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第127話

「こらサン、そろそろ手伝え」

「ああ~」

「もう・・・サンったらはしゃいじゃって」


仕方ない子ねと優しい目のナナ。

カールが言うには、サンの見た目は十年ほど前からまるで変わっておらず、それどころかドモンと出会ってからは笑顔も増え、そこから更に数歳若返ってしまったと言っていた。確かに見た目は15、6歳といったところ。


給仕をすれば年上のしっかり者であるサンだけれども、それ以外では子供っぽいところがあり、ナナは自分の妹、もしくは街の仕立て屋が勘違いしたように娘のようにも感じていた。


「サン、ダメよ!お手伝いしなさい」

「うー・・サンのおうちですぅ」

「はいはいわかったから。出ておいで」

「でもサンのおうち・・・」

「いい加減にしないと怒るわよ!!めっ!!」

「ぴ!!は、はいっ!!」


ナナに怒られビクッとしたサンがようやくテントから飛び出す。

ナナとサンがゴニョゴニョと会話をし、サンはしょんぼりしながら着替えをしに馬車に、ナナはテントの中をキレイに掃除をした。



「じゃあ昼飯は豚肉と玉ねぎを使った豚串を作っていくぞ」

「はーい」


手際よくドモンが切った豚バラ肉と玉ねぎを串に刺していき、塩と胡椒を手でパラパラとかけていく。


「なんかもう・・・ドモンのその手つきを見てるだけで美味しそうに思えちゃうのよね」

「塩のふりかけ方が格好いいです」

「これはユーチュ・・・前に誰かがやってたやつを真似しただけだ」

「でもなんで塩を振りかける時に格好つけてこっちをじっと見るのよ?」

「そういうやつなんだよ。オリーブで出来た油を高くから垂らすやつもある」

「へー」


ナナは楽しそうに笑っていたが、サンはうっとり。

自分に塩をかけられドモンに食べられてしまうことを想像し、危なくまた着替えをするハメになるところであった。


「さあ焼けたぞ。騎士達も御者も遠慮せずたくさん食ってくれよな」

「いやぁ!旅の途中でこんな飯が気軽に食えるようになっただなんて信じられません」

「確かに今までじゃ考えられないことですよ。御者台も涼しいし、こんな快適に旅ができる日が来るなんて、ついこの前までは想像もしていなかったでさぁ」


騎士の意見に御者も同意する。


「ドモンのおかげね」

「もう元の生活には戻れないですねウフフ」


ムシャムシャと豚串を頬張りつつ、相変わらずナナがドモンの自慢をし、サンが堕落していく人々を笑う。



「一休みしたら日が暮れかけるまでもう少しだけ進んで、そこで今日は休みにしよう。食料もまだ余裕があるし、そこまで慌てる必要もないからな」

「さんせ~い!早く寝たいわ」

「お前な・・・食ったらすぐ寝るって・・・だからおっぱいデカくなるんだよ」

「おっぱいは関係ないでしょ!!なんで寝たら胸が大きくなるのよ」

「寝る子は育つってことわざが俺の国にはあったんだよ」

「・・・まあお母さんも食べたらすぐ眠くなっちゃうわねぇってよく言ってるけど」


ドモンとナナがそんな会話をしていると、食べ終えたサンがトコトコとテントの中に入ってコテンと横になった。


「おいサン、もうすぐ出発だぞ?」

「もう寝ませんか?御主人様」

「サンは小さくても可愛いし、それにおっぱいデカくなるとあのドレスを二度と着られなくなるぞ?」

「!!!!」


ぴょーんと跳ね起きたサンがテントから飛び出し、せっせと食事の後片付けを始めた。

お腹も膨れたところでテントも片付け、出発の準備を整える。

テントが一瞬にして小さく畳まれ、騎士と御者は驚き、サンは「あ~おうちが~!」と落胆していた。



再出発して3時間。

まだ夕方前ではあったが、もうそろそろ泊まる場所を考えようと馬車をゆっくり走らせる。

その時であった。


「ま、魔物です!!」


少し焦ったような声を上げるサン。

後ろの馬車から護衛の騎士達がガシャっと音を立てて飛び出した。


「待ってくれ!攻撃するな!」窓から顔を出し叫ぶドモン。

馬車の窓からキョロキョロと見回すも魔物の影はなく、慌てて馬車を降りた。


「サン、どこだ?どこにいた?!」

「はい・・・あの・・・あそこから2匹・・ふたり出てきて、かごを置いて何処かへ走っていってしまったんです」

「どんな魔物だった?」

「肌が緑色がかってる・・・」

「多分ゴブリンね」


背中の剣のグリップに手をかけたまま、サンとドモンの会話に割り込むナナ。


「かごってあれか?」


馬車の100メートルくらい先の木の下に、木の皮を編み込んで作ったと思われるかごが置いてあった。


「お前らちょっと待っててくれ。騎士もだ。合図をしたら馬車を走らせてきてくれ」

「それは危険です!」

「ドモン駄目よ!罠かもしれないじゃない!」


ひとりで様子を見に行こうとするドモンを皆が止める。


「じゃあナナとふたりで行こう。ただし武器は置いていってくれ。頼む」

「・・・・わかったわ」


ドモンにはそう言ったが、ナナはいざとなった時、魔法を放つ覚悟であった。

タバコに火をつけゆっくりとカゴに近づく。

ナナはドモンの左の袖を掴んでいた。

怖いのもあるが、危険が迫った時にすぐにドモンを引かせるためだ。


カゴに近づくに連れ、木々がガサゴソと音を立てるが、それが魔物なのか風なのかがわからない。

そんな様子を騎士に守られながら、胸の前で両手を合わせて祈り見つめるサン。


「ドモン気をつけて!覗き込んだら飛びついてくる毒蛇とかかもしれないわよ!」

「うん・・・でもあれって」


ナナは警戒していたが、ドモンはカゴの隙間から赤い物を発見していた。

ナナが掴む袖を振り切り、スタスタとカゴに近づくドモン。


「ドモン待って!待ちなさい!」

「大丈夫だって。これリンゴだよ」


カゴの中には山ほどのリンゴ。

タバコを消して、その中の一つを掴んでかじる。


「ドモン!!毒とか!!」

「平気だろ。毒を仕込むならこんなにリンゴを用意しないさ。うん美味い。ナナもかじってみろよ?」

「う、うん・・・」


ナナもリンゴをかじる。恐る恐る小さく。

だがすぐにパァッと明るい顔になった。

新鮮で甘くて、これ以上ないというくらい上等なリンゴだったのだ。


「ま、魔物がこれをくれたっていうの・・・??」

「そういうことみたいだな」


リンゴをかじりながらドモンが辺りを見回すが、やはり魔物の姿は見つからなかった。





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