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プロローグ

「お前もこれで結婚できる年になった。わしが言いたいことは分かるな?」

 大広間の中に男の重厚な声が響き渡る。

 光源が蝋燭に限られていることに加えて、その空間の中には二人の人影しかないため、ただでさえ重苦しい空気が立ち込めていた。

 まるで二人の関係性を物語るように。

 玉座に座る初老の男と、その御前の前に立膝をつく少女の二人だ。

 彼らの華美な身なりからは、相当な高位の人物であることが容易に予想される。

 少女は男が発した言葉に応じることもなく、俯いたまま黙っている。

「もしお前がそれを拒めば、この世界はまた混沌とした世界に陥ってしまう。そんな世界を望むのか?」


 望むわけがない。だから自分はここにいるのだ。


 男の発言は問いかけの形式はとっているものの、実質答えを必要としていない。

 昔からそうだ。この男の頭の中には、世界の救済なんて御大層な目的は存在しない。

 あるのは、自身の圧倒的な「力」を守ることのみ。そのために、私たちを使って、他の者が「力」を持つことを未然に防いでいるのだから。

 けれども、結果論にはなるが、この男の持つ力は世界の均衡を保つ上では必要なものなのだ。

「お前のターゲットはこの男だ」

 初老の男は、少女に写真を提示する。彼女はわずかに視線を上げて、写真の人物を確認する。そこに写るは平凡な男性一人。任務に必要な特徴だけを拾うと、また目線を下げる。男の姿を意識的に見ないようにしながら。


 理屈では分かっている。そうしなきゃいけないってことも。そして、自分にしかできないってことも。


 男は少女の反応を意に介することもなく続ける。

「これより任務を開始せよ。この男をこのまま野放しにすることは、世界を危険に晒すことと知れ。お前が世界を救うのだ」


 たとえ、そうであっても……




 私は…




 本当に好きな人と結ばれたかった。




 少女は徐に立ち上がると振り返ることもなく大広間を後にする。彼女の後ろで閉まる扉の音がやけに大きく耳を打った。

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