第三十六話 私、森の散策に行きました。
「おかしい。」
レガリア師匠が周りを見ながらそう呟く。
う〜ん、私には鬱蒼とした森の中としては当たり前な光景にしか見えないけど。
あ、美味しそうな木の実見っけ。
アイテムバックに入れよ。
同じ種類の木々がツル植物が巻きついてたりして無秩序に生えてる。
地面は木の根や苔むした石などでデコボコツルな状況。
頭上は木の葉や枝で日の光が通らないから薄暗い。
私には【夜目】の効果なのかよく見えるから転ばないけど何も準備しなくて来たら色々と酷い目に遭ったと思うんだけど。
そんな鬱蒼とした森で私とレガリア師匠の二人っきり。
他の騎士とは別行動です。
私とまだ会ったばかりだから連携とかの邪魔になるだろうから一緒に来いとレガリア師匠に言われた。
邪魔にはならないと思ってたけどこの森の状況を見たらそんな考えも無くなった。
初めての人は大概足手まといになるよ。
足元は悪いし暗いし不気味な森だよ。
この上魔物が出たら対応出来る人は少ないんじゃない。
周りは変わらない風景。
しかも木々が乱立してるから普通なら直進出来ないから迷いそう。
レガリア師匠は周りの木々を殴って折りながら進んでいて獣道らしき物が出来てるけど。
「何がおかしいんですか、レガリア師匠?」
「ここまで森に入って来たのにゴブリンがまだ見つからない。
いつもなら五、六回は遭遇する筈なんだが。
もっと奥に行ってみるか。」
そう言ってレガリア師匠はバキバキと鳴らせながら木々を折って倒して奥の方に歩く。
折らずに綺麗に切れば木材として使えそうな気がするんだけどなぁ。
あ、きのこ見っけ。
アイテムバックに入れよ。
「勇者、何やってんだ?」
「はい、レガリア師匠に着いて来てます。」
「いや、バックになんか入れてたろ?」
「はい、食べれそうな物を採取してます。」
「お前、ここの木の実やきのこは食べられないぞ?」
「そうなんですか?」
毒でもあるのかな?
「あぁ、さっき取ってたあの木の実は渋過ぎてとても食べたもんじゃないぞ。」
渋みかぁ。
「毒はありますか?」
「あ〜、無いはずだ。
あたしは【毒耐性】を持ってるから分からなかったが他の奴らは毒になってなかったからな。
だがそんな渋過ぎて不味いものをどうするつもりだ?」
レガリア師匠の言ってる毒と私が言ってる毒は別なんだけとね。
「多分、渋みをなんとか出来ます。
故郷でも似たような物を甘味にしてましたから。」
天日干しとか砂糖漬けとかで。
干し柿やザボンの砂糖漬けみたいな感じで。
「それは・・・出来るのか?」
「えぇ、やってみます。
伝言者テル様にも異世界の料理を振舞って欲しいと言われていますので。」
「出来たらあたし達にもくれよ。」
「はい、レガリア師匠。」