第二百六十六話 私、帝国に迎いました。
静と忍がコペル君を引っ張って孤児院に向かった。
ウォンバットさんは二人がコペル君を連れて行った事に気付かないでノーセブス帝国の情報を私に喋り続けた。
だからコペル君が居なくなった事に気付いてパニックを起こしたから対処が大変だったよ。
まぁ、私は気付いてたからそれとなく教えたけどね。
娘達が連れて行ったから、お詫びとして『禍福の果実』を渡してみた。
どぎつい色合いで洋ナシのような形の果実なんだけどね。
これって、とても美味しかった。
うん、食べましたよ。
エルフのクーから採取した『禍福の果実』だから通常の『禍福の果実』よりも絶品な代物なんだよ。
1日に1個づつ実るという不思議な果実なんだけどね。
まぁ、スキルを使って実らせてるんだろうけど。
しかも、この『禍福の果実』は面白い効果があってね。
収穫された果実や食べる人によって様々な効果が現れるって事だね。
詳しく言うと現れる効果は果実によって違うし、食べる人によって良い方向にも悪い方向にも変わるからね。
私が食べた『禍福の果実』はレベルを5倍に上げる、5分の1に下げるってどちらかの効果らしかったんだけど、レベル0の私には意味の無い効果だった。
しかも、食べた後に【鑑定】を使わないと効果が分からなかったからね。
研究者であるウォンバットさんには調べてみたい不思議な果実じゃないかな。
想像通り、ちょっと斜め上の反応をウォンバットさんはしたけどね。
えっとウォンバットさんは『禍福の果実』を見た事があったみたい。
エルフの森に行った時に親交の印として渡されたそうな。
流石は闇の魔導師と自称するだけはあるのかな。
しかも、良い方向にだけする食べ方も知ってるそうだ。
昔、食べた『禍福の果実』は闇属性のスキルの威力が2倍になるという効果だったらしい。
それが永続するんだから凄くオイシイ効果だと思う。
時間は掛かるらしいけどその処理をしてどんな効果を得るか楽しみらしい。
まぁ、そんな良い経験をしてるならそりゃ、楽しみだろうさ。
さて、そんな訳でお城を後にした私は上空で漂いながらノーセブス帝国に入り込ませた配下達の情報を纏めていく。
女帝の存在は・・・イマイチ分からなかった。
姿とかは帝国内でも見せないらしい。
それに、帝国の人は滅多に話さないから情報収集のしようがないしね。
あと、奴隷も成果無し。
なんと帝国が奴隷商人から買い占めているらしい。
理由までは分からなかったらしいけど。
でも、魔道具の実験台として買っているんだって専らの噂だけどね。
うん、帝国内では帝国民特有の真っ白過ぎる人影以外は見かけていないらしい。
それこそ、商人以外は全員全身真っ白らしいからね。
さて、奴隷として連れてこられた大勢の人達は何処にいるのやら。
それとリコールさんについての情報なんだけど。
最近、魔王を一体倒したって静かに祝杯ムードを迎えてたらしい。
無言で喜ぶ帝国民。
うん、無言で喜ぶってなんか怖いよ。
それにしてもリコールさん、魔王を倒せたんだね。
スキルもレベルも強かったしね。
流石は人族の勇者だね。
まぁ、それは世界の崩壊の一歩になっちゃうんだけどね。
それじゃ、リコールさんにも挨拶しに行こうかな。
帝国の場所は《時空間》で把握しているからあとは一直線に飛ぶだけ。
あ、お土産はどうしよっかな。