二十七話 私、礼拝堂に行きました。
私は今、礼拝堂に居ます。
なんか美味しそうな匂いが充満しているんだけど、なんで?
いや、隣から料理を持ってきた人がどんどん入っては奥の方に料理を置いていくから匂いが充満しているんだろうけどさ。
それとこぢんまりとした部屋だから匂いが籠りやすいんだろうし。
しかもヤハルさんと一緒に料理をしていた調理場の近くだし。
「さぁ、勇者様、こちらです。」
名も知らない人にが奥に進むように急かす。
確か、マグル教の神官って名乗ってた人だけど名前を名乗らなかったから分からないんだよね。
上下白い服で手足が見えない。
その上足元まで隠れる白いエプロン。
丸い白い帽子をすっぽりと被っていて髪も見えない。
止めに白い仮面を付けてるから何も知らなかったら変質者だと思うよ。
そして料理を運んでいる人も同じ格好だよ。
あ、マグル教ってのはメカルーネを信じてる宗教団体の名前だそうです。
それよりもさ、確か礼拝堂って神様を拝む所だよね!?
何、神様と会食でもするの!?
私はマグル教の神官に急かされながら奥に進んだ。
「あ゛ー。」
ナニコレ?
肉の塊があった。
声が出てるから人だと思うけど。
でも人じゃなくて肉の塊にしか見えない。
それより、この人精神が壊れてない?
さっきから「う゛ー」とか「あ゛ー」しか言ってないよ?
大きい。
横に大きい。
上から潰されたかのように横に大きい。
顔と思う所も肉に覆われてパックリと横に割れた所からヨダレが垂れ流し。
鼻や目は肉に埋もれて見えない。
両側に付いている肉棒は腕かな?
動きそうにないけど?
本当にナニコレ?
人じゃない種族?
しかも全部が肌色だから服も着てないの!?
そしてその前には大量の料理がある。
・・・コレと会食するの?
そういえばヤハルさんが、
『神官の姿を見ても驚かないでください。』
て言ってたけど、まさかこれが神官なの?
でも後ろの人も神官だって名乗ってたけど。
真っ白な服装でおかしかったからヤハルさんの言葉にも納得してたんだけど。
「では勇者様、今から伝言者テル様をお呼びいたしますのでこちらにお掛けください。」
「は、はい、失礼します。」
マグル教の人が木製の椅子を置いた。
目の前の光景から目が離せなくて言葉が詰まってしまった。
私が椅子に座るとマグル教の神官が肉の顔、多分、耳元で囁いた。
「女神メカルーネ様の眷属、伝言者テル様、食事の用意が出来ました。」
「分かりましたわ。
おや、誰か目の前にいらっしゃるようですわね?
こんにちは、見知らぬ方。
私は伝言者テル、貴女のお名前は?」
「え、はい、私は早乙女 雫です。」
え?
さっきまで「あ゛ー」とか「う゛ー」とか言ってたのに急に普通に話し出した!?
「伝言者テル様、この方が異世界から召喚された勇者様です。」
「あらあらまぁまぁ、そうなのですか、シズク様?」
「はい、そうです。」
しかも声が綺麗だし、もしかしてこの人女性なの?
「そうですか。
では話の前にお食事にいたしましょう。
彼らが作ってくれた料理はとても美味しいですわよ。」
「は、はい。」
テルさんはその太い腕で器用にフォークやナイフを使いながら食べていく。
以外と上品な食べ方に驚いたよ。
その姿から豚のように食べると想像してしまった。
お皿ごと口に入れて皿だけ吐き出す、みたいな食べ方。
なんかそういうキャラクターが日本に居たからね、アニメに。
あ、この鳥、美味しい。
骨も軟骨みたいにコリコリしてる。
こっちのスープもコクがあって美味しい。
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気づいたら私とテルさんで料理の半分を平らげていた。
お腹が苦しい。
ポッコリと出てるから恥ずかしい筈なのに何故か達成感みたいなものを感じるよ。
「小腹も満たしましたし話をしましょうか?
シズク様?」