けっちゃく。
俺はこの外道ウサギを倒す為に、思考を巡らせていた。1番賢明な判断は、撤退であると既に分かっていた。
だが、こんなウサギに負けたくないと思考と身体が反比例する。
一撃でも入れれさえすれば、勝機はある。厄介なのはあの速さだ。目で追うことすら出来ない。
起死回生のチャンスは一回だけあるが、それが上手くいくかもわからない。だがどうせ一回は死んでしまった人生。賭けてみるのも、酔狂なものか。
俺は再びウサギに向かって行った。
殴る。避けられる。蹴る。避けられる。タックル。避けられる。
『イライラするぅぅぅ!!一回ぐらい当たらせろよ!この外道うさ、』ぶっっっ
話の途中でウサギは、まるで鞭の如く耳をしならせながら、俺の顔に当ててきた。
かろうじて意識は保てたが、鼻血がダラダラと垂れてきている。
HPは残り4となった。次のチャンスで決めるしかないな。
ウサギは、ターンッ、ターンッと垂直にジャンプしている。この野郎おちょくりやがって...
俺は雄叫びを上げ、ウサギに向け飛び膝蹴りを放った。
無論、炸裂するのは地面にだが。
ここで俺は自ら派手に転がる。仰向けに倒れ、舌をだらしなく出し、目を白目状態でキープする。
俺の起死回生の一手。死んだふりだ。
白目キープが中々につらいが、ここで瞬きでもしようものなら、奴は即座に攻撃してくるだろう。それだけは駄目だな。耐えるしかない。
ウサギはきょとん?としながらこちらにジリジリとにじり寄ってきた。
長い耳を使い俺の身体をペシペシと確認する。まるで本当に死んでいるのか??と確認するかの様に、じっくりとペシペシされた。
痛くはない。
するとウサギはキューーと鳴き声を上げ、俺の周りを飛び跳ねる。勝利の勝鬨ってやつか?凄くイライラする。
鳴き声が終わると、再び俺の近くに寄ってきた。まだだ、もう少しタイミングを見て、攻撃を伺え。と自分に言い聞かせる。
ウサギは耳を地面に降ろし、ソワソワしだした。注意しながらも、攻撃のチャンスを待つ。
グググッと音がし、メキャアと何かが裂ける音がする。白目の部分からギリギリ見えたものは、最早ウサギと呼べるものでは無く、ウサギを模したでかい口だった。
そのでかい口は涎をダラダラと垂らし、俺の真上に来た。涎が俺の口にも入る。これで死にそうだ。
ここしかチャンスは無いな...行くぞっ!!
と心の中で決心をつける。でかい口は、いただきまーすと言わんばかりに、奇声を発しながら、俺に向かってその口を突っ込んできた。
バグンッ!!
と地面すら削り食す奴は最早ウサギではない。
そのまま砂利でも食ってろ。これならいけるな。
俺は素早く回りこむと、スキルを発動させる。
『もらったあああああああ!!!!!』
【噛みつき】!!
これが本当の弱者の意地ってやつだよ!糞ウサギ!!
狩られる側にはまだなりたくないんだよ!!
渾身の力で噛み付く力を上げる。ウサギは奇声を発しながら、長い耳を使い、俺を引き離そうとする。
【弱者の意地】は最初の攻撃を2倍に出来るようなスキルだ、本来なら奇襲がベストだな。今回は相手が悪かった。
断末魔のような奇声が上がり、ウサギは遂に動かなくなった。