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古書の香りは死の匂い  作者: みぞれ
第1章 古書の香りは埃の匂い
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第1節 始まりも終わりも古書から

 月明かりだけが周囲を照らす夜。静寂が辺りを包み込みそこに立つ者を不安にさせる。



 目を凝らして見れば月明かりが正面の女を照らす。肩にかかる程の綺麗な銀髪。周囲の暗さに相まって銀色は怪しくきらめく。月光程度の明るさではよく見えないが、大きな目が吸い込まれそうな眼差しでこちらを見ている。

 

 問題はその銀髪でも大きな目でも無く、右手で力無く握る刀。

刀身は月光を浴び怪しく光っており、素人が見ても抜群の切れ味を持った一刀なのだとわかる。



 視界は酷く不鮮明で目を凝らさないと暗闇に飲まれそうな程。聞こえる音は己と女の呼吸音、身を震わせ衣服が擦れる音のみ。



 張り詰めた緊迫した空気が辺りを漂い、時間の感覚を麻痺させる。頭は冷静に、しかし身体の奥は熱く滾っている。一瞬とも永遠ともとれる時間の中で、シャンと音が鳴る。

女が持つ刀に力を込めると、澄んだ金属音が鳴り響く。

――緊迫した時間は終わりを告げる。



「……主さま、私の為にどうか、どうか……死んで下さい……」



 澄んだ声で女は告げると両脚に溜めた力で地を蹴り凄まじい速度で此方に近づいてくる。

上段に構えた刀を振り下ろし、一刀で全てを切り裂かんばかりの気迫。

受ける、避ける等の無駄な思考をするまでも無く、振り下ろされた刀が身体を袈裟懸けに切っていく。

痛みも無く、苦しみも無く、ただただ死という概念だけが身体を魂を飲み込んでいく。



 薄れ行く意識の中で見た最後の光景は。




――今にも大粒の涙を零して泣き叫びそうな銀髪の女。




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