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転移


『おめでとうございます。《プリンス&ナイト》を一万回目にクリアしたあなたは、《プリンス&ナイト》の世界への転移者になることが決定しました。』



最近20歳になった大学生[神前 紗良(かんざき さら)]は、たった今クリアした乙女ゲームのエンドロールの後、画面に表示された文字に目を見張った。「特別エンド…?第二部…?それとも隠しルート解禁とか??」不思議に思いながらも次へ進む。次の画面には注意事項が書かれていた。



『注意事項

・元の世界へは第1王子ルートクリア、もしくは死亡によって戻ることができます。

・ルートクリアの場合は現在、死亡の場合は10年後に戻ります。

・転移先は3人のなかから選ぶことができます。途中での変更はできません。

・会話に選択肢はありません。』



……なんとなく雲行きが怪しい気がした私は、ホームボタンを押した…が、反応がない。セーブも…できない。電源ボタンを長押ししても…画面は消えない…。次へ進むしかないようだ。次の画面は転移先選択だった。



ーーーーーーーーーーーーー

ヒロイン


属性 水・土・光・智

ーーーーーーーーーーーーー

公爵令嬢


キャロル・リ・デ・シャルル


属性 風・土・闇・智

ーーーーーーーーーーーーー

伯爵令嬢


スピナ・カルロス


属性 火・水・闇・智

ーーーーーーーーーーーーー


ヒロインはともかく…他は誰だったか記憶を手繰る。



公爵令嬢キャロルは国に4つしかない公爵家の令嬢。家柄、血筋はもちろん、容姿端麗で何人かいる王妃候補のなかでも最も王妃に近いと称されていた人物だ。

しかし先ほどクリアしたルートでは、第1王子に急接近するヒロインを王子から遠ざけようと焦るあまり、ほぼ全ての行動が裏目に出、逆に王子から遠ざけられてしまっていた。


伯爵令嬢スピナは…確か…キャロルの取り巻きというか友人(?)だ。

第1王子に好意を寄せており、最も王妃に近いと称されるキャロルに近づくことで王子への接触を狙っていたが、ヒロインが表れ…その後はキャロルとほぼ同じだ。



最近は悪役令嬢が活躍したり、王子に選ばれたりする転生ものも多い。

それと同じくモブキャラだったはずのキャラやそもそもゲームに登場しなかったはずのキャラに転移・転生し、活躍する物語も多い。

そもそも乙女ゲームを始めたのもそれらの物語に魅せられたのがきっかけだ。

しかし…詳しく覚えていないキャラになっても活躍できる気がしない。

しかも、現在20歳の私は10年後に帰還となれば貴重な20代が一瞬で終わることとなる。できれば現在に戻ってきたい。



「やっぱり一番クリアしやすいのは…ヒロインだよね」



ヒロインを選択し、決定ボタンを押す。画面の指示に従いヒロインの名前を入力する。



「か、ん、ざ、き、さ、ら…っと」



本当に転移するのだろうか?それともゲームの仕様なのだろうか?「異世界、それも魔法が存在する世界に行けるかもしれない!」という期待と「本当に戻ってこれるのだろうか…」という不安、「そもそも異世界になんて行けるのだろうか?」という疑問を胸に確定を選択した。



「なにか持っていった方がいいかな?でも魔法使えるから特に不自由は無さそうだし、日本のゲームだから日本語だったしな…うーんとりあえず…これ?」



手元にあった中学の技術の授業で作った手回し発電ラジオを手に取る。電波はないのでラジオは聞けないが、中学生でも作れたもので発電もできるためなんとなくに目に付いた。

かばんに入れ、あとはなにかないかと部屋を見渡したが……そこはもう部屋ではなかった。




ーーーレンガで建てられた建物、整理された町並み、そして遠くで圧倒的存在感を放つ城は…何度もイベントで登場したゲームのなかの城そのものだった。



「……えっ!?えっ!?ほ、ほんとうに…異世界に転移してるー!?!?」



道行く人々の不信な視線を一心に受けながら、私はしばらくその場に立ち尽くしていた。

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