第七十七話 私、忍を隠しました。
『えっと、1足す3は・・・4だ!』
『正解だよ、忍!
うん、もう一桁の加算と減算は大丈夫みたいだね。
忍、今度は二桁の加算と減算をしよっか!』
『うん、お母さん!』
私は今、念話で忍に算数の勉強を教えながらヤハルさんの授業を受けてる。
今日の朝に起きたら静と忍があの子の姿を探してたよ。
もう一人のお母さんは何処?って感じで探してたよ。
本来ならあの子を出すには色々と条件を満たさないと出ない事を伝えたけど分からなかったみたい。
忍がそのまま探しに行こうとしてたから急いで止めた。
ちょっと忍の姿を周りに見せる訳にはいかないからね。
アンさんから忍についての注意を受けたからね。
忍の種族は人族なんだけどその人種が訳ありだった。
忍が暗殺人形になってた訳でもあるからね。
だから少なくとも忍が強くなるまでは隠したいと私は思ったんだよ。
忍を害意に晒させるなんてしたくないからね。
まずは【隠形】を静と忍と一緒に私も発動した。
三人で隠形って叫んだ所はちょっと面白かった。
静は念話だけどね。
あまり変わらないね。
周囲に気付かれ難くなるスキルだったから自分では分かり難いのかもね。
少し静の方に目を向けると静の姿を一瞬だけ見逃してた。
こんなに近くに居るのに見逃すなんてこれが【隠形】の効果かな?
そして目を離していた忍が見えなくなった!
《時空間》を使って探すと忍は【隠形】を発動した場所から動いてなかった。
私も《時空間》が無かったら気付かなかったから凄いね、忍!
忍を配下にして覚えたスキルが【隠形】だったんだね。
スキルレベルが一番高いから効果も高いはずだよ。
次は【気配遮断】のスキルだね。
同じように三人で同時に発動する。
すると部屋から人気が無くなった。
呼吸音、服の衣擦れ、私の心臓の音まで聞こえなくなった。
二人の姿は見えるけど下手な騙し絵を見てる感じがするね。
後は忍に《魔法の極み》と【暗殺者の心得】【魔力操作】も渡して【隠形】と【気配遮断】を使い続けてもらい念話で会話するように注意しておく。
忍からの初めての念話は、
『お母さん、大好き!』
だった。
いや〜、忍は静とはまた違う可愛さがあるよね!!
頭を撫で回してあげたよ!
それで後は念話で三人で会話しながらご飯を食べた後にヤハルさんの居る勉強部屋に行った。
道中のメイドさんや執事さん、衛兵さんにも気付かれなかった忍はヤハルさんにも気付かれなかった。
今はヤハルさんにこの世界の勇者の存在を教えてもらってる。
結構な数の勇者が存在してたみたい。
魔王を倒せた勇者は激減するけどね。
格好いい二つ名とかで呼ばれてるしその子孫も色々と活躍してるみたいだね。
貴族になったり国を起こしたりしてる勇者もいるし悪用もしてる奴も居るみたいだけどね。
あ、静はコペル君とオセロをしてる。
忍もやりたそうにしてたから私達の部屋に戻ったらする事を約束した。
ウォンバットさんはまだ自分の部屋に篭ってるみたいだね。
『コペル君、ウォンバットさんに伝えて欲しい事があるんだけどね。』
『何ですか?』
『レベルを上げると新しいスキルを覚えられるかもしれないって伝えておいて。』
『うん、わかった!』