第1話
「ふふふふふふっ、これでこのギャルゲーもエンディングだな」
不敵な笑みを浮かべながら今日もギャルゲーに勤しむ間耀一。耀一の趣味はギャルゲーをすることなのだが、彼は少し、いやかなり変わったやり方でプレイしている。そのプレイスタイルが………
"主人公をバッドエンドに導く"というものだ。
この世に蔓延るリア充どもに対して耀一は嫌悪感を抱いている。しかし耀一にはリア充どもに裁きの鉄槌を与えるようなことはできない。度胸がない臆病者であるから。だからこそ、こうしてギャルゲーの主人公にヒロイン全員から嫌われるという裁きを与えているのだ。
「お前も永遠にぼっち人生を歩むがいい……」
耀一は毎日毎日飽きもせずギャルゲーに勤しむ。それはこれからも変わることはない……とそう思っていた。今のこの時間がこの瞬間が壊されるなんて思いもしなかった。
◇◆◇◆
耀一は珍しく外に出ていた。
「…………暑すぎる」
それもそのはず、今はもう夏真っ盛りの8月なのだから。それに加えて今年は例年よりもかなり気温が高い。こんな日はエアコンの効いた部屋でゴロゴロしたいものだ。
「こんな暑いのに何故こいつらは外を出歩いている……バカなのか」
耀一はこんな猛暑の中出歩いているのには理由がある。今は夏休みで家から絶対に一歩も出ないのだがこの前クリアしたギャルゲーが最後の一本だったのでやむを得ず外出している。
耀一は特に寄り道をせず急ぎ足で買い物を終わらせ帰宅した。何も起こらなくて良かった。と思い自宅の扉を開いた。
「……おかえりなさい耀ちゃん」
バタンッ
「……おかしい、何故あいつがここにいる。……しかたない今日はネカフェで……」
「ダメッ!」
腕を掴まれ無理矢理家に引きずり込まれてしまった。耀一は人生で初めて家に帰りたくないとそう思った。
「……何でお前がいんだよ」
彼女は花咲舞。俺の幼馴染だ。昔からよく家に遊びに来ては無理矢理太陽光を浴びさせようとしてくる害虫だ。高校生になってから花咲は部活動で忙しいとかなんとかで、最近は家に遊びに来ることがなくなった。
「耀ちゃんママが今日は帰るのが遅くなるから面倒見てって頼まれたの」
「は?母さんが?……………余計なことを……」
「だから今日は泊まっていくね」
花咲は控えめに言って可愛い。そんな花咲と一つ屋根の下で過ごすというイベントは男なら発狂するぐらい喜ぶことなのだか、耀一に関しては下心なんてものは一切ない、むしろ鬱陶しいとさえ思っている。
「断る、帰れ」
「泊めてくれないとお小遣い減らすように言うよ」
痛い所を突いてくる。そんなことをされてしまったらギャルゲーを買うお金がなくなってしまう。買うお金がなくなってしまったらバイトをしなくてはならなくなる。しかし耀一は働かないという信念のもと生きている。その信念はどんなことよりも重要視される。よってお小遣い削減はもっとも避けなければならないことなのだ。
「はぁ〜勝手にしろ」
「ありがとう耀ちゃん」