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第119話

波乱の結婚式、そして新婚初夜を迎え朝が来た。

サンとナナとで川の字で寝たドモンはまだ眠りについていた。


「ふーふーふー」

「ダメよサン、ドモンは疲れてるからまだ寝かせてあげないと」

「スンスンスン・・・あーでもぉ奥様ぁ・・・御主人様の汗の匂いが・・・」

「クンクンクン・・・スゥハァ・・・我慢よサン。匂いだけで我慢なのよ。あぁ~好き~ドモン~」


ナナがドモンの首筋に顔を突っ込み、サンは腕枕の中ドモンの胸元に顔をくっつける。


「あぁ~御主人様に食べられてるみたい~・・・」

「わかるわよ。汗臭いのに嫌いじゃないの。手で口を塞がれた時の何倍も・・・もう抵抗なんてできないのよ」


「う、うわぁ!!」


様子がおかしいふたりに跳ね起きたドモン。

真っ赤な顔で「何やってんだよふたりとも!!」と叫び跳ねのける。


「あー御主人様・・汗臭い~」

「ちょっとサン、何脱ごうとしてるのよズルいわよ。私も」


「何やってんだお前ら!!」


ベッドから飛び出し水浴びに向かうドモン。

ふたりの「待ってぇ!汗臭いけど嫌いなわけじゃないのぉ!」と声が響く。



ドモンは元の世界にいた時から自分の体臭がコンプレックスだった。

それを嗅いだ女性が我を失ってしまうのも怖かった。


手の平で口を塞ぐだけで殆どの女性が抵抗が出来なくなってしまう。

そして発情してしまうのだ。



ドモンが学生の頃、電車でナナのような大きな胸を不意に触ってしまったことがある。

目の前に何か触りたいなと思った大きな膨らみが揺れていて、完全に無意識で手が出た。

ホームセンターの枕売り場を通り過ぎる時、柔らかさを手で確かめる行為と似ている。


だが当然それは痴漢という犯罪である。


大声で叫ばれそうになり、思わず「ごめんなさい!違うんです!」と言いながら手で口を塞いだ。

その瞬間、女性はその場でヘナヘナと崩れた。薄っすらと笑みを浮かべながら。



ドモンは恐怖した。



それ以来特にコンプレックスとなっていたが、欲に負け、それを利用して女も抱いてきた。

それによりどれだけ恨まれ、どれだけの女性に殺意を抱かれていたかはもうわからない。


本物の人間のクズだと自覚し、本人なりに自重しているつもりである。


「もう!どうして逃げるのよ。いつも言ってるじゃない。嫌いじゃないって。こらサン!それじゃ水浴びにならないでしょ離れなさいってば」

「ふーふーふー」


「嫌だよ!自分でもおっさん臭いと思ってるのに、それを嗅がれるなんて」


ナナに水をかけてもらいながら、体を必死に擦るドモン。


「クンクンクン・・・」

「あ、ダメよサンそんなところクンクンしちゃ!早く立ち上がりなさい!!ああダメだってばドモン元気になっちゃ!!我慢なさい!」

「だって昨日エリーがずっと・・・もう我慢なんて・・・ごめん」

「もう仕方ないんだから・・・」


サンはドモンとナナが二人がかりで体を洗ってあげたところで幸せそうに意識を失い、ドモンとナナは新婚初夜を朝、風呂場で迎えた。



「お前達は風呂場なんかで何をやってるんだ・・・ナナも少し声を抑えなさい」とヨハンが呆れる。

「し、仕方ないじゃないキノコのせいで・・・それにお母さんが悪いんだから!」と反論するナナ。


「だってぇ・・ヨハンったらもう寝かせてくれないのよウフフ。それにあのキノコのせいよぉ」エリーが体を振る。

「ってことはドモンが悪いな」

「そうよドモンのせいよ」


結局全部ドモンのせいということにして落ち着いた。

すっかり蕩けた顔で「御主人様は悪くないです・・・」と風呂場からヨロヨロとサンが出てきたが、時すでに遅し。



この日はドモン達の買い出しの旅に備え、ヨハンとエリーに鶏塩鍋の作り方をドモンが教えることになっていた。

鶏団子の作り方はすでに教えられていたので、あとは鍋だけだ。皆で厨房の中に入る。


