(8)下校
「ねっ、卓球部に来て正解でしょ?」
美優の言葉に、この時ばかりは俺も頷く。
「いや〜、本当に来てよかった。でも、部には入らないでおこうかな…。」
「どうして?」
「俺、塾に入ったからさ。部活と両立できるかな〜?」
俺は、学力に自信がなかったので、塾に入っていた。
「学生は文武両道でしょ!それくらいできなくてどうするのっ!」
怒られた…。やっぱ恐い。
「とにかくっ、卓球部、入りなさいよっ!!!
じゃあ私、帰るから。」
そう言うと美優はさっさと行ってしまった…。
俺はこの後、授業があるので塾まで直行である。
玄関に行くと、神原くんがいた。すぐに出て行ってしまったので、話し掛ける事はできなかった。
トボトボと歩き続け、塾に着いた。塾のシステムは基本的に自分の好きな時間に、自分のやりたい教科のプリントを勝手に出してやる、という自由な感じだ。
俺は席に着いて(席も自由なので、どこに座っても良い。)勉強を始めようとして、ふと横を見ると…
なんと!神原くんがいるではないか!
「やっ、やあ。」
とりあえず声をかけてみた。すると神原くんはこちらを見て…
「あなたは…たしか………瀬渡………廣くん…ですか?」
「そうそう。さっき一緒に卓球部の見学してた瀬渡だよ。」
いや〜こんなところで会うなんて奇遇ですなあ。
「前まで……隣に…なった…事は……何回か……あります……よ……?」
うっ、なんか気まずい。
それにしても、初めてしゃべって気付いたが、この人は単語と単語の間に、間を開けるようにしてしゃべるので、聞き取りずらい。