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第133話

ものすごく反省させられたドモンが新たに焼き上げたアップルパイが皆に配られた。

長老の分だったはずの残りのひとつは、子供達がひとかじりずつ食べて無くなってしまったと聞き、長老がウフフと嬉しそうな顔をしていた。

そんな長老のために、すぐに新たなアップルパイを焼いて渡す。



「なんて幸せな味なのでしょう!これでは子供達も我慢できませんねウフフ」


長老が微笑み、周りのゴブリン達も笑顔が溢れる。

サンとジルが何人かの女性達に作り方を丁寧に説明していた。


「砂糖やバターはなんとか手には入るのですが、小麦粉は滅多に手に入りませんから、残念ながら作ることは出来ないかもしれません」

「上質なリンゴがあるのにそれはもったいないな」


少し残念な顔をした長老。


「しかしこればかりを食べるわけにもいきませんから・・・とても美味しいものですけど」

「いやいや、食べるのもいいけど、これをここの名物にしようと思ってよ」

「名物?」

「うん、旅行者に売るんだよ」


ドモンがそう言った瞬間、ゴブリン達がギョッとした顔でドモンの方を向いた。


「ド、ドモン様・・・あの・・・」

「なにか問題があるのか?」

「私達は・・・人に見つからぬよう隠れて暮らしているのです・・・」

「駄目なのか?」


そこでゴブリン達は説明をした。

なぜ長老がこんなに若いのかを。女性なのかを。


そして村のゴブリンがなぜこんなにも少ないのかを。



「殺されているのか・・・人間達に・・・」苦虫を噛み潰したような顔のドモン。

「ドモン様がいくら私達を魔物ではないと認めようと、やはり人間にとっては私達は忌み嫌われた存在なのです」とザックが俯く。


ある程度ゴブリン達が増えると目立ってしまうため、集団で別の場所に半数が移り住むということを繰り返していた。

なので隠れ住むにはこれが精一杯。


そしてひとりが見つかってしまえば狩りが始まる。

男達は女子供を守るため、自らが犠牲になり逃がすことが多いと聞き、ナナとサンの涙が止まらなくなった。


人として扱われることなどなく、獣以下の害あるものとして駆除される。

どんなに命乞いをしても、いくら謝っても、ただ狩られ続けてきた。


長老の夫は、人間達に土下座をしたまま首を落とされたという。

それを見ながら声を殺し、長老達は逃げ延びた。


だからザックはその命運を賭け、ドモンに会いに来たのだ。

だからジルはドモン達を避けようとした。兄を、そして村のみんなの心配をして。



ドモンの目が真っ赤に染まる。



「お前達も手をかけたことがあるのか?」ドモンが騎士の方を向いた。


「いえ、私達は街の護衛ですので」と目を伏せる騎士達。

「恐らく冒険者達ね・・・私はすぐ逃げちゃうからそんなことはないけれど。でもそれも殆どが依頼なのよ・・・」とナナ。


「そうか・・・悲しいなぁ・・・」ドモンは考える。ただ一点を見つめながら。

「御主人様、悲しまないでください」とジルが切なそうな顔を見せ、俯いた。


「よしわかった!とりあえず温泉に入ろう」

「ええ?!急に何言い出すのよ!!もう!!」

「御主人様っ!!うー!!」


ナナは驚き、サンも流石に怒る。

親友のジルが可哀想だとドモンの背中をポカポカと叩いた。


「いや、これがお前達のこれからの命運を握るかもしれないからな」とドモンは真剣な顔。

「前に言っていた宿の話?」とナナ。



「ああ、そこから俺が全てをひっくり返してやる」



ゴブリン達は何の話なのかまだわからない。

ただドモンが何かをしようとしていることだけはわかった。


「それもその温泉次第だ。だからその温泉がどれだけのものかをすぐに見ておきたいんだ」

「は、はい!ではこちらへどうぞ」


長老を先頭に更に森の奥へ。

すると徐々に硫黄の匂いがしてきて、ドモンの期待は高まった。


「なんと!!こんなものが森にあったとは!!」と騎士が叫ぶ。


岩肌の隙間から大量の湯が吹き出し、それをいくつかの水路に分け、大小の温泉がいくつか出来ていた。

そのひとつに手を突っ込み、温度を確かめたドモンが大きく頷く。


