第二百七十二話 私、カステラとミルクを頂きました。
まだ時間じゃないかな。
何の時間かって?
そりゃ、この吹雪と雹の空間を壊す策の準備だよ。
うっかり、遊戯兵を落として気が付いたんだけどね。
一番下に落ちていった遊戯兵が消えて上空の方から現れたんだよ。
それで私はピンと来たね。
どれだけ進んでも中央にエンドレスで向かい続けるような仕組みなのではないか、とね。
真っ直ぐ進めば反対側に転移してしまう罠はそう珍しくない。
ゲームでは良く使われた罠だからね。
そして、現実世界でもその厄介さは変わらないね。
気がつかなかったらずっと彷徨い続ける罠だからね。
それこそ、ギリシャ神話の迷宮で彷徨い続ける牛の頭を持った怪物、ミノタウロスのようにね。
でも、掛かった獲物は脳筋なモンスターじゃなくて経験豊富な元魔王なのさ。
ふふ、ネズミ取りに掛かった小人ほど驚きの状態だね!
仕組みが分かれば対応は出来る。
まぁ、魔王時代で似たような手を喰らったんだけどね。
あの時は走り続けるとその場から進めないし止まれば魂を封印して爆散させるっていう私を殺す為に作ったかのような陰湿で過激な罠だった。
実際に敵対した神が張った巧妙な罠だったんだけどね。
くっ、胸を膨らませられる道具があると至高な誘惑に騙されたよ。
私が騙された話はさておき、空間を壊す策を話そうかな。
答えは簡単だよ。
反対側に転移する為にエネルギーが必要なんだけどそれにも限界があるハズ。
だからその限界以上に転移を使わせれば良い訳だね。
《時空間》で壊せなかったのは限界よりも下回る負荷しか与えられなかったからだろうね。
なら、その限界を上回るまで。
と言う訳で私は今、32体の遊戯兵に【漆黒なれ】を使って結界の外に放り出した。
どんどん増殖中の遊戯兵を尻目にまったりカステラを頬張る私。
カステラにミルクって最高の組み合わせだよね。
むぐむぐ、うまうま。
ネズミ算で増殖していく遊戯兵。
すでに億の数を超えた事が分かっている。
亜空間と違って量と密度が増えていくから必ず空間を圧迫する筈。
そこで【連鎖爆弾】を発動させる。
個体数にスキルレベルの数字の累乗されるスキル。
レベル最大にしてるし、個体数は億を超えて増殖中。
その威力は計り知れない。
予想だけど、多分、世界を一つ壊す威力を発揮してくれるハズだよ。
その威力をこの吹雪と雹の空間を壊すだけしか発揮しないように【アクセスコード】で変えた。
つまり、吹雪と雹の空間以外には微風さえ起こさないからね。
つまり、周囲に対してはノーリスク。
私は【無敵】の効果でスキルによるダメージを受けない。
うん、これぞ、魔王の計略よ!
うはははは!
よし、今度は餅を搗くか!
静と忍に和菓子の真髄を味わってもらおうっと。
きな粉、黒蜜、ずんだ、餡子、海苔、醤油、みたらし・・・おっと、考えただけで魔力で出しちゃった。
全部、使って餅を味わうから無駄にはしない!
亜空間に入れよっと。