勇者との対峙…もう泣きたい…。
あたしは、魔王城の玉座に座っていた。
深呼吸して…。
勇者が来るのを待つ。
「みんな…天から見守っててね…。」
…飛空艇の音が聞こえる…。
勇者も来たみたい…。
これから本当の戦いになるのかしら…。
あたしは…あたしは…。
あんなこと…されて、ちょっと怖い…。
でも…みんながここまであたしを守ってくれた…。
だから…あたしも…。
「頑張るね…。」
勇者たちのモンスターとの戦闘音が近づいてくる…。
少しずつ…少しずつ…。
「ゴクリ…。」
緊張でのどが渇く…。
「バタン!!」
ついに玉座の扉が大きく開いた。
あの…勇者だ…。
「はっはっは!!よく来たのぅ…勇者よ!」
あたしは精一杯キャラを作って、勇者を迎える。
「…逃げたくせに…。」
「…私はちょっと同情してます…。」
ぐはっ!!
しかも、女剣士には同情された!?
「うっ、うるさい!」
「…図星?」
「ち、違う!!」
うぅ…半分当たりだから、何とも言えないよぅ…。
「ここまで来たのじゃ、そなたたちの名前を聞きたい。
わらわの世界となった時には、名を刻んでやろうぞ!」
「…リノン・ジータ。」
「シルビィ・シュタインです…。」
リノンとシルビィかぁ…。
…なんか、シルビィの方がしっかりしてそう…。
「貴様ら、わらわの部下たちをひどい目に
合わせてくれたようだな!」
「…人間に人いことしてたのは魔王じゃなく?」
「うっ…。」
確かにそうだけど…。
…いや、だってあたし、人間に裏切られて…。
その怨念で…。
恨んで…。
「お前らがわらわを裏切ったのが悪いのじゃ!!」
「昔の事なんて、知らないし~♪」
「うっ…。」
…ダメだ…この勇者…。
「…お姉ちゃん、魔王さん困ってるよ…。
あまりいじめないであげて…。」
…くっ、同情された!?
「まぁよい。わらわの部下たちは、果敢にも
おぬしらと互角に渡り合ったのじゃろう?」
「いや?ほぼワンパンだよ~?」
…そっか…。
みんな、苦しまずに逝ったのね…。
それだけ聞けて、あたしも安心かな…。
「…では、わらわもワンパンで倒せると思っているのか?」
「いや?」
「ほう。さすがにわらわだと手ごわいと?」
「そうじゃなくて。」
「ん?」
「ファンファーレ・レイで倒したいから…。」
「…。」
「じわじわ弱らす。」
…泣きたい…。
「はっはっは!!
そのような強がり、どこまで持つかな!!」
「…涙目になってるけど、大丈夫?」
「お姉ちゃん!?」
…うぅぅ…もうこのまま泣こうかな…。
女剣士…シルビィに同情されまくってるよ…。
「…御託はもうよい!同胞の恨み、ここで晴らしてくれるわ!」
「その強がり、どこまで通用するか、やってやる!!」
はい、強がりました…。
…もう、どっちが魔王かわからないよ…。
ねぇ…泣いていい?