勇者との決戦
勇者の装備は…。
毒針2本…しとやかなドレス…。
ほぼ初期装備だね…うん。
「そんなみすぼらしい装備でわらわを追いこもうというのか!」
「どうかな?私には愛の力があるんだから!!」
…うん、よくわからないこと言ってる。
「愛」って何?
「いくぞ!!」
あたしは勇者に向かって、愛剣を振り下ろす。
「ちっ!!」
外した…。
剣の勢いは、玉座の床を2つに割る。
「さすが魔王ね…今のは危なかった…ぞっと!!」
…何さ…余裕で躱したくせに…。
この勇者、素早いよ…。
掛け声とともに、勇者のラッシュがさく裂。
!?
躱しけれない!?
ダメージは、10、10、10…。
前回の反省を生かし、急所は守る。
「魔王!守ってばかりじゃ、戦いにならないよ!!」
「小癪な!!」
…あたしが死なないように、1撃必殺の急所は避けてるみたい…。
今度はあたしのラッシュ。
…全然当たらない…。
「もっと本気を出したらどうじゃ!」
「…本気出したら、ファンファーレ・レイ打つ前に倒しちゃうでしょ!」
…泣きたい…。
魔法でも打ってみようかな…。
「詠唱、冷徹な天使の怒り!!」
周りは電撃に包まれる。
アレ?
ちょっと効いてる?
「くっ!!」
「きゃぁ!!」
よし、魔法の連続攻撃!!
「詠唱、リバイアの涙!!」
強力な水圧を勇者にぶつける。
「うっ…。」
あれ?
やっぱり効いてる…。
「…お姉ちゃん…今までワンパンだったから
その防具じゃ、魔法攻撃とか無理ゲーだと思うけど…。」
…そうか…打たれ弱いのか…。
なら、ひるんだスキに!!
「はっはっは!勇者よ!この程度か!!」
「…油断した…。本気出すよ!!」
え?
今まで本気じゃなかったの?
「お姉ちゃん、サンダージャベリン打つ?」
「いや、ファンファーレ・レイに魔力残して?」
…そういえば、女剣士動いてないなぁ…。
…歴代の勇者は、最初っから本気で、あたしに苦戦したのに…。
「一気に決めるよ!!」
…こわい。
なんか、怖い。
「てりゃ!!」
毒針のラッシュ。
さすがレベル99…素早すぎる…。
ダメージは…10、10、10、300!?
「くっ!!」
やられた!!
肩の急所をやられた!!
「この調子でいくよ!!」
…お願い、もう来ないで…。
あたしは防ぎきれず、ダメージは10、10、10、300…。
「ぐっ!!」
「どうしたの?さっきまでの元気は?」
…本気でじわじわあたしを殺す気だ…。
もうさ…魔王、あなたに譲っていいよ…。
どっちが魔王かわからないセリフだよ…。
「おのれぇ!!!
詠唱・黒炎の刃!」
あたしの愛剣に黒い炎を宿す。
「これでどうじゃ!!!」
あたしは勇者に向けてラッシュをする。
防御しても…黒炎が勇者の体に絡みつき、
じわじわとダメージを与える。
20、20、20…。
…って、あまり効いてない!?
「さすが魔王ね…私にダメージを入れるなんて…。」
「ふん!見くびってもらっては困る!!」
あたしはラッシュを止めない。
ダメージは20、20、20…。
「そこ!!」
「カキーン!!」
あたしの愛剣が宙を舞う…。
…武器とられた…。
「おのれぇ!!!」
こうなったら…。
「詠唱・黒龍の牙!!」
あたしは手に黒炎をまとい、勇者に素手で立ち向かう。
…あはは…もう負けフラグだね…。
「てい!!」
勇者はその攻撃をかわし…。
「そこだ!!」
最後と言わんばかりに、ラッシュを繰り出す。
左肩…右肩…右膝…左膝…。
ダメージは10、10、300…。
300、300、300…。
「ぐぉぉぉ!!!」
…痛い…。
めちゃくちゃ痛い…。
もう泣きそう…。
そして、あたしは床に倒れこんだ…。
苦しい…、痛い…。
もうダメ…。
「勇者よ…とどめを刺してくれ…。」
「うん、そろそろ頃合いだし…。」
…頃合いって何??
…ねぇ…あたしね、もうすぐみんなの所に行くから…。
待っててね…。