ぷろろーぐ2
翌朝、鏡の前で入念に髪型を整え、乱れがないのを確認する。
元々髪はないのだが。
今日はわりかし綺麗にセット出来たな、と上機嫌で会社に向かう用意を進めていた。
「うわっしくった!!Yシャツシワシワじゃねーか!!」
上機嫌がいきなり不機嫌に変わる。
紆余曲折しながらも、義仁はハァと深い溜息を吐きながら、会社に向かうのだった。
義仁は会社ではそれなりに人望はある。
ハゲては居るが、仕事は出来るのだ。
上司や部下からは、〈よっさん〉〈よしちゃん〉〈はげひと〉と親しまれている。中には暴言もあるが。
ふと、いつもの交差点を渡ろうとした時に、向かい側から少し間抜けな声で、よ〜し〜ひ〜と〜と呼ぶ人物がいた。
会社の同僚の佐藤秀人だ。
こいつとは中学校からの腐れ縁で、高校。そして就職先まで一緒になる。こいつとは正直一緒に歩くだけでもつらい。
なにせどこぞのモデル顔負けの、イケメン、スタイル、ファッション。何をやらせてもトップレベル。
そんな容姿端麗と、ハゲの並びはおかしいだろう。
世の中不公平だよ、神様。
そんな秀人と朝から会うのは少々気が重かったが、一応手は振っておいた。
その時、秀人の後ろ側から小さな少女がこちらに向かってきた。勿論信号は赤である。
俺や秀人も少しの間固まってしまっていた。だがその少しが遅かった。
その少女に向かってバスはそれなりのスピードを出しながら迫っていたのである。
俺は動こうにも動けなかった。俺の視線の先には秀人が既に走り出していたのだ。
少しスローモーションのようにも見える世界の中、俺はくだらない事を考えていた。秀人はテンプレ系主人公だと。
見つめる俺。 少女を抱きしめる秀人。
そしてバスがハンドルを切り、こちら側に!?突っ込んできた。
あれ?