転移2
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「おい。」
「うわああああぁぁぁぁっ!?」
唐突に後ろから肩を叩かれ、思わず飛び退く。
振り向くと声の主も驚いた様子で固まっていた。
「な、なんだよ…そんなにビックリするか??こんなところで突っ立って…どうしたんだよ」
声の主は小学校低学年くらいの男の子だった。
目にかからないくらいの長さの少し柔らかそうな赤茶の髪に、きれいな二重のぱっちりとした茶色の瞳、高めの鼻にすっと通った鼻筋…ほほに丸みは残り、全体的にまだあどけなさが漂うが、間違いなく将来が楽しみな少年だ。
[ん?誰?こんな美少年の知り合いいたっけ?]とか思っていると、突然、目の前の少年についての記憶を思い出した。
自分の記憶ではないので思い出すというのも違う気がするが…そうとしか表現できない感覚だった。
『ルーカス・マクロン 9歳。 呼び名はルカ。
隣の家に住む同級生で幼なじみ。母親同士が親友。
家族構成は、父・母・姉・弟・妹
土・智 属性に加えて火属性を持ち、地区では珍しい存在。
好きな食べ物は…….』
「ルカ」…?ルカといえば攻略対象の1人でヒロインの幼なじみ。ヒロインと同じく並外れた魔力量を買われ共に学園に入学するんだけど、令嬢たちに嫌われるヒロインと違って持ち前の化け物じみたコミュ力を発揮して庶民出身ながら学園の人気者に、その人脈を生かしてヒロインを守る…って感じのキャラだった気がする。
そのルカが幼なじみってことは…よし!私、本当にヒロインに転移したんだ!
ヒロインならきっと第1王子攻略もできる!よし!サクッと攻略してさっさと帰ろう!!
先行きは明るい!と息巻いたところで ふと、目の前の男の子への違和感に気づいた。
ーーーえっと…小さくない??
学園に入学したての時でも確か15歳。でも…今目の前にいる男の子は…9歳。そしてこの子と私は幼なじみ…ということは…
「ねえ!私何歳!?」
「い、いきなりどうしたんだよ…8歳だろ?」
「8さ…」
8歳!?ということはまだ学園に通えない!?それに…少なくとも6~7年は戻れないの!?
さっきまで楽勝だと思っていた帰郷への道が急に遠く感じられる。
「サラ?…おーい、サラ?大丈夫??」
ルカの心配そうな声もほとんど聞こえていなかった。