004話
「吉川?久しぶり元気してた?」と後ろから声をかけられる。
俺は振り向くと男女がそこに居る
「ど…どちら様ですか?」と男性と女性に尋ねる。
男性「約20年か?久しぶりなのに忘れるとか酷いな」
女性「そうよまぁお互い歳を取ったから解らないのも仕方ないわね…でも吉川はあんまり変わってないわね」
亨(約20年前?………あっ………)
体が震え汗が出だす昔のトラウマの一つだ…
19歳の頃バイトを掛け持ちで働いて居た頃
男性はパチンコ店での中村先輩で、もう一人の女性はレンタルビデオ店での清水先輩だった。
中村「昔は急に仕事を辞めて部屋を引き払ってどこかに引っ越すから大変だったぞ」
清水「そうよあの時住む所が無くなって大変だったのよ!帰ってきてるなら連絡くれても良いのにね」
その当時俺は一人暮らしで鉄筋コンクリート3階建ての3階3LDKの角部屋で駐車場込みの家賃がなんと驚きの4万5千円!破格の値段に釣られて住んで居た。
文句と言えばエレベーター無いのと少し水圧が弱くシャワーが最大にしてもあまり勢いよく出ない位だった。
それからしばらくすると中村がちょくちょく遊びに来るようになるり。
中村は「次の転居先が決まるまで月1万で部屋を1つ貸してくれないか?」と言われ先輩という事や部屋が余ってたのもあり渋々だが許してしまう。
それからしばらくすると
中村「最近付き合い始めた」と清水を紹介しきた。
(なら清水さんの家に行け!!)と内心思いながらも
亨「そうなんですか…おめでとうございます」と言ったのが最後ここから地獄の様な日々が始まる。
その後すぐに清水も家に転がり込んで来る。
そして家賃は払わない、掃除や洗濯はしない、食事代も払わない、冷蔵庫に酒や食べ物が無いとキレて物に当たる。
中村と清水はギャンブル好きで給料前には必ず2〜3万円を俺の財布から勝手に奪ってく、もちろん返ってこない。
挙句の果てに朝昼夜問わずS〇X三昧コンドー〇が切れると買いに行かされる。
そんな状況で休まる時間を無くした俺は半年我慢したが、中村や清水に文句も言えず結局一人都城市に逃げた。
まさに元凶の二人である。
俺は当時の記憶を思い出し無言になってしまう
「・・・・・・・・・」
大塚が黙ってる俺を心配してか
「吉川さん大丈夫ですか?」と声をかけてくる。
聞こえてはいる。だが声が出せない……
中村「なに君?吉川の女?良い女じゃねーか」何かを品定めするような眼を大塚に向ける。
清水「へぇー若くて綺麗ね…」
大塚「ち…違います!一体何ですか?失礼ですよ!」
亨(こいつらは自分より弱い人間を金と思ってるような奴らだ…大塚さんを食い物にでもする気か?)
「あ…あの…今更…何の…御用ですか?」
中村「あの頃大変だったから慰謝料でも払ってもらおうかと思ってな!」
清水「そうよお金も無いのに部屋探すのにどれだけ大変だったと思うの?」
亨(あぁ…やっぱりこいつら自分達が悪いと自覚すらしてないのか…)
「お…大塚さん…詳しい事は…後日話しますので…お帰り下さい」
大塚は吉川の反応を見逃さなかった、きっと関わらせない様に必死なんだと伝わってくる。
「それはできません!」
中村は大塚に対し
「良いね!気も強そうだし顔もスタイルも良いし…これは…か…」
ゲスな視線を送りながら大塚に言おうとする言葉を遮るように俺は中村の前に立つ
「あ…あんたらに渡す…お金…なんて有りません」と勇気を出し震えながらも声に出したため大声になってしまう。
すると周りの人達が何事か?とこちらを見る。
「あれ?ニュースの人じゃない?」「そうかも?」と声が聞こえてくるが、俺には意味が解らなかった。
清水「言うようになったわね」
中村「ちっ!今日は久々に会えたから声かけただけだ、またな」
清水「良いの?まぁ今度でいっか」
と言いながら二人は去って行く
大塚は周りの人達に「すみません何でもありません」と言い県庁内に再び戻り裏口に移動する。
「さっきの人達は一体なんなのですか?」
亨「さすがにここでは…しいて言うなら自分のトラウマの1つです…何が有ってもあの二人には関わらないで下さいお願いします」と頭を下げる。
大塚「そ…そうですか…」
亨「今日はもう帰ります。ご心配かけてすみませんでした」と言い残し俺はその場から逃げるように走り出す。
大塚「え?ちょ……」いきなり走り出す吉川の後ろ姿を見てる事しかできなかった。
「これは問題かも…どうしよ…」と呟きながら県庁の中に戻って支部長に相談する事にする。
そして俺は2日振りに家へ帰宅する。時刻は13時45分
(何で今更あの二人が…大塚さんが居て助かった。俺だけならまた……食い物にされてたかもしれない……)
そしてスマホを充電しPCの電源を入れその間に水晶でとりあえず着替えのジャージを1着手に入れる。
残念だが新商品の表示は無かったDP112280>111280
ジャージを着替え洗濯物を纏めて洗濯機に放り込み洗濯する。
PCでまとめサイトなどを閲覧していく……
俺たちの編集されてない映像が【宮崎の生還者】と言うタイトルで上がっていた。
「あぁ……それであの二人は……」しかも個人情報までご丁寧に上がってる。
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倒れた男は吉川亨 40歳の引きニートらしい
それニートと呼べるのか?ゴミだろ
生ポ?すねかじり?どちらにしても40でそれは詰んでるな
在日生ポ?でもダンジョンから出てきた=日本人だろ?
