(21)大人しい奴ほど…
月曜日、俺は無事に課題を提出しのんびりと塾に向かって歩いていた。
俺達が撮った写真は意外にも好評で、先生から褒められた。褒められるのは悪い気はしなかった。まあその後、「ふん、当然よ。」という美優の一言で全部だいなしになったけどな。
山の方を見るとまだ雪が残っていた。鳥達も長旅から帰って来て巣作りに勤しんでいる。何事もない月曜日。塾に行く前までは…。
塾に着いて教室に入り、いつもの定位置に座る。
この時期になるとだいたい自分の場所が決まってくる。その隣にはすでに神原くんが座ってすごく古そうな本を読んでいた。
「よう、早いな。」
と、声をかけてみる。
「あ、どうも、です。」いつも通りの聞き取りずらい声で返してくれた。
「何読んでんの?」
「え〜と、教えられない、です。」
「えー、教えてくれたっていいんじゃん。」
「これは、駄目なん、です。」
「いいじゃないかー。」
と、俺がその本にちょっと触れた途端、
「これは駄目だっッーーーー!!!!!!!」
神原くんが大声をあげた!突然のことに思わず目が点になる俺。
「あっ、すいま、せん…。」
元に戻った!?
「怒ると、自分、でも、わけがわからなく、なる、ことが、あるんです。大丈夫、ですか?」
「ああ、大丈夫だ。」
もう絶対あの本に触らないようにしよう…。
そう心に決めて勉強に取り掛かる。
準備をしていると、一人の女子が俺の座っている席の後ろに座った…。