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僕が、肝試しに行く話。

作者: ice


中学校を卒業する、前日。

僕は、仲の良い友人たちと卒業を祝って肝試しをすることになった。


田舎も田舎。

中学校のクラスも二つしか無いし、その殆どが顔見知り。

けれど、高校に上がることになればそれぞれが別の場所へと旅立つ。

その最後に肝試しを選んだのは、何故だっただろうか。


誰かが、言ったのだ。

森の中に、廃屋があったと。


その場所は、子供の頃には親から行くのを禁止されていた。

既に打ち捨てられた廃道沿いに、ぽつりと立つ一軒家だというのだ。


誰かが言った。

面白そうだから探検してみようぜ、と。

誰かが言った。

危険だからやめたほうが、と。

誰かが言った。

お前怖いのか、と。

僕は言った。

――――――――と。


斯くして。

中学生故の、無駄な行動力と熱意はその廃屋へと向けられた。



その廃屋は、2階建てのようになった木造建築の建物だった。

入り口は、古いながらもしっかりとした南京錠で止められていて。

周囲を回って、僕達が何とか入れそうな穴から入ることになった。


その場で簡単なルールが決められた。

最初に行くやつが、二階の一室に五円玉を人数分置いてくる。

他の奴等は、それを取って戻ってくる。

そんな在り来りな、肝試しのルール。


全員の財布をひっくり返し、人数分枚数が有ることを確認して。

残る奴等に――懐中電灯を除いて――荷物を預け、戻ってくる。


一人頭、十数分程の時間で戻ってきて。

順々に、穴があっただの。

怖くなかっただの、言い合って。

僕の、順番が回ってきた。



ぽたり、ぽたりと音がする。

水道が止まって幾数年が経ったはずの廃屋のはずなのに。

ごくり、と唾を飲む音が妙に大きく聞こえて。

ぎしり、と一歩を踏み出した。

所々に穴の空いた廊下を、右手の懐中電灯が頼りなさげに映し出す。


入った場所は、どうやら元は勝手口の近くだったらしい。

部屋を出て、右手を向けば。

左手に、上へと上る階段が見えて。


ぎしり、ぎしり。 はぁ、はぁ。

ぎしり、ぎしり。 はぁ、はぁ。

ぎしり、ぎしり。 はぁ、はぁ。


吐く息と。

床の軋む音だけが、空間を支配していた。


ぎしり、かたん。


階段へと、脚を踏み出した。


ぎしり、かたん。


――――ねえ。


二段目に差し掛かり。

そんな、声が。

耳元で聞こえて。

風の音だ、と自分をごまかして。


ぎしり、かたん。


三段目で、その声は少しだけ大きく聞こえた。

背筋が凍るのと。

振り返っては駄目だ、という直感が。

僕の全身を支配した。


ぎしり、かたん。


ねえ。


ぎしり、かたん。


こっち。


ぎしり、かたん。


向いて?


ぎしり、かたん。


ね、え。


ぎしり、かたん。


聞こえてるんでしょう?


ぎしり、かたん。


無視しても。


ぎしり、かたん。


――――無駄、だよ。 ■■、くん。


十三段目に掛かって。

階段から、離れて。

その声は、唐突に離れた。


――――戻る時に。

その声は、聞こえることはなかった。



戻った全員で、話をした。


誰かが言った。

何が怖かった?

誰かが言った。

穴かな。

誰かが言った。

出入りで身体が引っ掛かったこと。

誰かが言った。

畳が腐ってたよな。


誰も、水音と。

声に関しては答えなかった。

僕も。

何も、言わなかった。



結局。

誰が、肝試しをしようと声を上げたのか。

それも、分からなかった。


そして。

見知らぬ留守電が一件、携帯電話に残っていた。

時間帯は、階段を降りた頃。

非通知で残った、ナニカ。

黙って、何も聞かずに。

それを、削除した。


何故、捨てられたのか。

何故、行くのを禁止されているのか。

それすらも、分からないまま。


未だに、その廃屋は佇んでいる。


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