「よし!風呂に入るぞナナ」

「え?いやよ!みんな見てるじゃない!!」


「じゃあサンとジル入るぞ」ドモンが上着を脱ぐ。

「む、無理ですぅ!」真っ赤になるサン。

「せ、せめて他に誰もいないならば・・・」兄の顔を見て気まずそうな顔をするジル。


「ほら長老、早く脱げ」

「・・・はい」


長老は覚悟を決めた。

きっとこれがゴブリン達の未来へとつながると信じて。


ただ、半分は自分のためでもあった。

こんな機会は二度とないかもしれない。


「ちょちょちょ!!!長老さん駄目よ!!せめて人払いをした方が良いわよ!」大慌てのナナ。

「構いません。ドモン様がそうおっしゃるなら私は何でもする覚悟でございます」


そう言って脱ぎはじめた美熟女。

ドモンはすでに素っ裸になり、ゴブリンの女性陣の顔は真っ赤に。


「み、皆さん一度こちらへ!!みんなも覗いては駄目だ!!」とザックが皆を向こうへ移動させ、この場にドモンと長老、そしてドモンが浮気しないよう見張りとしてナナが残った。



「うおぉぉ・・・こ、これは・・・」

「お湯加減はいかがでございましょうか?」


湯に浸かったドモンの真横に入る長老。


「最高だよ最高・・・少し熱いけど、調節すればいくらでも入りやすくはなるだろう」

「良かった・・・」

「こんな湯にいつも浸かってりゃ、そりゃこんなキレイな肌にもなるわな。天然の化粧水に浸かってるようなものだ。長老が美人なのも納得だ」

「ウフフ・・・本当にお上手ですのね」


赤い顔した長老がドモンの肩へと寄りかかる。


「ちょっとちょっと!・・・なんかもう私も入るわ。キレイになるって言うし」


服を脱ぎ捨てドモンの横に飛び込むナナ。


「あっつーい・・・けど、気持ちいいわねこれ・・・なにこれ??ヌルヌルしてるようなサラサラしてるような??」

「うん、これは俺の故郷の近くにあった由仁町の温泉の泉質に似てるな。肌が綺麗になるぞ?いやぁ懐かしいな」

「どこよそれ。ねえ顔洗ってもいいかな?ドモン」

「洗ってみろ。ピッカピカの艶々になるぞ?スケベなことをしなくても」


「余計なことは言わないの!」と文句を言いながら顔をザブザブと洗ったナナ。


「な、何よこれ・・・ほっぺたがもちもちになっちゃった・・・赤ちゃんみたい」

「この温泉をビンに入れて売ることも出来るくらいの魔法の水だな。化粧水として。朝、数滴顔に塗って伸ばせば一日中もちもちピカピカで艶々のままだ」

「ま、毎日入りたいわ」

「わかったか?この温泉の価値が」


ナナとドモンの会話で今度は長老が驚いた。

ゴブリン達にとってはただの風呂だというのに、それに価値があると知る。


「ナナ、街でこの温泉がひと瓶入ってる物を売っていたらいくらで買う?肌が綺麗になる魔法の水を」

「銀貨2枚・・・ううん、3枚でも出すわ」

「その値段だと貴族や街の奥さん方が買い占めるぜきっとフフフ」


驚き、声も出ない長老。

そんな物がここから溢れているのである。文字通りいくらでも。


「長老もこの温泉の価値がわかったようだな。さあ、みんな待ってるからそろそろ上がろうか?」

「ド、ドモン様!もう少し!もう少しだけ・・・」

「ねえドモン、私ももう少し入りたいエヘヘ」

「茹で上がっちゃうって」


温泉の縁にある石に腰掛け涼むドモン。


「ドモン!何よそれ!!元気すぎる!!」

「あれ?!しまった!!いつの間に」

「まぁ!ウフフ」


「あんた温泉の中で何してたのよ!!」

「ち、違うってば!お前らが綺麗でおっぱいでかいからつい・・・それとも温泉の効果かな?」

「本当は?正直に白状なさい。そうすれば怒らないから」

「・・・・ナナと比べてどんなもんかなって・・・ちょっとおっぱい触ってただけだよ・・・」


パチーンと派手な破裂音が森に響き、ドモンは色んな意味でしょんぼり。お尻にはナナの手の跡。

出来れば少しだけでもお情けを頂こうと思っていた長老もしょんぼり。


そして派手な音を立てたため、騎士やゴブリンの男達が様子を見に飛び込んで来て、すべてを見られたナナもしょんぼりすることとなった。





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