第五十二話 私、本を読みながら静に言葉を教えました。
どうしよう。
爬虫類の革の表紙の分厚い本。
題名は・・・書いてないね。
「えっと、ヤハルさん、この本は何か分かりますか?」
「はい、それは魔本だと思います。」
「マホン?」
何、その間抜けな名前は?
「魔道具の一種でございます。
本の内容が読む人によって変わる本でございます。」
「そうなんですか。」
わぉ、摩訶不思議な本だね。
読む人によって内容が変わるなんてどういった仕組みなんだろうね?
文字が動くとかかな?
幻影かもしれないね。
あ、だから魔本なのかな?
魔法の本、魔本ってね。
「では読んでも大丈夫なんですね。」
「はい、勿論でございます。」
「ではこの魔本を読んでもいいですか?」
「はい。」
じゃあ、読もう。
椅子に腰掛けて。
「静、おいで。
一緒に本を読んでみようか。」
静の脇を抱き抱えて膝に座らせる。
親子揃って本を読むって絵になるよね。
魔本を開いてみる。
・・・逆さまだった。
上下にひっくり返して読んでみる。
ついでに静に対して念話で話しかけてみる。
『静、聞こえる?』
静が私の方に振り返る。
『今ね、お母さんが念話で話してるの。
静は目の前の本の文字が読める?』
本の方に顔を向けるけどまた私の方に顔を向ける。
『読めないみたいだね。
知識は植え付けられないみたいだね。
まずは言葉について教えるよ。
お母さんが念話で話すから真似してみてね。
それじゃ始めるよ!』
魔本を読みながら静の教育をする。
ゲームのキャラのレベル上げをやってる傍ら
で別のゲームをやれる私には余裕だね。
同時進行が出来なきゃ色々不便だったしね。