桜が咲く頃に、また会いたかった
卒業シーズンなので。
単純に思い浮かんだので。
(いや……すいません、変な時間に起きてしまったので書きました。はい)
それでは、どうぞ。
「10年後、またここで会おうね。私達が、どうなっているか知りたいし。」
高校の卒業式の時、学校の土手にある一本の桜の下で彼女が言った。
俺ら、仲良し四人。
また会えると、そう思っていた。
―――あれから、10年。
ここに来たのは、地元に残った俺だけだ。
他の三人とは、疎遠になった。
むしろ、この『約束』は俺だけが覚えていただけだろうか。
この10年で世界は目まぐるしく変わった。
自然災害、感染症のまん延。
国内でも厄介なのに、海外も色々起きている。
「10年後に会おう」と言った彼女は、かつての夢であった舞台俳優を目指して上京した。
今じゃテレビ活動や声優もやってて、煌めく世界に行ってしまった。
もう一人の彼女。どうやら、海外の人と結婚したと聞いている。
その人の国に行った、とも聞いている。
今じゃ、あの厄介な感染症でこの国に戻れないと思っている。
そして、彼。若くして、動画サイトの所属タレントを育成している事務所を立ち上げたとニュースで見た。
最初、そいつの名前を見たときはビックリしたよ。
社長ってほどだから、それなりに多忙だろうな。
で、俺。
地元に残った俺。
残った理由。
そりゃあ、もちろん。あの『約束』をしたかったから。
……てのは、半分。
俺は農家の家を継ぎたくて地元に残っただけ。
今年のここの桜、いつもより寂しく見えたのは何でだろう。
『みんなに会えなかったから』
そう思った矢先、目に涙が浮かんだ。
本当は、みんなと会いたかった俺。
バカみたいと思われても仕方がない。
そんな10年後の事なんか―――
「………拓海ー?」
俺の名を呼ばれた。
目を開けると、あの桜の下に居た。
いつから、寝ていたんだ。
てか、この声―――
「んもう、拓海のバカっ!卒業式に遅刻するわよ!」
読んで頂き、ありがとうございました。