第四十八話 私、虚勢とも言い難い事を言いました。
グランバード・グフ・エチャード。
それが余の名前。
グランバード王国の王である。
余は異界から召喚した者、勇者サオトメの娘に視線を向ける。
まるで表情が抜け落ちたかかのような少女ではあるが母親である勇者サオトメに隠れるように後ろに回り込んでいる。
そう、勇者サオトメは娘を産んだと言うらしい。
確かに似ていた。
勇者サオトメと姉妹であるかの様に見える。
勇者サオトメを幼くすれば瓜二つになるだろう。
そして黒髪に黒眼だ。
ここらでは見かけない特徴である。
勇者サオトメは異界から来たのだ。
例え勇者サオトメが妊娠せずに女だけで子を産む種族だとしてもおかしくはない。
人が交わって子を産むように。
エルフが草木から産まれるように。
精霊が魔力から産まれるように。
この世界でも種族によって子を産む仕方は異なる。
ならば異界の種族の勇者サオトメもまた異なるのは道理であろう。
貴族に劣らぬ言葉や作法。
一度教えれば瞬く間に覚える記憶力。
我が王国騎士団『紅乙女』の団長、『竜殺し』のディーバードと渡り合える猛者。
伝言者テルの加護を持ち、女神メカルーネ様の加護が約束された神に愛されし者。
勇者サオトメは多方面に才能があるようだ。
この者ならば女神メカルーネ様の御告げ通り魔神を倒しこの世界を救うやも知れぬ。
さて勇者サオトメの娘。
これは勇者サオトメの弱点にも成り得る。
貴族の中には異界から召喚した者を勇者と認めないと言う勢力もある。
いや、我が王国だけではない。
多くの者がこの者を勇者と認めないだろう。
その者達にとって勇者サオトメの娘は格好の的に成り得る。
逆に勇者サオトメを取り入れようと利用す?やも知れぬ。
子を持つ母親ほど、強く脆い存在は無いからな。
さて、どう扱えば良いのやら。
ん?
勇者サオトメの能力が魔物を使役する事?
なんじゃそれは、魔物を使役するなど聞いた事がないぞ!?