第六話 私、評価されてました。
勇者が出て行った後の謁見の間は静かにしかしながら騒然としていた。
「これより、緊急会議を行う。」
小さく短く、しかしながらはっきりとしたグフ王の言葉。
それは謁見の間の音を消し去るには十分だった。
「議題は勇者についてだ。」
ベルベゴートはその言葉にいち早く反応し、手を挙げた。
「国王陛下、発言しても宜しいですかな?」
「魔導士ベルベゴートよ、発言を許可しよう。」
「では、勇者サオトメ殿について私の推測を話しましょう。
彼女は恐らく異世界での上級の貴族かそれに準ずる者の一族であったと思います。
理由は彼女の言葉使い、歩き方、国王陛下を前にした時の態度など上級貴族にも劣らずのものだったと思います。」
ベルベゴートが言い終わったとみるや直ぐに手を挙げた者が居た。
豪華な服に肉が削げ落ちてしまったかのような手首や顔が見える風貌の男であった。
「国王陛下、発言しても宜しいでしょうか?」
「宰相ゼレディクよ、発言を許可しよう。」
「私はあの者、勇者の可能性について述べましょう。
レベルが0である為にステータスは見る事が出来ませんでしたが魔導士ベルベゴート様が召喚した女神メカルーネ様の加護を得られる者、その成長具合は期待が出来ますがしかし即戦力になるとは言い難いでしょうし勇者が早くレベル1に上がればいいのですが少なくとも1年はレベルが上がらない筈です。」
ゼレディクは一気に話した。
それでも続きそうだったがまた別の男が手を挙げ顔をしかめながら話すのを止めた。
その男は巌のような大きな体にとんでもない重量である鎧を纏っていた。
「国王陛下、発言しても宜しいですか?」
「近衛騎士長ドランクラト、発言を許可しよう。」
「彼女の体は武人の体付きではありません。
それに成人を迎えているとは思えない程に若い。
戦う事を知らない子供を戦場に送るのは反対です。」
ドランクラトが重々しく言った。
会議はその後も続いた。
ある者は勇者の事を非難し、魔物が跋扈する地へと送ればいいと言った。
ある者は勇者に頼らず騎士達を強くさせ女神の加護が与えられるようにすればいいと言った。
はてには、勇者自身では無く、勇者を召喚する事を賛成した者を非難し始める始末。
善意の皮を被った悪意。
冷徹で合理的な意見。
短慮で見え透いた嘘。
不器用な配慮。
色々な思惑が渦巻く。
グフ王が混沌としてしまった会議をため息をつきながら見ているとグフ王の隣に居た女性がグフ王の肩を叩く。
「お父様、サオトメ様の事は神官の方にも伝えますか?」
「そうだな、伝えなければなるまいな。」
そしてグフ王は何度目かのため息を吐いた。