第二百七十五話 私、世界から避難しました。
周囲は真っ暗になった。
光源の太陽をも別の世界の亜空間に送ったから当たり前だね。
この世界に私だけが取り残される。
そんな映画を観た事がある気がする。
まぁ、あの映画は建物や動物なんかが有って人が居なくなったって設定だった気がするけどね。
今のこの世界は物体も空気も何もかもが無い状態だからね。
空気が無いから音も聞こえないし、光が無いから色も無い。
周囲の状況が完全に分からない。
・・・こういう世界をあの世って言うんじゃないかな。
本当に《物理の極み》を持ってて良かったよ。
こんな状況じゃ、普通の人なら終わりだったからね。
うん、空気も必要無しって人外っぽく感じるけど仕方ない。
だって、元魔王だから人を辞めてるし。
だから魔力を放出して周囲を把握しようと思う。
潜水艦やコウモリが使うエコー技術って感じかな。
放出しっぱなしだから魔力の消費は物凄いけどね。
底無しの魔力があるからこそ出来る贅沢な使い方だよ。
よく魔王時代の時に使ったもんだよ。
周囲の放出した魔力をそのままスキルに使ったりしたからね。
警戒する時もよくしてたっけ。
お風呂に入るときとか。
うん、勇者がお風呂に侵入してきたから編み出した技術だったからね。
おっと、『次元の歪み』はどんどん大きく成ってるね。
ジワジワと私が魔力で感知してる範囲が侵されているからね。
魔力がそこだけ私の制御から離れているから丸分かりだよ。
さて、今更だけど本当に崩壊した世界を元に戻せるか疑問だね。
不可能とは断言しないけど、無理っぽいのは承知してるから。
スキルレベルを最大に上げて対象を消して新たな物に作り変える効果がある【純白なれ】が成功すれば良いんだけどね。
失敗したら、そうだね。
傀儡の居る世界に寄生でもさせてもらおうかな。
なぁに、神様に物理的に頼めばなんとかなるでしょ。
こう、あの子を前面に出して押し切ればね。
それじゃ、《時空間》で時間指定をして、【世界眼】と【純白なれ】が発動するようにしてっと。
私もそろそろ避難しよう。
流石に世界が消滅したら私も消滅しちゃうだろうし。
娘達に会いたくなったから私も亜空間に転移するとしますか。