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第129話

「お、お兄ちゃん・・・やはり普通の人間なんじゃ・・・」

「い、いやそんなことはないはずだ。たとえそうだとしても・・・」


魔物達がそんな会話をコソコソと行う。


「兄妹なのか?」

「あ、は、はい!」

「可愛い妹だな」

「え?!」


ニコっと笑ったドモンに驚く兄妹。


「俺はドモンだ。ふたりの名前は?」

「ま、魔物の名を聞くというのですか?!」


更に驚く魔物達。


「聞いちゃダメだったか?」

「・・・ド、ドモン様は人間なのですか?」

「そのつもりだけど。まあ異世界人だけどな」


返事をしながら、ナイフでサクサクと皿の上のアップルパイを切るドモン。


「お兄ちゃん、やっぱり人間じゃない!」

「しかし人間なら我々など相手にするはずがないだろ」


妹がまたキッとドモンを睨みつけ、「私達は魔物です!」と勇気を振り絞りドモンに向かって叫んだ。


「お前らが魔物だろうがなんだろうが、俺には関係ない。ほら食えよ。お前達がくれたリンゴで作ったんだ」

「なぜ関係がないのです!」

「知らねぇよ。なぜ関係がなきゃならないんだ。いいから食え。冷めちゃうぞ?冷めても美味いけどな」

「・・・・」


ドモンと妹の会話で魔物の兄は大混乱をしていた。


ドモンから溢れ出る圧倒的な恐怖の対象としての威圧感。

人間とも魔物とも違う、まさに災厄。もしくは大いなる味方。


だが見た目は人間だ。

人間は人間で魔物の天敵であり、それもまた恐怖の対象である。

ただただ自分達を攻撃してくる敵。味方ではない。


その姿を見たならば、逃げるか隠れるか。

一度攻撃をしてしまえば、辺り一帯の魔物は丸ごと人間に狩られる。



魔物の兄は前者であると信じ、丁重にドモンを持て成そうとした。

妹の方は後者であると信じ、近づく事を最後まで反対していた。


だがドモンの態度はそのどちらでもないどころか、自分達が差し出した供え物で料理を作ってお礼をしに来たのだ。



そんなやり取りをしているとガサガサと草木が揺れ、「武器は持っていないわ!」とナナを先頭に皆が現れた。

魔物の兄妹の警戒心が一気に高まる。


続いてサンが魔物の姿を見て「ひいっ!怖い!」と驚きの声を上げたところで、ドモンが突然サンを捕まえ四つん這いにし、お尻を叩きお仕置きをした。


「お前は!失礼だろ!」

「うわぁごめんなさぁい!うぅー!」


魔物の兄が大慌てで「ドモン様お止め下さい!我らは魔物なんですよ?!仕方のない事です!」と叫んだ。

が・・・



「人間も魔物もあるか!そんなもんは関係ない!仲良く出来るか出来ないかだ!!」



絶句する一同。泣くサン。

パーンパーンとサンのお尻を叩き続けるドモン。


「や、やめて!私達は気にしていません!泣いているではありませんか!!」そう魔物の妹が叫んだが、ドモンの顔を見て言葉を失った。


ドモンが歯を食いしばり、それ以上に号泣していたのだ。




「うー!御主人様!うぅ~!ごめんなさい!うわぁぁ!!」泣き叫ぶサン。

「ドモン!わかったからもうやめたげて!!」ナナがドモンの腕を引っ張るも振り払われる。



「わかってない!!こいつらが今までどれだけ痛い思いをしてきたか!」



「ドモン様!お願いでございます!お怒りをお沈め下さいませ!!」魔物の兄が平伏し地面に頭を擦り付け、ようやくドモンの怒りは収まった。

ナナと魔物の妹がサンの両肩を支え、心配そうに顔を覗き込む。


「私は何もしませんから・・・どうか怖がらないで・・・」

「うわぁぁん!ごめんなさぁぁい!!うわぁぁ・・・」


ナナがハンカチを出し、ガタガタと震えるサンの顔を拭く。だがまた涙が溢れた。



「あ、あなたは人間なのでしょう?!私達があなた方を恐れるように、人間が魔物を恐れるのは当たり前ではないですか!それもこんな小さな子なら尚更です!」

「・・・サンは27だ」

「た、たとえそうだとしても、あなたがやったことは横暴です!こんな無理やり仲良くしろだなんて・・・私達はそもそもそんな事は望んではいません!」

「それは本心なのか?」


ドモンの言葉にゴクリと唾を飲む魔物の妹。そして一同。


「ほ、本心です!種族が違えば生き方も考え方も違うのですから」

「俺はそれを壊しに来た。魔物も人間もない・・・そんな垣根はいらん」



「ならばあなたは!!人間のあなたは!!魔物の私を抱けますか?!」



その瞬間、ナナとサンが大慌てでドモンにタックル。


「ドモンダメよ!逃げなさいあなた!」

「御主人様!皆さんも見ています!ダメです!」


ナナが押さえつけ、サンもドモンの腕を引っ張った。

サンと少し似ている魔物の妹。

そんな娘にこんな事を言われたら、ドモンが「いただきま~す」なのは目に見えている。


「良いのか?イヒヒ」

「ひぃぃ!!」


ドモンが手を伸ばし魔物の妹の口を塞ぐと、スンスンスンと匂いを嗅いでヘナヘナとその場に崩れ落ちる。

サンの口もドモンの手に塞がれ「あぁ・・・」と魔物の妹の横に座り、ナナはすでにうっとりとしながらドモンに抱きついていた。



かつてないほどのドモンの意志。必ず抱くという圧倒的意志。



その瞬間、「ドモン様!またお許しください!ウォーターボール!!」と魔物の兄が、ドモンに頭から水をぶっかけ、ようやくドモンが落ち着きを取り戻した。


「魔法のウォーターボールの水って、結構冷たいよな」


地面に転がっている女達とアップルパイの皿を拾い上げ、ドモンはニコっと笑った。





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