そんなゴミが死なずに生還?
てか転移に興味あるんだが
住所特定班まだ?
なぜ未だ生きていられるのか…
死んだ方が世の為だろ
etc.
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自分への誹謗中傷を見てどんどん意識が遠くなりかけるとスマホが鳴り出す。
「は!いかんしっかりしろ俺!」と言いながらスマホの着信が精神病院からだったので慌てて出る。
亨「も…もしもし吉川です」
「吉川さんですか?甲斐です。良かった!電話繋がらないからもう少しで警察に電話するところでしたよ…今ご在宅ですか?」
亨「先生すみません昨日バッテリー切れでそのままでした、今は自宅です」
甲斐「吉川さん大丈夫ですか?」
亨「少し大丈夫では無いかもです」
甲斐「詳しい事は解りませんが今日か明日にでも病院に来れますか?」
亨「今外に出るのはちょっと…」
甲斐「分かりました、では私が御自宅に行くのはどうでしょう?」
亨「はい…それでお願いします」
甲斐「それでは今日の15時にお伺いしても大丈夫ですか?」
亨「はい大丈夫です、先生わざわざすみません」
甲斐「吉川さんは悪くないですよ、では15時にそちらにお伺いします、では失礼します」
亨「はい、失礼します」と言い電話を切る。
甲斐先生は男性で俺が入院していた精神病院から退院してから家の近所で通院する為に紹介されたカウンセリング等で10年程お世話になっている。
久々に役所以外の人が来るので、掃除をする。
まだ時間が余ってるので洗濯物を干し米を18時に炊き上がるようにセットする。
「あ!そういえば確認するの忘れてた」とマジックバックから封筒を取り出し中を取り出す。
「え!諭吉先生が五人も!!一人くらいと思ってたのに多過ぎでは!?」ここ数十年まとまったお金を持たない亨には考えられない金額だった。
そんな事をしていると「ピンポーン」と呼び鈴が鳴る。
「もう15時か…はーい」と言いながら玄関のドアを開ける。
「甲斐先生お久しぶりです、わざわざすみませんどうぞお上がりください」
甲斐「いえいえお気になさらず、ではお邪魔します」と言いながら玄関からすぐのリビングに上がる。
「そこの椅子にどうぞ」と言いながら俺は麦茶をグラスに注ぎ甲斐先生の所に出す。
甲斐「お構いなく」
自分の麦茶も入れてPCの椅子持ってきて座る。
甲斐「ニュースで拝見して心配しましたよもし良かったらお話を聞かせて下さい」
(口外しないと言ったけど先生なら大丈夫よね?)と考えながら
自分を変える為にダンジョンに参加した。
ダンジョン内で罠にかかり11階層に飛ばされPTメンバーの2名が自分のせいで亡くなった。
その後は残ったPTメンバーとダンジョンから帰還したさいに周辺の視線の多さに圧倒され気を失ったと伝える。
甲斐「ニュースの映像はそういう事だったんですね、それにしても思い切りましたね、ダンジョンでは他人の前で会話できたのは凄い進歩ですよ。
でもあまり無理はしないで下さい、半年前にようやく少し外に出れるようになったのに、それに自分を責め過ぎない様に気を付けて下さい」
亨「はい……その後の事でも滅入ってしまって」
甲斐「他にも問題が?よろしければ聞かせて下さい」
亨「はい実は…」甲斐先生は過去何が有ったかを知っているので先輩2名と出会った事と帰宅後ネットの誹謗中傷で折れそうになった事を伝える。
甲斐「そうですか…その二人には法的処置を取る事も視野に入れた方が良いかもしれませんね」
亨「関わりたくないのですが……」
甲斐「そうですか…もし無理と感じたらすぐに私か警察に連絡してくださいね」
亨「はい甲斐先生にお話しできてかなり楽になりました。ありがとうございます」
甲斐「では今月の診察はこれで大丈夫です」と言いながら一枚の紙を鞄から取り出し「今月分の薬の処方せんになります。来月の診察は都合のつく日に連絡してください」
亨「わざわざ来ていただいてすみません」
甲斐「いえお気になさらず、では私はこれで失礼します」と言い立ち上がり玄関え向かい「ではお邪魔しました」と言い残し帰っていく
亨「ありがとうございます」と見送る。
「ふぅ〜話したおかげで少し楽になったかな?」
だが未だモヤモヤする気持ちが抜け切るわけでも無くあまり考えないようにする為にルネスタ2mg1錠 ベルソムラ錠20mg1錠 トラゾドン塩酸塩錠25mg3錠 ジプレキサ錠5mg2錠 の薬を飲む。
そしてベットで横になる、すると日頃は鳴らないスマホがまた鳴り出す。
知らない番号だったのでそのまま放置し鳴り止むとスマホの電源を切る。
(とりあえず今は何も考えたくない)そう思いながら眠りについた。




