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第123話

新型馬車がまた一台完成し、元の世界への買い出しへ行く目処が立った。

明日、食べ物など買い出しをして出発の準備をし、数日後には出発の予定。


ただこの日は屋敷の風呂に湯沸かし器を付けるということで、ドモンがカールに呼び出されていた。

ナナは出発の準備をするためドタバタとしており、サンが運転する馬車に乗ってドモンと鍛冶屋だけが行くことになった。



「よお鍛冶屋、調子はどうだ?」

「いやぁそりゃ忙しいよ。まあ弟子達が頑張ってくれてるから少しは負担は減ったけどな」

「カールが急に無理言っちゃってすまんな」

「それはいいんだよ。頼りにしてもらってこっちも光栄ってもんだ」


鍛冶屋の家の前でそんな会話をしながら工場へと入っていくと、弟子である子供達が皆ドモンの前へとすっ飛んできた。


「ドモンさんお久しぶりです!」

「おお、みんな頑張っているようだな」

「いやまだ親方には到底及ばなくて・・・足を引っ張らないようにするのが精一杯です」

「ハハハ、そんな簡単に追い抜かれたら親方だって立場ないよ。とにかく頑張れ」


ハイ!と大きな返事をしてまた持ち場へと戻っていった。


「ところで例の物は出来てるのか?」

「ああ、一応言われた通りには作ったつもりだけれども・・・実際に使ってみないとわからないから不安はあるよ」


そう言って魔導コンロのような物と二本のパイプが付いた鉄の箱を見せた。


「うんうん、これを風呂に穴開けてパイプを通して、セメントで隙間埋めりゃ大丈夫だと思うよ。失敗しても笑って誤魔化そうぜワハハ」

「そんな事できるのはあんただけだよ・・・じゃあ行くか」


弟子達に手伝ってもらい湯沸かし器を馬車に積み、屋敷へと出発した。



「おーい」

「ドモン様!お待ちしておりました!どうぞ!」


騎士達が大慌てで門を開け、馬車が進む。


「そんな挨拶で屋敷に入れちまうのか・・・」

「ナナにも同じようなこと言われたよ。まあカールだって『おいドモン!』って言いながら店に入ってくるんだからおあいこだろ」

「まあそうだな。ワッハッハ」


いつものようにずらりと騎士と侍女達が左右に並ぶ。

その侍女達の先頭には先日『ドモンのもの』とした例の三人。


「ドモン様!お待ちしておりました!」

「ドモン様!お荷物をお持ち致します」

「ああドモン様!何かあればすぐに私にお申し付けくださいませ」


何の心変わりがあったのかは分からないが、以前にも増してグイグイと迫る侍女達。


「おお元気にやってたかお前ら。新しい風呂が出来たらみんなで入るから心の準備しておけよ?」

「は、はい!!!」

「御主人様!!もう!!奥様に怒られますよ!」馬車を預けて走ってきたサンが涙目になって訴える。


「ごめんごめん!サンも一緒に入ろうな?」

「ふぁい」


真っ赤な顔になったサンと侍女三人がどうしましょう?!とワタワタとしていた。

額に青筋を立てているカールの前で。


「貴様は・・・ナナがおらんと思って浮かれおって!」

「まあ固いこと言うなよ。冗談だってば」

「貴様は冗談が冗談になっておらんのだ!!」

「さあ早速風呂の改造しようぜ。怒ってばかりだと頑固ジジイと呼ばれるぞ?」

「話を聞かんか!バカモン!!」


騎士達に湯沸かし器を持たせ、スタスタと先に屋敷へ入るドモンに、パタパタとサンと三人の侍女がついていく。

鍛冶屋が気まずそうな顔で取り残され、カールと共に深い溜め息をついた。




「うーむ・・・」


風呂場に入り、ドモンが先ほどと打って変わって真剣な顔で湯船を睨んでいた。


「・・・どうだドモンよ、取り付けは可能であるか?」と考え込むドモンを見て不安そうなカール。

「ああなるほど・・・これはちょっと厳しいな」と鍛冶屋。


湯船がカレー皿風の斜めになっている湯船だったため、湯沸かし器のパイプが届かなかったのだ。


「風呂場も広いし横から付けるのはどうだろう?」と鍛冶屋が聞いたが、「風呂に入りながら温め直しとかしないならそれでも良いかもしれないけれど、湯の廻りも悪いしあまりおすすめは出来ないな」とドモンが頭を掻いた。


「なあカール」

「やはり無理そうか?」

「どうせだから新しい湯船作っちゃおうか?みんなで入れるデカいやつ」

「ハァ?!」


突拍子もないドモンの提案に、鍛冶屋も一緒に叫ぶ。


「この湯船取っ払ってレンガで湯船作れないかな?それだけのレンガある?」

「ほ、本気か?!レンガは家を何軒か建てられるほどあるが・・・」

「ほら、温泉宿の試作品みたいな感じで作っちゃおうよ」


「ど、どのくらいの大きさにするのだ?」

「まあこの風呂場の三分の一程度の大きさもあればみんなで入れるだろ」

「貴様はなぜみんなで入ることが前提なのだ!」


間違いなくスケベなことを考えているだろうドモンに指摘をしたカール。が・・・


「私は素敵だと思います!カルロス様!」

「私もそう思います!」「私も!」「私もです!」とサンと侍女達がドモンを援護した。


「ぐ・・・」

「それにカールだって奥さんと入りゃいいじゃねぇか。キノコでも食ってよイヒヒ」

「・・・・レンガを持って来い!大急ぎだ!」

「は、はい!!」


騎士達十数名が一気に動き出し、古い湯船を取り外したところへ積んでいく。

ドモンの指示通りにつなぎのセメントを丁寧に塗りながら、7~8人は入れるほどの湯船が完成した。湯沸かし器も無事設置完了。


たった半日で屋敷の風呂が生まれ変わってしまった。


「あとはセメントが乾くまで三日ほど待って、きちんと水圧に耐えられるかと、しっかり湯が沸くかを鍛冶屋とまた確認しに来るから」

「ああ・・・わかった」


カールはまだ実感が湧いていない。

出来上がったこれがまだとても風呂だとは思えなかったためだ。



ドモンは少しだけホッとした顔と、少しだけ寂しそうな顔をしながら帰っていった。








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