009話
(うわあああこの状況どうしよう……)
大塚は皆に少し下がるようにとお願いする。
大塚さんが近寄ってきて
「吉川さんごめんなさい」と頭を下げる
亨「え?あ…頭を上げてください」(てっきり説明しろと言われるもんだと)
大塚「吉川さんのHPとSPが急激に下がったため、皆さんを止める事ができませんでした」
亨(あ!そうだった。体力100に上げたから…しまった…今後皆にバレない様に気を付けよう)
「べ…別にだ…大丈夫ですヨ?」
大塚「やっぱり怒ってますよね」うつむいてしまう
亨「本当に怒ってないですよ。皆さんに知られてどうしようか考えてただけで」
大塚「ほんとうに?」上目づかいで(それはずるい)と思いながらも視線に少し体が震える。
亨「え…ええ、ただこれでダンジョンから帰還して周囲の人に知られるのはさすがに…」
大塚「他の皆さんにも言わないよう約束させます」
亨(口約束じゃなぁー大塚さんは信じると決めたものの他は期待できない、なるべく信用するようにしなきゃな…)
木花「魔石はどうすんだ?」
赤江「その剣は?」
新名「武術とかしていたの?」等聞こえてくるが
亨「と…とりあえずモンスターが湧かないうちに移動しましょう」
(ここは家のダンジョンと違う何時リポップするか解らない)
大塚もそれに納得し皆が集まり3つ進める道が有るが、どこから行くかで迷ってた。結局多数決左3正面1右4で右に向かうことに
先頭は俺
次に大塚さん清武さん
その後ろに赤江君と一ノ宮さんと新名さん
さらに後ろに木花さんと村角さんで進んで行くと…行き止まりだった。
〈∧こんな感じで歩いてる。〉
10分位歩いただろうか、自動地図にも何も表示はないし本当にただの行き止まりだった…引き返そうとした時
「カチ」と何かの音がした。
次の瞬間
「いてえええええぇええーーー」「痛い!」と声が響き渡った。
その瞬間「どさっ」と音が後ろから聞こえた。視界左上PT表示に紫色になった二人のHPバーがみるみる減っていく、振り向くと木花さんと村角さんが倒れていた。
二人以外の皆が
「え?木花さん村角さん大丈夫ですか!」と俺は近づきながら「鑑定」を使った。
【村角 香織女性 30歳 独身 Lv12 HP90 攻撃40 守備29 素早さ34 状態毒】
亨「っ!毒!何で!!」
一方木花さんは
【木花 真二男性 33歳 Lv12 HP0 攻撃36 守備37 素早さ28】
亨「き…木花さんが…ししし…死んでる…」
清武は驚きながらも冷静に「や…やはりですか…」
赤江は未だ信じられず「え?う…嘘だろ?」
一之宮と新名はお互い手を繋ぎ「え?本当なの?あ!名前が無い……何で?何で?」
左のPT一覧から一名表示が消えていたのだ。
村角がしんどそうに「わ…わたし…生きてるのよ…な…ん…で?」
簡単な事だった。毒矢は3本の内2本が木花さんの腕と横っ腹に刺さってた。
大塚が「受けた…矢の本数が1本…木花さんの方が…多かったようです…」
村角「そ…そぅ…わた…しも死んじゃう…のかな…」
俺は迷わずポーションをマジックバックから取り出し村角さんの側に駆け寄り
「村角さんとりあえずこれを飲んでください!ポーションです!HPが200回復しますから!」
村角が首を横に振り
「よしかわ…さ…んわた…しに…ひつよう…な…いわ…どくで…しょう…もう…く…るしいの…は…ゴフ」口から血を吐き出す。
(必要ない???何故???毒で苦しい???)
一之宮や新名は血を見て「きゃーーー」と叫ぶ俺は思わず「うるさい!」と怒鳴る。
亨「村角さんいいから飲んでください!」
しかし村角からの返事は返ってこなかった。PTメンバーの一覧から村角の名前が消えた。
膝から力が抜ける。その場に座り込み涙が溢れ出す。
(あぁ…助けられなかった…失敗した…何故鑑定を常にしていなかったのか…何故キュアポーションを購入してなかったんだ…俺のせいで…俺が……死なせた…俺の失敗で…殺した……俺が…殺した…)後悔だけが延々と脳裏をよぎる。体が震えだす。
大塚も自身の同行者の死に落ち込むが、吉川の様子を見ていると不味いと感じ吉川の目を見ながら肩を揺らしながら
「吉川さん…吉川さんしっかりしてください!これは事故です!貴方の責任では有りません」
亨は手足を震わせながら
「で…でも…きちんと鑑定を行っていれば…」
大塚(急に一体どうしたの…過去に何かあったの?)
「それは村角さんにも言える事ですよ!自分一人で背負いこまないで下さい!」
清武も仕方のない事だと諭すかのように
「そうですよ。先ほど吉川さんもおっしゃってたでしょ。ここはダンジョンで常識とか通じないと」
亨「で…でも…俺の失敗で…二人をころ…」パンと乾いた音がする。どうやらビンタされたようだ。
大塚(不味いここで吉川さんが壊れたりしたら絶望的だわ)
「私達は未だ死んでませんよ!冷たいかもしれませんが、生還したい人はまだ居ます。とりあえず遺体をずらしましょう。また毒矢が飛んで来ないとも限りません。清武さんと赤江さんで木花さんを一之宮さんと新名さんは私と一緒に村角さんを移動させましょう。吉川さん立てますか?」
亨「は…はい」立ち上がるも体が震えうまく力が入らない剣を杖のように突いて移動する。
俺以外の皆で二人の遺体を少し戻った通路に移動させる。遺体を並べ大塚さんは2人の遺体からダンジョンカードと思われる真っ黒になったカードと冒険者カードあと身分書とか入った財布とスマホを取り出し「必ず持ち帰ってご家族にお渡しします。これ位しかできなくて、ごめんなさい」と手を合わせて2人の遺体に誓うかのように黙祷を捧げる。それに続くかのように他の者も黙祷を捧げてる。
俺も黙祷を(村角さん木花さんごめんなさい、女神様どうか二人が安らかな天国に逝けますように)捧げる。
大塚と清武が先ほどの場所を見て戻って来る。
大塚「木花さんの近くにスイッチが有ったようです。恐らく左右から4本の矢が…1本は外れ壁に刺さってました」と状況を説明する。
大塚がこちらに近づき
「吉川さんさっきは、ついビンタしてごめんなさい」
亨「い…えこ…ちらこそ申し訳ないです。大塚さんはしっかりしてらっしゃる。自分…なんか…」
大塚「それ以上言ったら又ぶちますよ?まずは生還する事だけを考えましょう」
亨「はい…ごめんなさい」
大塚(何故数時間前に知り合った人間に対して、こうも感じられるのだろう?優しさ?責任感?とは違う何か………私がしっかりしなきゃ!)
最後まで読んでいただきありがとうございます。
まだまだ未熟ですが、これからもよろしくお願いします。