「ねえドモン、野菜と鶏肉でこれって作るじゃない?鶏肉のスープと何が違うの?」


ナナが作る例のまずい鶏肉スープとほぼ材料は変わらない。

だがドモンが作る鶏塩鍋は美味いのがナナには不思議だった。


「まずベース・・・つまり下地となる出汁が決め手なんだよ」

「その出汁ってのがわからねぇんだよな」

「食材には旨味の成分があって、それをいかに引き出すかが問題なんだ」

「ううむ・・・」


ドモンの言葉にヨハンが唸る。

そう言われてもやはりわからない。


「とりあえずその旨味成分ってのだけを味わってみるか?」


そう言って少し沸かしたお湯の中にだしの素を少しだけ入れる。


「これはその旨味成分だけ抽出したようなものだな。塩も何も入れてないけどみんなちょっと飲んでみろよ」

「ほとんど味はしないけど・・・なんだかずっと飲みたくなっちゃうわねぇ」


ドモンに渡され、最初に飲んだエリーが確かめるように何度も出汁を口に含み、頬に手を当てて考えていた。


「なんかこう薄っすらと味を感じるけど・・・不思議なもんだな」

「体に優しい感じがしますね」

「んぐ・・・うま!ドモンおかわり」


ナナだけが一気に飲んでしまいおかわりをする。


「じゃあおかわりついでにこれに塩をひとつまみだけ入れる」


「わああ!!」サンの顔がぱぁっと輝く。

「ど、どうしてだ?!どうなってんだドモンよ??」

「んあー!おいっし!!まるで魔法じゃない!!!」


今度は全員が一気に飲み干し、エリーがぴょんぴょん跳ねておかわりをした。

エリーが一番好きだと言っていた味に、たったそれだけで突然近づいたのだ。


「まあ塩を入れただけなんだけど、しっかりと下地を作ってやれば美味しくなるんだよ」

「この粉が無くなったら作れないのか?」

「これがあれば楽だってだけで、出汁はいろいろなものから取れる。魚や海藻があれば良いんだけど、鶏肉からも取れるよ。俺は苦手だけど味の濃いキノコとかもな。あるのかな?椎茸・・・」

「そうなのか!少しだけ分かってきたぞ!」


ようやく出汁が何なのかがわかってきたヨハン。


「本当は鶏肉の骨とかで作るんだけど、今日はないから鶏もも肉で代用する」

「ほ、骨?!あんなのタダで貰おうと思えば貰えるぞ?!今貰ってこようか?」

「すぐ手に入るなら貰ってきてよ。大鍋で作るからたくさん貰ってきて」

「おう!ちょっと待ってろ!」


大きな鍋を持って意気揚々とヨハンが飛び出していく。

その間みんなはまた塩入りの出汁を飲んでのんびり。ドモンはカウンターでタバコを吸っていた。


「ドモンはどうしてこんなに鶏料理に詳しいの?」とナナが横に座る。

「ああ知り合いに鶏屋さんがいてよ、送ってくれてたんだよ。それでよく料理してたからな。あと米やら酒やらも貰ってた。そういやそろそろもう家に届いてるかもしれないな」

「えぇ?お米も?!羨ましいなぁ・・うちにも届かないかしら?」

「異世界に住所が変わったって伝えないとなハハハ」


美味しいお米を思い、カウンターに頬杖をつくナナ。


「そんなお友達がいるなんて素敵ですね」とサンも横に座る。

「お菓子もよく送られてきてたから、もし届いていたらサンにあげるよ」

「わああ!!ありがとうございます御主人様!!」

「ズ、ズルいよドモン!サンばっかり!!」

「ナナはいつもドモンさんが作ったもの食べてるでしょう?わがまま言わないの」


エリーに諭されナナが不貞腐れていると、ヨハンが鍋を抱え嬉しそうに帰ってきた。








少し前に幕間用に書いたものを、なんだかもったいないので本編に合わせて新たに書き直した。

かなり長くなってしまったので前後編に分ける。


・・・ということを実は後でまたやる(笑)

まあ夏休みということで、のんびり呑気に読んでもらえたら幸い。

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