第二百七十六話 私、邪神として召喚されました。
「ジャシンサマー。」
・・・。
「ジャシンサマガ、コウリンナサレタゾ!」
・・・・・・。
「イケニエヲササゲマス。
ワレラノヒガンヲカナエテクダサレ!」
・・・・・・・・・。
「セカイ二ホロビトハメツヲ!」
おぉ、なんてこった、失敗しちゃった。
うん、ちっちゃな、本当にちっちゃな人影が見える。
ん?
別に遠くに誰かが居る訳じゃ無いよ。
目の前に米粒サイズの人影が立ってるんだよ。
今の私の姿勢は胎児がお腹の中で丸まっているような感じだね。
うん、顔が地面に付いてるから人影が見えるのだけどね。
いや、好きで丸まっている訳じゃないからね。
私の居る空間が狭いだけ。
今も背中や足先なんかがどっかに密着してる。
というか窮屈だよ、ここは。
まるで、誘拐された後に箱詰めされたような感覚だよ。
うん、ちょっと腹立たしいね。
あ、ちなみに魔力で視覚と聴覚を強化してるよ。
流石に米粒アートを裸眼で見える程良くは無いからね。
言葉だって最初は蚊の羽音みたいな感じでチンプンカンプンだったからわざわざ私が分かるように音量を調整して魔力で翻訳してるし。
どうやら私はまた別の世界に召喚されてしまったようですよ。
しかも、今度は邪神枠で。
世界を消して他の世界に転移する時に違和感を感じたと思ったら召喚されちゃったかぁ〜。
う〜ん、私ってもしかして召喚され易い体質なのかな?
それじゃ、今後の召喚対策も考えないといけないかな。
「イケニエジャ!
イケニエヲササゲルノジャ!」
魔力は使えるけど他の能力はどうかな?
私の口に何かを運ぼうとしてる米粒人を魔力で邪魔しつつ調べてみるか。
むぅ、生贄かな?
米粒人よりもちっちゃい奴を口に入れられても困るんだけどね。
多分、米粒人の子供じゃないかな?
しかも奥の方にまだまだ居るし。
何、手足を縛られているの?
とりあえず魔力で手足を縛っている物を解いて・・・たら米粒人の大人に何かされそうだね。
おぉ、魔王のスキルは使えるみたい。
《魔王の契約》で米粒人達をちゃっちゃと配下にしよう。
邪神を心棒して召喚しちゃうくらいヤバイ人達みたいだから良いよね?
「ナンダ!?
ジャシンサマカラ、ナニカガデテクルゾ!」
今回は狂人スキルと前の世界のスキルも持って召喚されたからね。
《狂人の祟》も併用すれば一網打尽に出来るから便利だね。
娘達の居る世界にも帰れそうだし。
うん、良かった、良かった。
でも、この世界で邪神生活を楽しんでみたいという欲望も、ね。
勇者生活は失敗しちゃったしね。
魔王を倒す旅に出る前に魔王を捕まえたりしちゃったし。
良し、二重生活でもしてみようかな。
二児の母親生活と邪神生活、うん、正気とは思えない発想だよ。
まぁ、狂神であるあの子と一緒の私だからね。
正気なんてとっくの昔に消えちゃったさ。
よし、この場に居る米粒人を配下に出来たみたいだね。
さぁて、それじゃ娘達の世界に帰ろっかな。
早く静と忍を抱きしめたいなぁ。