に驚きの声を上げた。

ありったけのカレーのルーをカゴに詰め込むドモン。


そして醤油や味噌、出汁の素、マヨネーズやソース、目についた物を全てカゴに入れていく。

焼肉のタレだけでカゴひとつが一杯になる。


「みんなの晩御飯をそろそろ用意してあげないと駄目じゃない?」

「あーそうだな。奮発して例の美味い肉でも送ってやろうか」

「あれね!私も食べたいなー」

「ナナは食べられないだろ。ここに俺と一緒にいるんだから。それとも一足先に向こうへひとりで帰るか?」

「イヤよ!イヤ!!!ドモンと一緒にいる!!ごめんなさい!あぁもうワガママ言わないからそんなこと言わないで!」


ヘナヘナとその場にしゃがみ、泣き出しそうなナナ。

ドモンを置いてひとりで帰る想像をするだけで全身に鳥肌が立っていた。


「ハハハお前は大げさなんだよ。この買い物終わって、ケーコが来て荷物受け取ったら俺もすぐに帰るんだぞ?」

「ヤダ!先に帰るのだけは嫌なの!!」



ドモンにとってはただの買い出しだけれども、ナナにとっては大旅行の大冒険。

その旅先からひとりで帰されるなんてことはあり得ない。


今でこそスマホなんかで直ぐに連絡を取れるため、離れ離れになることに対して抵抗はなくなったが、ナナには、いや異世界人達にとってはその感覚はまだない。


「ねえドモン!私何でもするから!もう下着を外してもいいわ?だから・・・」

「だぁぁぁ!!やめろ!!一緒にいていいから!何をそんなに焦ってるんだよ」


涙ぐみながらとんでもないことを口走るナナに周囲の視線が集まる。

ただでさえものすごい買い物量で目立っているところでナナがこんな事になり、ついに警備員が数名やってきた。

その中にはトイレで一騒動あった時の警備員もいた。


「ちょっと事務所の方まで来ていただけますか?」


警備員のその言葉にオロオロして挙動不審なナナ。

その様子に増々何かの疑いの目を向けられたドモンは、「こりゃそろそろ潮時だな」とポツリと呟いた。





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